メクル第477号 サクサクでフワフワ♪ アジフライの聖地 松浦に迫る!

 松浦(まつうら)市は「アジフライの聖地(せいち) 松浦」と宣言(せんげん)しています。アジの水揚(みずあ)げ量で何度も日本一になったことのある魚市場があり、サクサク、フワフワの食感のアジフライを市内各地で味わえるそうです。「聖地」を訪(おとず)れ、おいしさの秘密(ひみつ)に迫(せま)りました。

 「聖地」宣言は、友田吉泰(ともだよしやす)市長が昨年4月に行い、市内の飲食店が「松浦アジフライ憲章(けんしょう)」を制定(せいてい)しました。「松浦市で水揚げされたアジ、または市周辺海域(かいいき)で漁獲(ぎょかく)されたアジを使用する」「ノンフローズン(一度も冷凍(れいとう)していないもの)、またはワンフローズン(水揚げされた日に加工・冷凍したもの)で提供(ていきょう)する」など8カ条(かじょう)を掲(かか)げています。

 市内のレストランや食堂、旅館、居酒屋(いざかや)など27店舗(てんぽ)が、憲章に基(もと)づきアジフライを提供。店主自ら釣(つ)り竿(ざお)で一本釣りしたアジを使ったり、特製(とくせい)ソースを手作りしたり、各店とも工夫を凝(こ)らしています。

「アジのうま味と食感を引き立てることに努めています」と話す荒山さん=同市調川町

 調川(つきのかわ)町の松浦魚市場内にある「大漁レストラン旬(とき)」では、水揚げされたばかりのアジを使用。刺(さ)し身(み)でも食べられるほど新鮮(しんせん)で、肉厚(にくあつ)な身に塩こしょうを振(ふ)り、つなぎは卵(たまご)だけでパン粉を絡(から)めてサクッと揚げています。シンプルな調理法で、アジ本来のうま味を引き立てています。店長の荒山正志(あらやままさし)さん(59)は「聖地となってお客さんが3、4割(わり)ほど増(ふ)えました。この時季のアジは脂(あぶら)が乗って特においしいので、ぜひ味わってほしい」と話しました。

 市中心部の志佐(しさ)町にある松尾(まつお)農園のカフェ「Matsuo(マツオ)Nouen(ノウエン)+(プラス)Coffee(コーヒー)」では、パンに挟(はさ)んだアジフライサンドを提供しています。店主の松尾秀平(まつおしゅうへい)さん(35)は「観光客や地元の人たちが気軽にくつろげる空間づくりに努(つと)めています。交流しながら松浦の魅力(みりょく)を発信していきたいです」と意欲(いよく)を語りました。

カフェでアジフライサンドを提供している松尾さん=同市志佐町

 市は聖地宣言に先立って昨年2月に、第3金曜日を「アジフライの日」に設定(せってい)しました。アジが漢字で魚へんに「参(さん)」と書き、金曜日が英語で「フライデー」であることの語呂(ごろ)合わせで、この日を中心にPRに力を入れています。

 市内の小中学校では昨年5月から、第3金曜日の学校給食で定番メニュー化しました。今月17日もアジフライが出され、調川町の市立調川小6年、川崎華穂(かわさきかほ)さん(11)は「何もかけなくてもすごくおいしい。アジの水揚げ日本一は私(わたし)たちの自慢(じまん)です」と話していました。

給食のアジフライを口に運ぶ調川小の児童=松浦市調川町

 他に市の取り組みでは、アジフライの魅力を解説(かいせつ)し、食べ歩き地図などを収(おさ)めた冊子(さっし)「アジフライマップ」を作製(さくせい)しています。市内の観光施設(しせつ)や飲食店などで配布(はいふ)し、市の観光情報サイト「松浦の恋(こい)」にも掲載(けいさい)しています。今月17~19日は松尾農園など2会場で、聖地にちなんだオリジナルTシャツなどグッズ販売(はんばい)のイベントを開き、観光客らでにぎわいました。

「アジフライマップ」

 このように市役所と飲食店などが連携(れんけい)し、海の恵(めぐみ)を生かしながら「おもてなしの心」も発信しています。やる気にあふれた人たちの笑顔も、聖地の魅力となっているようです。

 アジってこんな魚 背中(せなか)が青い「青魚」の一種。低脂肪(ていしぼう)で高タンパク、ビタミンB群(ぐん)、カルシウムなどの栄養素(えいようそ)がバランス良く含(ふく)まれています。その中のドコサヘキサエン酸(さん)(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)は血液(けつえき)をサラサラにし、脳細胞(のうさいぼう)を活性化(かっせいか)させるといわれています。日本の食文化を支(ささ)えてきた魚の一つで、松浦沖(おき)の対馬暖流海域(つしまだんりゅうかいいき)に多く生息。沖合(おきあい)を移動(いどう)する回遊性(かいゆうせい)のアジはまき網で、沿岸(えんがん)に居着(いつ)いたアジは一本釣りや定置網で漁獲しています。

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