『海辺の映画館-キネマの玉手箱』超フリーダムな大林映画から、私たちは何を感じるのか

(C)2020「海辺の映画館 キネマの玉手箱」製作委員会/PSC

 『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』の尾道三部作などで知られている、巨匠、大林宣彦監督の遺作。元々は4月10日に公開されるはずだった本作はコロナ禍で延期となりました。本作の公開を心待ちにしていた大林監督は、本来ならば華々しい初日を迎えるはずだった4月10日当日、肺癌のため82歳で逝去。本作を満員の観客と一緒に観られなかったことが、どれだけ無念だったかは想像できません。せめて多くの人にこの素晴らしい作品を観て欲しいと思っています。

 子供の頃に、映画『HOUSE ハウス』を観たとき、本当に斬新で胸をドキドキさせたことを覚えています。あの頃に私が感じた自由さや、面白さが大爆発した映画が本作でした。この作品は、若い頃に大林監督が持っていた情熱や好奇心、自由さはそのままに、戦争への強い、強いアンチテーゼを込めた大傑作となっています。

 映画はいつだって私たちを心から楽しませ、そして学ばせ、考えさせてくれる。トーキー映画や、時代劇、ミュージカルなど様々な映画をその名の通り<玉手箱>のようにごちゃ混ぜにして、私たちに教えてくれるのは幕末から現代までの日本の歴史。ファンタスティックで、ユーモアたっぷり、超フリーダムな大林映画の中で、私たちに教えてくれるのは<戦争に、大切な命を捨てないで>というメッセージ。楽しむ中で、気づけば戦争の残酷さに泣いていました。私は是非とも、大林映画を観たことがない若い世代の人たちに観てもらいたいです。今まで観てきた映画の価値観を根底から覆す、なんじゃこりゃ!な感覚と、観終わった後に心の奥に感じたこと。その全てを大切にしてもらいたい。携帯も鳴らない、なんの邪魔も入らない映画館の暗闇の中で3時間の摩訶不思議な映画体験を楽しんでください! ★★★★★(森田真帆)

監督:大林宣彦

出演:厚木拓郎、細山田隆人、細田善彦、吉田玲、成海璃子、山崎紘菜、常盤貴子

7月31日(金)から全国順次公開

© 一般社団法人共同通信社