ナスダック最高値、市場の関心は米大統領選へ。日本株はどう動く?

7月、世界の株式市場は総じて株価は良好な推移を辿りました。世界各地で新型コロナの感染が再拡大する傾向をみせましたが、市場心理が極端に悲観に傾くことはありませんでした。

米国ではナスダック総合指数が最高値を更新し、中国では上海総合指数が一時はおよそ2 年半ぶりの高値を付けるなど、むしろ、一部で投資家マインドは好転に向かったかたちです。


新型コロナの感染再拡大も、前向きな市場

世界は、感染が再拡大する状況から目を背けることはできないものの、一方で経済活動は再開・活発化へと舵が切られています。今のところ医療体制の崩壊が意識されるほどの危機的な状況にはなく、「withコロナ」のもとでの新しい行動様式とともに、人々の生活は前進しています。

感染の第2 波襲来のリスクは依然としてくすぶりますが、第1 波のときと比べて、死者数や重症患者数は抑制されています。ワクチン開発が順調な進展を見せていることも心強いといえるでしょう。

今後、再び経済活動に制限が加わる可能性は現時点で限定的と見られ、それを見透かしたマーケットは、堅調な値動きを続けている印象です。

米国市場は踊り場?

米国では、追加の財政出動が検討されている模様です。少なくとも、現状レベルで新型コロナの感染をコントロール可能な状態に保ちつつ、経済を正常化に近づけることができれば、年末に向けた着実なファンダメンタルズの改善と株価の上昇が十分に期待できると考えます。

主に米国の企業業績に対して、市場参加者の目線が切り上がっていることから、4-6 月期決算の内容次第では株価が伸び悩むことも想定されます。しかし、あくまでも2020年後半における経済正常化の進展を前提にするなら、それは相場の踊り場と位置付けられるでしょう。

急ピッチで上昇してきた中国株は、短期的にはその反動も予想されますが、大幅な調整までは想定されません。政策に支えられた中国経済は4-6 月期の実質GDP が前年比3.2%の成長を遂げ、回復の足取りは確かなものとなりつつあるためです。

このようなグローバルの株式市場環境を踏まえると、目先、必要以上に株価が下押しした場面では、押し目買いのスタンスが正当化されそうです。

ただ、足元では新型コロナの感染拡大に加えて、米中関係悪化のリスクも意識され、「慎重」と「楽観」のバランスが求められる環境であることに変化はありません。“選別物色”が重要であることは言うまでもなく、相場の急変動にも機動的に対応できるよう心掛けたいところです。

<写真:ロイター/アフロ>

米国企業の業績回復を決める4-6月期決算

4-6月期の米国企業(S&P500)の業績は、前年比で4割を超える減益が予想されています。しかし、7-9月期以降は持ち直し、2021年にかけては顕著な業績回復が見込まれています。

アナリストによる業績見通しの修正動向を指標化した「リビジョン・インデックス」は4月以降に切り返し、足元ではおよそ1年ぶりのプラス転換(上方修正が優勢な状況)を果たしています。

予想PERと企業業績(利益)の掛け算によって求められる株価が、これまで順調に上昇してきたのは、未曾有の金融緩和によって、予想PERが拡張してきた側面が大きいといえます。予想PERが拡張し切った後は、今度は企業利益が期待通りに拡大に向かえば、いずれ株価は上昇すると見られます。

リビジョン・インデックスの改善が意味するのは、そうした業績回復への期待の高まりです。今回の4-6月期決算を最終的にどのように総括できるかは、今後の相場を占う上で大きな判断材料となり得ます。

期待を現実に変えるための足掛かりとなるような決算内容なら、先行きに対する強気見通しを取り下げる必要はないと考えます。

8月、焦点は米大統領選に移る

4-6月期の決算発表を乗り切った後は、市場の関心は徐々に秋の米大統領選へと向けられることになりそうです。4年前のトランプ大統領誕生の教訓から、超大国の大統領を誰が務め、どのような影響を及ぼすかは、十分な注意を払う必要があります。

大統領選までおよそ3ヵ月とはいえ、まだ先の話であり流動的な面も多いのですが、現時点での情勢および大統領選前後の株価の動きについて、少し頭の整理をしておきましょう。

