「西村京太郎トラベルミステリー72」高橋英樹が語るシリーズが愛される理由

ミステリー界の重鎮・西村京太郎さんが手掛け、時刻表や鉄道にまつわるトリックを解明しながら事件の背後に潜む人間ドラマを描く「西村京太郎トラベルミステリー」。72作目となる今作は、40年以上の歴史の中で初めて北海道・新十津川町で撮影が行われ、十津川警部が新十津川で事件の真相に迫ります!

今夜の放送では、大学教授の大島健蔵(久松信美)が都内の路地で何者かに刺殺されるところからスタート。臨場した十津川警部(高橋英樹)と亀井刑事(高田純次)は、大島が「十津川…」と言い残したことを知ります。面識がなく戸惑う十津川は、現場付近の防犯カメラに映っていた不審な男の手がかりをつかむため、准教授の早瀬由美(黒谷友香)、研究を支援する会社社長・中園宏司(中村俊介)から事情を聞くことに。すると、その男は2人の幼なじみである赤池庄五郎(松尾諭)であることが発覚。3人は北海道・新十津川町の出身で、赤池だけが地元に残って農業を継いだといいます。故郷へと逃亡した赤池の足取りを追って、十津川と亀井も新十津川町へ向かうと猟銃を手に町役場に立てこもる赤池の姿が。「札沼線を撤回しろ!」とむちゃな要求をする赤池だが、その意図とは一体何なのか。3人それぞれが抱える思いとは…。

さて、今回は主演を務める高橋さんにインタビュー取材を敢行! 70作の大台を超えたシリーズへの思いや、北海道での撮影の様子などをたっぷり語っていただきました。

――今回72作目を撮影すると聞いた時の、率直な感想を教えてください。

「うれしい限りです。70作くらいで終わるかなと思ったのですが…(笑)。コンビネーションもいいですし、共演者も仲がいいんです。続くものなら続いてほしいと思っていたので、72作目の作品に巡り合えたことはうれしかったですね」

――70作で終わるかなと思っていたとのことでしたが、ここまで来たらどこまでやりたい!という思いはあるのでしょうか?

「電車を使ったり、地方に行ったりしなければいけないので大変なのですが…。その分、地方の方たちとコミュニケーションがとれたり、共演者のみんなとはしんどい分だけ一緒に作り上げている喜びみたいなものを感じられるので、こういう作品が残ってくれるとありがたいなと思います。役者としては、できる限り続けたいですね。欲をいえば80作!」

――80作ですか! 私も80作目を見るのが楽しみになってきました!! 80作目まであと8作ほどありますが、「トラベルミステリー」としてチャレンジしてみたいことはありますか?

「まだ行ったことのない場所に行ってみたいですよね。電車は、日本が発達する原点だと思うんです。線路が通ったから町が発達した。だから、電車が走ってるだけでドラマがあるみたいなところがあるんです。これからも、電車とそこに住む人々の姿をうまく描けたらいいなと思ってます」

――40年以上の歴史の中で初めて北海道・新十津川町で、そして廃線となった札沼線を使っての撮影でした。

「札沼線は1車両の電車なんですよね。畑の中をずーっと走っていく様子になつかしさを感じると同時に、廃線になってしまうという寂しさがありましたね。札沼線の関係者の方にも協力していただいて、時間外に走らせていただいたりしたんです。特別にやっていただきました。協力なしには完成しなかったので、ありがたかったです」

――視聴者の皆さんにも、畑の中を真っすぐ走る様子を楽しみにしていただきたいですね。さて、北の大地・北海道で撮影だったとのことですが、南の方で「トラベルミステリー」の撮影は行われないのでしょうか。

「南の方面にも行きたいんですけど…ドラマ的にいうと悲しくないんです! 北は電車が走っているだけで寂しさや心にクゥ~ッとくるものがあるんですけど、南の方はなんというか…ピクニックになっちゃうんです(笑)。のんびりするんですよ。だから犯人は南に逃げちゃダメなんです! 北に逃げてもらわないと(笑)。僕の好みですけどね、ドラマチックになる気がします。雪がチラチラと降って、音楽が流れるだけで悲しさが増すんですよ」

