無関心の荒野

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 8月9日といえば、長崎では多くの人が「長崎原爆の日」と答えるが、残念ながら全国的には違う。2015年のNHK世論調査によると、長崎に原爆が投下された年月日を正しく答えた人は、全国では26%にすぎなかった▲それを如実に示したのが、来年に延期された東京五輪の日程に合わせ、祝日の「山の日」(8月11日)を8月9日に移そうとしていた政府の方針だった▲本県選出の冨岡勉衆院議員(自民)が党会合で「長崎は悲しみに沈む日だ。祝日というのは絶対におかしい」と再考を求めた。最終的に山の日は8日に移り、9日は振り替え休日とする方針に変わった▲75年前の8月9日、長崎は一発の原爆で壊滅させられた。7万4千人が無残に命を奪われ、被爆者は今なお原爆後障害に苦しんでいる▲被爆歌人の故竹山広さんは死去直前に〈原爆を知れるは広島と長崎にて日本といふ国にはあらず〉と詠んだ。被爆地から一歩外に出ると、無関心の荒野ともいうべき現実が広がる▲もちろん被爆地に思いを寄せ、連帯してくれる人たちも世界中にいる。竹山さんに師事した歌人の馬場昭徳さんは、師の歌に「広島と長崎の平和運動に最後の望みを託している」という願いを読み取る。被爆地は核廃絶を訴え続ける。無関心の荒野に平和の種をまくために。(潤)