民主・共和両党の大統領候補は、8月に予定される各党の党大会で正式に指名されることになっています。

ただ、事実上は予備選を勝ち抜いた民主党のバイデン候補が、現職のトランプ大統領に挑む構図は明らかで、戦いの火蓋はすでに切って落とされた状況です。トランプ大統領の再選か、バイデン新大統領の誕生か―これから秋にかけては日増しに選挙戦がヒートアップしていくと予想されます。

バイデン候補がかなり有利な情勢

米国の有力な世論調査会社の調べによれば、現時点で有権者の支持はバイデン候補に傾いている模様です。直近でバイデン候補の支持率が50%前後であるのに対し、トランプ大統領の支持率は40%強で、両者の差は10ポイント程度開いたかたちとなっています。

4年前の大統領選では、民主党のクリントン候補が支持率調査で終始リードしていたものの、本番ではトランプ大統領に逆転を許しました。当時の分析では、見た目の支持率には表れない“何か”、すなわち“隠れトランプ支持派”の存在が、そうした大逆転劇を演出したとの見方が有力視されました。

しかし、前回の大統領選ならともかく、今回のトランプ氏はそうは言っても現職の大統領です。これまで隠れ続けた“隠れトランプ支持派”は、今では胸を張ってトランプ支持を表明している可能性もあります。だとすれば、現状の支持率は意外と実態に近いのかもしれません。

現時点で10ポイント近い支持率の差は、明らかにトランプ大統領にとって不利な情勢を物語っています。秋の大統領選に向けて、両者の攻防からは目が離せそうにありません。

過去の大統領選前後、株価はどう動いてきたか

次に、大統領選前後における株価推移の特徴についてまとめてみましょう。過去のケースを振り返ると、選挙前の約3 ヵ月は株価の変動性が低下し、狭いレンジでの値動きとなる傾向が強いようです。もともと、夏場から秋口にかけてのこの時期は、方向感の出にくい季節性があり、膠着感が強まる展開も予想されます。

一方、大統領選後の株価推移について見ると、その動きは大統領選前とは対照的で、株価が動き始める様子を確認できます。1976 年以降に行われた大統領選は、直近のトランプ勝利の回を除けばトータルで10 回。共和党と民主党でそれぞれ5 勝ずつと星を分け合っています。

トランプ政権による株高はどうなる?

第一にいえることとして、トランプ大統領の誕生がかつてない株高を演出した事実には揺るぎないものがあります。では、トランプ大統領が選出されたとき以外で共和党候補勝利のケースと民主党候補勝利のケースを比べるとどうでしょうか。

選挙後の半年間では両者に大きな差は生じていないことが分かります。つまり、どちらが大統領になっても、株価は上がるという傾向が見て取れるのです。比較的、短期の相場を占う上で、この結果には心強いものがあります。

他方、1 年後、2年後の株価パフォーマンスでは民主党に軍配が上がります。足元ではバイデン候補の優勢が伝えられていますが、「トランプ再選がベスト」と位置付けてきた株式市場にとって、「バイデン大統領」の誕生も決して悪い話ではないのかもしれません。

日本株に海外投資家が戻るか

日本国内でも新型コロナの感染が再び増加する傾向を見せていますが、マーケットの反応は冷静さを保っています。ワクチン開発の進展に期待を寄せながら、「with コロナ」の下で新常態を受け入れようとする投資家心理の変化を垣間見ることもできます。

新型コロナの新規感染者数が、緊急事態宣言解除後の最多を更新する一方、日経平均株価の方は昨年末水準に近づいています。日本の企業業績見通しの悪化には一抹の不安を覚えるものの、米国株が大きく崩れない限りは、日本株だけが大幅調整を迫られるというリスクは限られると見ています。

日米間の株価の相関は、足元でリーマンショック後の2009 年以来の高い水準を維持しており、両者の連動性は健在です。海外投資家の日本株売買動向(現物と先物の合計)は5 月後半以降に買い越し基調に転じてきましたが、買い越し額は1兆円ほどにとどまっています。

年初から5 月第2 週にかけての売り越し額がおよそ9 兆円に及んだことを踏まえると、買いの戻りはごくわずかです。米国株が堅調に推移すればするほど、海外投資家の間では、日本株を持たざるリスクが意識される可能性があります。引き続き、日本株に対しても前向きな取り組みが可能と見ています。

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