《狙われる高齢者》アポ電強盗未遂 2人組侵入 今も恐怖

©株式会社上毛新聞社

2人組の男がたたき割った女性宅の窓ガラス。女性はアポ電を受けたため警戒し、男の訪問時に窓越しで応対したという

 昨年11月、群馬県高崎市で発生したアポ電強盗未遂事件。会員制交流サイト(SNS)で知り合った男たちが高齢女性の資産を狙った。実行犯は仲間からのイヤホン越しの指示に従い、女性を襲った。男4人が逮捕されたが、捕まっていない犯人もいる。

◎事件後に固定電話解約 日中の雨「記憶がよみがえる」

 資産を探る不審な電話から2日後の昼すぎ、小雨が降る中で、女性宅付近をうろつく2人組の男。インターホンを押し、金融庁の職員を名乗った。女性は「警察を呼ぶ」と言って追い返そうとし、110番通報もしていたが、背後に違和感。男たちが窓ガラスを割って侵入、ハンマーで電話機をたたき壊した。「キャッシュカードか金を出せ。出さないと殺すぞ」。女性は羽交い締めにされた。

 命の危険を感じつつも、女性は現金を探すふりをして時間を稼いだ。「通報で伝えられたのは名前と住所だけ。早く警察来て。そう祈るしかなかった」。諦めて現金を出そうとすると、パトカーのサイレンの音が聞こえた。振り返ると、男たちの姿は消えていた。

 5月に開かれた実行犯の男(21)らの公判で、犯行形態の異様さが明かされた。犯行当日、男は仲間2人と車で高崎へ向かう際、指示役の男から携帯電話で「抵抗されたら、指をつぶせ」と指示を受けた。そのとき初めて、強盗に加担すると知ったと主張した。

 イヤホンを使い、指示役と通話した状態で女性宅を訪問。いったん引き上げようとしたが「突入」の命令が下り、その後も指示通りに女性を脅迫し、殴ったという。男は「逆らったら何をされるか分からなかった。おばあちゃんに申し訳ない」と反省の弁を述べた。

 事件後、女性は県外に住む娘の元に身を寄せた。耳鳴りがするようになり、医師から難聴と診断された。一審判決後から症状は改善したものの、日中に雨が降ると「事件の記憶がよみがえる」と不安を口にする。

 数カ月後に自宅暮らしを再開したが、「実行犯が捕まっても、いつ別の人間が襲ってくるか分からない」。固定電話は解約し、新たに携帯電話を購入。枕元には警報器を置いて寝る。軽い気持ちで罪を犯した若者に憤りを覚えるが、「きちんと働いて社会復帰してほしい」と願っている。

 「アポ電強盗」の背景には、金融機関の対策で、高額な現金の引き出しが困難になったことなどがあるとされる。群馬県警の捜査関係者は「詐欺はだますために手間と時間がかかる。簡単に金を手に入れるため、詐欺グループが荒っぽくなっている」とみている。

 《アポ電(アポイントメント電話)》 振り込め詐欺グループなどが犯行前に電話をかけ、家族構成や資産状況、現金の保管状況などを聞き出そうとする行為。品物を送ることを口実にしたり、公的機関の調査を装ったりすることもある。