「勝ち組」「負け組」の差が拡大?1Q決算発表の注目ポイント

まもなく3月決算の日本企業の第1四半期(4月〜6月)決算発表が本格化します。今年の第1四半期決算はいつもより注目度の高い特別な決算発表です。

その理由はやはり新型コロナウイルスです。4月、5月はまさに日本が緊急事態宣言のなか不要不急の移動の自粛が求められ、経済活動が完全に止まっていた時期でした。当然企業の業績が良いはずもなく、かなりの減益になることが見込まれます。


業績予想は発表される?

また、マーケットへの影響が一層大きいと思われるのが、企業の業績予想の発表です。原則として上場企業の多くは期初に今年度の業績予想を発表します。企業の情報を最も多く持っているのは企業自身ですから、その予想は株価に大きく影響します。前期比で大幅な増収増益など、良い業績予想の場合株価は上昇することが多く、反対に悪い業績予想の場合株価は下落することが多くなります。

その業績予想を今年は多くの企業が発表できていません。コロナの影響で合理的な予想を発表することが困難として、発表が見送られているのです。東京証券取引所がまとめた「2020年3月期決算発表状況」によれば、3月決算企業の6割近くにあたる1,266社が業績予想の発表を見送っています。多くの企業は今後、合理的な予想が可能になった時点で発表するとしています。

コロナショックで一時1万6,000円台まで下落した日経平均は現在2万3,000円近くとショック前の高値の95%ほどまで値を戻しています。株価反発の背景には日本政府の財政支出の拡大や日本銀行の追加金融緩和などがありますが、企業業績が今後V字回復するだろうとの期待も織り込まれているとみられます。

もし今回の決算発表でかなり悪い業績予想が発表されたり、依然として予想発表を見送る企業が多かったりすれば株価調整に向かうリスクが高まってくるでしょう。

「ユニクロ」のファストリは厳しい決算

小売企業を中心とした2月決算企業は一足早く決算発表を終えました。新型コロナウイルスによる自粛の影響をモロに受ける企業が多いとあって、かなり厳しい決算となりました。例えばユニクロを展開するファーストリテイリング(証券コード:9983)の3〜5月決算は売上高が前年同期比39%減の3,364億円で43億円の営業赤字(前年同期は747億円の黒字)となりました。

さらに今期の営業利益予想を1,450億円から1,300億円に下方修正しています。決算発表翌日に同社の株価は3%超下落し、その後も株価のパフォーマンスは良くありません。

また、イオン(8267)も3〜5月期が125億円の営業赤字であることを発表すると翌日株価は5%近くも下落しました。小売各社の決算を総括するとやはりかなり厳しい内容で、株価も冴えないものが多くでています。この状況を踏まえると4〜6月決算にもあまり高い期待は持たないほうが良さそうです。

コロナ禍でも経営力発揮の日本電産

ただ、すでにさすがと思える決算を発表し株価が大きく上昇している銘柄もあります。世界トップの総合モーターメーカーである日本電産(6594)の4〜6月期決算は売上高こそ前年同期比6.7%減となったものの、営業利益は小幅な増益で着地しました。減益になることを見込んでいたマーケットはびっくりし、決算発表翌日の7月22日に株価は5%近く上昇しました。

創業オーナーで現在も最高経営責任者である永守重信氏は、カリスマ経営者として長年日本電産を大きく成長させてきた実績があり、マーケットからの信任も大変厚い方です。永守氏は決算説明会でコストコントロールについて語り、「外部環境が悪いときこそ他社からシェアを奪うチャンス」だとして今期の最高益更新に意欲を示しました。

日本電産のようにコロナ禍でも経営力を発揮し、業績を拡大する企業は存在します。今後そういった勝ち組企業と負け組企業の業績の差は拡大し、株価パフォーマンスも大きく異なってくる可能性が高いでしょう。ぜひ企業決算を分析し、そういった勝ち組企業を探して投資成果につなげていただければと思います。

<文:マーケット・アナリスト 益嶋裕>.

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