医療機関クラスター 避けられぬ“接触”が起因 大阪大・朝野教授 インタビュー

朝野 和典氏

 長崎みなとメディカルセンター(長崎市新地町)で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生したことを受け、医療機関でクラスターが発生しやすい要因や感染防止の難しさ、対策などを大阪大医学部付属病院の朝野和典教授(感染制御学)に聞いた。

 -全国知事会の調査によると、6月19日時点で感染者5人以上のクラスターは238件。病院、診療所などの医療機関が84件(35.3%)と最多だった。
 医療機関や施設では、診察や看護、介護で人と人との直接の接触が他の職種よりも多いことに起因していると思う。ソーシャルディスタンス(社会的距離)がそもそも取れない、直接触れる、マスクを着けられない患者さんもいる、といった状況があり、感染対策の難しさがある。
 一方、職員から患者さんにうつす場合も同様にある。マスクは感染のリスクを低減できても完全ではない。また、職員の手洗いも必要なタイミングで100%守ることは難しいが、コロナの時代には、徹底することが必要だ。

 -患者の原疾患による発熱や無症状による感染者の発見遅れが感染拡大の理由の一つになっている。医療機関でクラスター発生を防ぐ難しさをどう考える。
 長崎大学病院や長崎みなとメディカルセンターは高度の医療を行いつつ診療をしているから、感染対策については他の医療機関よりも注意しているはず。それでもゼロリスクにはならない現状があることをご理解いただきたい。その上で、発生した感染症が広がらないように、徹底的な検査と十分な対策を取ることが最も有効な対策だろう。

 -医療機関でクラスターを防ぐには具体的にどういう取り組みが必要か。
 感染対策の理想は、症状の有無にかかわらず、全ての人が感染者であると想定して、お互いにマスクを着ける、相手がマスクを着けられないときにはゴーグルなどで目の粘膜を保護する。そして頻回の手洗いを励行する。これは、患者さんに対してだけではなく、家族以外の人との接触では行うべき「新しい生活様式」と言える。
 そして、医療スタッフが感染すれば、よりリスクのある人に感染を広げる可能性があるので、密な環境を避け、対面でのマスクなしでの会話や会食を行わないという日常の注意が守られることを望む。

 【略歴】ともの・かずのり 長崎大医学部卒。2006年7月から大阪大医学部付属病院教授(感染制御学)。研究・専門分野は病院感染予防対策、感染制御に関する疫学解析。感染症治療、抗菌薬新作用機序の研究、耐性菌感染症の病態解析。1955年生まれ。64歳。大村市出身。

 


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