【高校野球】国学院栃木、甲子園中止が生んだ“対応力” 10人継投&29人起用の理由

国学院栃木・柄目直人監督【写真:上野明洸】

投手10人、計29人の選手起用で宇都宮南に快勝

栃木の高校野球大会が26日、栃木県営球場などで開催され、国学院栃木が、6-2で宇都宮南を破り、3回戦に駒を進めた。柄目(つかのめ)直人監督は、大会規定の7回を10人の投手リレーで勝利のバトンをつないだ。

打線は初回に2つの四死球でチャンスを作ると、5番田邉卯為、6番黒宮真幸、8番古賀海秀の適時打で4点を先制し、試合の主導権を握った。先発したのは落合勇斗、1回を投げ終えるとすぐさま2番手増野綾人にスイッチ。3回には1死ごとに投手を変え、5回にはプロ注目の大型右腕シャピロ・マシュー・一郎が7番手でマウンドに上がり1回無失点。続く6回には、こちらもスカウトが注目する最速147キロ右腕の神山陽登がマウンドに上がり、1回1/3を投げ1失点。直球は最速145キロを記録した。7回1死からは再度1死ずづ投手を変え、計10投手の継投で宇都宮南に快勝した。

10人継投に加え、野手も含めると計29人の選手を起用した国学院栃木。柄目監督は「10人使ったのは初めてかな」交流試合規定でベンチメンバーの数が増えたことも要因ではあるが、10投手継投の意図を問われると「彼らが伸びてきたので投げさせてあげたかった」と答えた。

新型コロナウイルスの影響で夏の甲子園大会が中止になったことについては、「正直生徒になんと言っていいか分からなかったですね」と振り返った。しかし、生徒が前向きに練習している姿を見て、「生徒は言いませんけど『監督前向いていこうよ』というように見えたので。自分も含めて“鍛えよう”と思った」と生徒たちの姿に感銘を受けた。

国学院栃木・神山陽登【写真:上野明洸】

大学で野球を続ける部員は過去一番となる15人

そして柄目監督は「こういう時代なので“対応力”というのを意識していて、野球を通して対応力をつけたい」と感じ、短期間ではあるが、練習や試合の中で選手の“対応力”を鍛えたという。

公式戦で多くの選手を起用し「今日も(選手を)たくさん代えましたけど、すんなり対応できたと思うんですよ。時間はあまりなかったけど、目指した目標は達成できているのかなという気はします」と選手達の“対応力”の成長に満足気だった。

現時点で大学で野球を続ける予定の部員は15人。これは過去1番の人数だという。「(夏の甲子園が中止で)悔しい思いをして、次につなげたいという子が多い。またこの大会でも悔しい思いをしていくことが大事だと思います」と、甲子園中止を糧に成長してほしいという思いを口にした。

この日、8番手でマウンドに上がった神山も大学進学を希望する1人だ。進路を問われると「大学に行ってからプロに行きたい。うちは父親1人なので、野球で恩返ししたい。そこは必死にやっていきたい」と、大学での更なる成長を誓った。直球の最速は147キロ。理想とする選手はオリックスの山岡泰輔投手だ。

「今日勝ったことでまた1週間競い合いが始まる。楽しみですね」と語った柄目監督。甲子園という目標は失えど、日々練習の中で切磋琢磨する国学院栃木ナイン。次戦でも、この1週間で更に成長した姿を見せる。(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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