いながきの駄菓子屋探訪(4)宮崎県都城市「坂元商店」

全国約250軒の駄菓子屋を旅した「駄菓子屋いながき」店主・宮永篤史が、「昔ながらの駄菓子屋を未来に残したい」という思いで、これまで息子とともに訪れた駄菓子屋を紹介します。今回は宮崎県都城市「坂元商店」です。

自動車事故のサポートをした結果

荷物の量にもよりますが、長旅をすると数日に1度訪れるルーティンがコインランドリーでの洗濯です。乾燥機が終わるのを待っていると、外で「ガン!」という鈍い音。なんと駐車場で事故が起きていました。幸い軽い接触事故でしたが、これまで何度かぶつけられた経験のある宮永は「ここは自分が役に立つところだろう」と思い、サポートに入ることに。双方おろおろしていたので、声をかけたり警察を呼んだり、丁度自分の車のドライブレコーダーに事故の瞬間も写っていたので、データを皆さんに提供しました。

事故とはいえ、明らかに地元の人っぽい大人が揃ったタイミング。おかしい人だと思われるだろうなと思いつつ、去り際に「この辺に駄菓子屋さんってありますか?」と思い切って聞いてみたところ、「・・・はい??」とやはり全員が一瞬怪訝な顔に(笑)。それでも事故の後始末に貢献したのが効いたのか、お一人が快く教えてくれたので翌日訪ねることにしました。

宝くじ売り場と兼業の駄菓子屋

駄菓子は非常に薄利な商売なので、なにか別の業種と兼業していることがよくあります。教えてもらった「駄菓子屋さかもと」は、その中でもとても珍しい宝くじ売り場と兼業の駄菓子屋さん。お店に入ると結構な奥行きがあり、相当な種類の駄菓子が並んでいました。花火も数が多く、アイスやおもちゃ(駄玩具)も充実しており、子どもたちの満足度がかなり高いお店なのではないかというのが第一印象です。

お店の外には「駄菓子屋さかもと」と書いてあるのですが、正式には「坂元商店」というそうです。元々は現店主のお母さんが昭和40年代に創業した商店で、時代が進むに連れコンビニやスーパーマーケットと競合してしまい、経営が厳しくなった時期もあったとのこと。現店主夫妻が引き継いでからは、駄菓子を中心にしたり、軽食やソフトクリームを販売したり等、地域のニーズも踏まえつつ、二の手三の手で業態を変えながら現在の形に落ち着いたそうです。

子どもと大人、両方の需要を作る

「看板に大きくタコがソフトクリーム持ってる絵が書いてあるんですけど、たこ焼きはずいぶん前にやめちゃったんですよ(笑)。今は、軽食は夏のソフトクリームだけですけど、こっちは暑いからものすごく売れますよ。なんとか商売を続けられるようにって、いろんなことしてきたからねえ。宝くじ売り場と駄菓子屋の組み合わせが珍しいなんて、自分たちでは思ったことなかったなあ」

駄菓子のクジ引きと宝くじは、規模は違えど射幸心を煽るものとしては非常に近いものだと思います。ここでクジを買い慣れた子どもたちは、大人になったらそのままの調子で宝くじを買いに来るのでは?と思いそれも尋ねてみたのですが、意外にも、坂元商店育ちの子は大人になっても宝くじではなく駄菓子を買いに来るのだそうです。「子どもと大人、両方の需要を作る」というのが、現代の個人商店経営の秘訣なんだなと感じさせてくれた兼業駄菓子屋さんでした。

坂元商店

住所:宮崎県都城市下川東2-4-12

電話:0986-24-3436

営業時間:11:00~19:00

不定休

[All photos by Atsushi Miyanaga]

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