MotoGP第3戦:ヤマハが達成した表彰台独占と、モルビデリのエンジントラブルに潜む懸念

 MotoGP第3戦アンダルシアGPは、ヤマハライダーが表彰台を独占した。ファビオ・クアルタラロ(ペトロナス・ヤマハSRT)とマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)は2戦連続の表彰台。そして、久々のポディウムに上がったのが、バレンティーノ・ロッシ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)だ。

 2020年2度目のヘレスでの表彰台に、ヤマハライダー3人が上った。ヤマハが表彰台を独占するのは、優勝ロッシ、2位ホルヘ・ロレンソ、3位ブラッドリー・スミス(現アプリリア・レーシング・チーム・グレシーニ)による、2014年シーズン第16戦オーストラリアGP以来のことだ。

 クアルタラロはポールポジションから好スタートを決めるとそのまま後続を突き放し、独走でポール・トゥ・ウイン。前日にはホールショット・デバイスにトラブルを抱えていたと言うが、決勝レースではその影響を感じさせることはなかった。それでも何度も残り周回数を確認するほど、クアルタラロには長く感じられたレースだったという。

 前戦スペインGPに続き2位フィニッシュとなったビニャーレスは、オープニングラップの最終コーナー進入で、トップのクアルタラロをオーバーテイクしようと試みた。しかしビニャーレスはワイドに膨らみ、コンパクトなラインを取ったクアルタラロはそのまま最終コーナーを立ち上がった。ビニャーレスはその後、ロッシに続き3番手を走行。ペースに苦しみながら、「タイヤを冷やすために、少し下がり、それから追い上げようとした」と語る。ビニャーレスは残り2周でロッシを交わすと、そのまま2位でフィニッシュした。

 クアルタラロ、ビニャーレスともに、MotoGPクラスの初戦となったスペインGPからポテンシャルを見せてきた。セッションでは安定したペースを刻み、速さを発揮。予選ではフロントロウ、そして決勝レースでは表彰台を獲得する。その強さは、もはや疑いようがない。

 一方、3位を獲得したロッシは、スペインGPで苦戦していた。初日は総合13番手、予選では11番手。そして決勝レースではマシントラブルによりリタイア。さかのぼって2018年から2019年シーズンにかけては、リヤタイヤのグリップ低下に苦しんだ。2019年はシーズン序盤の2戦で表彰台を獲得したものの、タイヤを持たせるためにトライしたというセッティングは「マーベリックとファビオにはよかったけれど、僕には“NO”だった」。コーナーの進入で特に、悩まされたという。

 しかし、ロッシはアンダルシアGPで、2019年シーズン第3戦アメリカズGP以来の表彰台に返り咲いた。初日はセッティングを変更し、それが功を奏したという。その好印象は、そのままレースに持ち越された。ロッシは長く苦しい時期を経て「チームのみんなにとっても、この表彰台は意味がある」と決勝レース後の会見で語った。

■ヤマハ、エンジンに不安の種あり?

 好調に見えるヤマハ勢だが、懸念がある。もうひとりのヤマハライダー、フランコ・モルビデリ(ペトロナス・ヤマハSRT)は、アンダルシアGPをマシントラブルによりリタイアした。モルビデリ自身は予選で6番手を獲得し、決勝レースでも中盤には、ロッシやビニャーレス、フランセスコ・バニャイア(プラマック・レーシング)とともに表彰台争いを展開していた。

 しかし17周目、モルビデリのマシンがストレートでスローダウン。レース後、リモート取材に応じたモルビデリが語ったところによれば、「バイクは突然止まった。原因はわからない。今、何が起こったのか確認しているところなんだ」ということだ。そして前述したように、ロッシもスペインGPで、マシントラブルによりリタイアを余儀なくされている。

 また、ビニャーレスにはフリー走行3回目で、バイクの異変が生じたという。これについて決勝レース後の会見で質問されたビニャーレスは「バイクから変な感じがあったので、すぐにピットに戻った。それ以上はわからないけれど、エンジンには問題はないと思う」と語った。

 こうしたトラブルもさることながら、ヤマハ勢が2レース目のアンダルシアGPまでですでに、4基またはそれ以上のエンジンを使用している点も気がかりだ。大多数のライダーは、アンダルシアGPまでに2基のエンジンを使用して戦っているのである。また、アンダルシアGP決勝レース前までに明らかとなっている限りでは、特にビニャーレスとロッシのエンジンは、すでに1基、アロケーションから外れている。なお、2020年シーズンのエンジン使用基数制限はコンセッションの適応外マニュファクチャーの場合、5基だ。

「今週はフランコ、先週はバレンティーノのエンジンが壊れたけれど、問題究明の時間は(ブルノまで)2週間ある。調べて解決することは大事だ。チャンピオンシップは難しいし、次戦はエンジンに負荷がかかるからね」と語るのはビニャーレスである。

 ヤマハがチャンピオンシップをけん引するのか、懸念事項が浮き彫りになるのか。次戦チェコGPの展開に注目したい。

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