スラッシュとアクセル・ローズ、80年代が生んだ最高のコンビネーション!

1987年 8月21日 ガンズ・アンド・ローゼズのアルバム「アペタイト・フォー・ディストラクション」がリリースされた日

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音楽史上で一番売れた HM/HR アルバムって何?

本日7月23日はガンズ・アンド・ローゼズのギタリスト、スラッシュの55回目となるバースデイだ。

Re:minderで自分の大好きな80sのHM/HRについて色々と書いてきたが、絶頂を極めた80年代に発売されたHM/HRのアルバムで、結局一番売れたのはなんだったのか? 肌感覚では何となく想像できるが、気になったので、歴代のアルバムセールス数のリストを改めて確認してみた。

ダントツの1位は、80年作のAC/DC『バック・イン・ブラック』だ。全世界での推定売り上げ枚数が(以下同)5,000万枚というから驚く。これはマイケル・ジャクソンの『スリラー』の6,600万枚に次ぐ歴代2位で、これに配信ダウンロードやストリーミングの数字、中古市場なども加えると、途方もない数の人々が、この作品を聴いてきたことになる。

さらに上位を見ていくと、ここ日本での知名度からは想像できない77年作のミートローフ『地獄のロック・ライダー(Bat Out of Hell)』が同じく5,000万枚、71年作のレッド・ツェッペリン『Ⅳ』が3,500万枚と続く。メタリカの『メタリカ』、通称ブラック・アルバムは3,100万枚だが、これは80年代ではなく、91年の作品だ。

80年代に登場したバンドなら、ガンズ・アンド・ローゼズ!

そして、80年代に登場したHM/HRバンドという縛りでは、87年作のガンズ・アンド・ローゼズ『アペタイト・フォー・ディストラクション』が3,000万枚で、堂々1位に輝いている。全米だけでも1,800万枚を売り上げ、しかもデビュー・アルバムにしてこの金字塔を成し遂げたのだから、まさに快挙と言えよう。

ちなみに、80年代縛りでそれに続くのが、86年作のボン・ジョヴィ『ワイルド・イン・ザ・ストリーツ(Slippery When Wet)』の2,800万枚で、日本ではこれがダントツかもしれない。さらに87年作のデフ・レパード『ヒステリア』の2,000万枚と続くが、まさに80年代後半のHM/HRマーケットのバブルといえる勢いを、数字が物語るようである。

ガンズの『アペタイト・フォー・ディストラクション』は、全米チャートでも当然1位を獲得しているが、そこに至るには、182位で初登場してから実に50週、約1年もの期間を要している。まさに評判が評判を呼び、ロック史に燦然と輝くメガヒットに繋がったカタチだ。

ここ日本マーケットにおいても、デビュー時の静けさから一変して、全米での熱狂ぶりが伝播したある時期を境にメディアで一気に取り上げられ、瞬く間にガンズは大きな存在になっていった。その状況を僕も当時リアルタイムで体感したが、『アペタイト・フォー・ディストラクション』を発売当初聴いたとき、まさかこの作品が将来3,000万枚のモンスターヒットを記録するとは、正直夢にも思わなかった。

アルバムが売れることイコール正義… とは思わない。けれども、デビューアルバムにして天文学的なセールスを叩き出した事実は、世界中のロックファンに支持されるだけの底知れぬ魅力を、当時のガンズが全て持ち合わせていた、ということに他ならないだろう。

唯一無二のコンビネーション、スラッシュとアクセル・ローズ

ガンズの象徴という意味では、稀代のフロントマン、アクセル・ローズの圧倒的な存在感と、一聴してわかる声質の魅力はあまりにも絶大だ。音楽面で言えば、スラッシュよりもむしろ多くの曲作りに関与したギタリスト、イジー・ストラドリンの功績を忘れることはできない。当時のメンバーである、ドラムのスティーヴン・アドラー、ベースのダフ・マッケイガンも含めた5人が揃ってこそガンズ!という見方もよく理解できる。

けれども、僕にとっては、ヴォーカリストのアクセルとリードギタリストのスラッシュによる、唯一無二のコンビネーションこそが、ガンズをガンズたらしめる最大の魅力だった。

例えば、キース・リチャーズのいないローリング・ストーンズ、ジョー・ペリーのいないエアロスミス(実際に一時期の低迷を招いた‥)、リッチー・サンボラのいないボン・ジョヴィ(こちらも本当にそうなってしまったが‥)を想像してほしい。史上に残るロックバンドの多くには、いつだって最高のヴォーカリストの傍らには、最高のリードギタリストがツートップで君臨していた。

ガンズにしても、アクセル・ローズという危険な香りを漂わせたフロントマンと同等に渡り合える、アクの強いキャラクターであるスラッシュの存在が、彼らをロックのレジェンド達と同様に輝かせることになった。

レスポールから放たれる歯切れの良いリフ、艶のあるリードギター

ロック、とりわけHM/HRは、ディストーションの効いたギターが核をなす音楽だが、スラッシュのプレイは、他のハードロックンロールバンドの凡百なギタリストとは、一線を画していた。

スラッシュの愛器レスポールから放たれるガリっと歯切れの良いリフと、艶のあるトーンで奏でられるリードギターはどれも印象的だ。「ウェルカム・トゥ・ジャングル」「スウィート・チャイルド・オブ・マイン」「パラダイス・シティ」、誰もが知るガンズの名曲は、スラッシュの指から放たれたイントロ一発で、世界中のロックファンを虜にしてきた。印象的なリフやメロディには、思わず口ずさんでしまう格好良さとキャッチーさが溢れている。

僕自身はHM/HRの中でも、ロックンロール指向の強いものはそれほど好んで聴かなかったけど、ガンズの『アペタイト・フォー・ディストラクション』だけは特別だった。その魅力の多くを、スラッシュのギタープレイに感じていたのは事実だ。

ライヴステージにおいては、バンドのアイコンとして、その存在感はさらに増していく。当時のLAメタル系では少数派と言える黒髪のロングカーリーヘアにシルクハットを被り、サングラスで表情が見にくい風貌は、一目で忘れないミステリアスさを醸し出していた。

激しくアクションでクルクルとステージを駆け回るアクセルの隣で、スラッシュがクールにギターをかき鳴らす。80年代最強といえるツートップのコンビネーションは、ハードロックンロールの本質と醍醐味を、余すことなく伝えることに成功した。

黄金コンビ崩壊から、誰もが待ち望んだ奇跡の復活へ

シーンの頂点に上り詰めたガンズは、91年には意欲的な2部作『ユーズ・ユア・イリュージョン』をリリースしたものの、巨大化していくバンドの中で、スラッシュとアクセルの不仲が表面化。96年にスラッシュが脱退してしまい、バンド自体も崩壊の危機に瀕してしまう。

結局、ファンにとって残念極まりない泥沼の闘争劇を経て、裸の王様と化したアクセルのソロプロジェクト的な様相を見せていたガンズに、スラッシュがまさかの再合流を果たしたのは2016年のことだ。

アクセルとスラッシュが一緒のステージに立ち、ガンズのロックンロールを再び奏でる、誰もが待ち望んだ究極のショウ。『Not in This Lifetime…』と意味深に命名された復活のワールドツアーは数年に渡って続き、ロックバンドの歴代ツアー収入において空前の大成功を納めたのは当然の結果だった。

それは80年代が生んだ最高のコンビネーションを観ることで、記憶の中に刻まれていたあの時代の素晴らしさを再確認したい、そう願う人々が、世界中に溢れていた結果に他ならないであろう。

カタリベ: 中塚一晶