――長年演じられているからこそ、北の方がより作品が魅力的に見えると感じられているんですね。そして、今年で高田純次さんとバディを組まれて8年ほどになりますね。

「純ちゃん(高田)とは今回も毎晩、監督も交えて食事しました。昔話とかしながら、3時間以上しゃべってましたね。彼は日活のあった(東京の)国領というところで生まれたらしくて、僕が日活の話をすると嬉々(きき)として聞いているんです。昔話、映画の話、舞台の話…芸談みたいになっちゃいますけど、毎日みんなでワイワイしゃべってコミュニケーションをはかってます。最後は『明日もセリフあるから早く寝ようぜ!』って言いながら帰ってましたね」

――それもロケの醍醐味の一つなのかもしれないですね。今作ならではの撮影中のエピソードはあったりしますか?

「撮影中はとにかくバタバタとしてました。せわしない監督でございますので(笑)。8時開始というと、7時45分には『よーい!』と言ってる監督なんですよ!」

――だいぶ早いです…!

「でしょう! 全員が分かっているので早めに行くんですけど、8時には2番手の撮影が始まってたりするんですよ。私は、村川(透)監督のチーフ助監督と言われてましてですね。段取りから何から、監督の意向を聞いたら『カメラこっち~』『照明はここかな?』って伝達する役割も、人よけも全部やってますね」

――高橋さんがすべてされるんですか!?

「全部やりますよ。仕事がスムーズに行くためには伝達することが大切なんです。私は声が大きいので『こういうカットでこういうの撮りまーす!』って言うと、みんなが分かってくれるからね。大チーフ助監督とか監督が言ってくれますけど、こうやって一緒になって作り上げるのは撮影の醍醐味ですから。でもね、監督はすぐ怒るんですよ(笑)。ちょっと遅れるとすぐ怒るから! 監督を怒らせないようにすることも仕事です(笑)」

――すてきなチームであることが伝わってきます。

「冗談はさておいて、本当に今回も町長以下全員が協力してくれて、いろいろな場面で登場してくれているんです。とてもありがたかったです。皆さん、『えー! このシーンすごいね。消防車2台来てるよ!』みたいな感じでしたよ(笑)。普段は2台通ることないんでしょうね。各所で皆さんの協力を得ながら撮影ができて、いい作品になったなと思ってます」

――最後に、これだけ長く「トラベルミステリー」が愛される理由を教えてください。

「このドラマは日本人の原点なのかなと。日本人の根底にある思いとかを、西村先生がうまく描かれているんです。だから共感しやすいんだと思います。そして、十津川は検挙率100%なんです! 2時間の間にちゃんと検挙できるというストーリーも、安心して見てもらえる要因の一つなんじゃないかなと思いますね」

――72作目の今作も楽しみにしています! ありがとうございました。

【プロフィール】

高橋英樹(たかはし ひでき)
1944年2月10日生まれ。千葉県出身。61年、高校在学中に日活ニューフェース第5期として、日活株式会社に入社。同年に公開された映画「高原児」でデビューする。68年にNHK大河ドラマ「竜馬がゆく」で時代劇初出演を果たし、時代劇俳優としての地位を確立。芸能生活50周年を迎えた2011年にはアニメーション映画「劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ ビクティニと黒き英雄ゼクロム・白き英雄レシラム」でアニメ声優にも初挑戦した。近年は、ドラマ「リーガルV~元弁護士・小鳥遊翔子~」(テレビ朝日系)、「再雇用警察官」(テレビ東京系)などに出演している。

【番組情報】

「西村京太郎トラベルミステリー72」
テレビ朝日系
7月26日 午後9:00~10:54

テレビ朝日担当 Y・O

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