空売りで大損も…相場で大ケガしないために注意すべきこと

「緊急事態宣言」解除後、テーマパークや商業施設などは営業を再開しました。株式市場では再開を素直に好感する動きも一部では見られたものの、足もとの新型コロナウイルス感染者数の増加が止まらないなか、再度の「緊急事態宣言」発出の懸念もあって上値も重いようです。

しかし、ここまでは株価も右肩上がりがほとんどだったので、新たに株式投資を始めた人は大いに利益が出ていると思います。ただ、5月以降は株式市場では選別化や二極化といわれる現象で、株価の上昇にも優劣が見られました。

面白いことに、「売りが多い銘柄」に大きく価格上昇するものが見られたのです。


他人の不幸は蜜の味?

「信用取引」という言葉を耳にしたことがある人もいると思います。信用取引とは、株を持っていないのに売ってしまうことです。通常の取引だと株は買った後に売ります。しかし信用取引はその逆、売った後に買い戻すという取引です。

売った後に株価が下落すれば儲かりますが、上昇してしまうと売った価格よりも高い価格で買うことになり、損失となります。売りが多い銘柄というのは、この信用取引が多いということなのです。

株式の価格が決まるためには、買う人と売る人が必要です。買った人に株を売った人が信用取引の売り(「空売り」といいます」だった場合、その売った人は次に買う人にならなければなりません。つまり、先に買った人が「儲かる」という状況であれば、売った人の中には空売りをした人がいて、「損をしている」ということなのです。

3月から4月の安いところで「今後もさらに価格は下がる」と考え空売りをしてしまった人たちは、今回の上昇相場で大きく損失が出たと考えられます。ですから、株価が上昇しているときは「誰でも儲かっている」わけではないのです。

空売りにはご用心

株価が下がると儲かるという取引は他にもあるのですが、「信用取引で売る=空売り」が株価が下落しても利益が出せる取引ということで、ここ数年多くなってきています。

今回も新型コロナウイルスの感染拡大で株価が下がるのではないかとの思惑が広がったことで空売りが増え、空売りが増えるとその後買いが増えるということで結果的に株価が上昇する一因となりました。

このように、空売りというのは損失がとても大きくなることがあるので、非常に気を付けなければならない取引です。

具体的に見てみましょう。ある会社の株を1,000円で100株を買ったとします。この会社がもし倒産してしまった場合、1,000円×100株=10万円ですから、10万円がゼロ円になってしまうことになります。

これに対して、1,000円で「空売り」した株が10,000円まで上昇してしまった場合を考えてみます。1,000円×100株=10万円で先に売った場合、10,000円×100株=100万円で株を買い戻すことになるので、差し引きで90万円の損失になってしまうのです。

さらに上昇して株価が30,000円まで上昇すると、何と290万円まで損失がふくらむことになります。(実際にはそこまで損失が膨らむケースは稀ですが…)

このように、株価が上昇していても利益が出ている人ばかりではなく、安く売ってしまって後悔している人がいるということがわかります。逆に、自分が損失を出してしまったときに、利益が出ている人もいます。そして「いいところ」で売ってしっかりと利益を確保した人もいるかもしれないということなのです。

自身のポジションに意固地になった結果…

筆者は、空売りはしないほうがいいと常々言っていますので、自身でほとんど空売りをすることはないのですが、同じような経験は何度もしています。

この先は価格が下がると思い、下がったら利益が出るというようなポジションを持っていたら株価が上昇。さらに「明日は下がるだろう」と思っていたらその後なんと16日も連続して上昇したことがありました。

「さすがに5日も連続すれば6日目には下がるだろう」、「6日も連続して上昇したのだから明日にはさすがに下がるだろう」、などと思っているうちに16日も連続して上昇し、大きな損失となってしまったのです。

そして、株価が大きく上昇した要因をよくよく考えてみると、筆者のように皆が5日も連続して上昇したのだから…、と考えて空売りをしていて、下がらないけれども売ってしまっているので買わなければならない、ということが続いたので大きな上昇となったのです。

損失を最小限にするためには

失敗しないためには何が必要だったのか、それは自分とは反対に考えて行動している人がいる、ということに気づくことなのです。

先の筆者の例でいうと、株を買った人にとっては毎日上昇が続くのだから「ウハウハ」なわけです。ですから、5日も続けて上昇したからもう下がるだろうと思って売る人もいるかもしれませんが、逆に5日も上昇したのだから明日も高いかもしれないと思い、「下がり始めるまで売らない」とずっと持ち続ける人もいるのです。そして持ち続ける人が多くなれば、売る人が少なく、買いたい人は高い値段で買わなければ買えなくなり、株価がさらに上昇するということになります。

自分の失敗を素直に認め、すぐに「買っている方が利益が出るんだ」と転換していれば利益となったかもしれません。

自分が失敗したかどうかがわからないことも多いのですが、人が成功しているのかどうかは案外わかりやすいものです。人の成功を見て自分の失敗を認めることができれば、損失も少なくすむのではないかと思います。

© 株式会社マネーフォワード