テレワークが当たり前の時代、「オンラインで成果を出す」チームの作り方

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の拡大により、私たちの働き方は大きな変化を余儀なくされています。緊急事態宣言が解除され、一時は収束に向かうと思われたのも束の間、再び感染拡大する懸念が生じています。

そして、コロナ禍において、物理的な接触が困難になり、テレワークを推進する企業も多くなってきました。今後、コロナが収束(終息)したとしても、「新しい生活様式」の中で引き続きオンラインでのコミュニケーションは不可欠なものになるでしょう。


オンラインコミュニケーションの課題

一方で、オンラインならではの課題も明らかになってきました。社内外のコミュニケーションを対面からオンラインに切り替える際に生じる課題の代表例をご紹介します。

(1)日常業務で発生する問題の「予兆」がつかめなくなった
固定席がある組織では、直接の共同作業がなくても、日常業務の中で必ず接する機会があります。その中で、あいさつした時の顔色や声のトーン、顧客や他部署との電話での様子や残業の頻度など、さまざまな情報が入ってくるため、問題が発生する前に「予兆」を捉えて対応することができます。しかし、テレワークになると、上司もメンバーの状況をタイムリーに察知することができず、コトが起こってからモグラたたきのように対応しなければなりません。

(2)会議の場で活躍できる/できない人の明暗が分かれた
対面での会議では、相手の反応を見て、場の空気を読みながら合意形成をし、何か言いたそうなそぶりをすれば、周囲が発言を促すなど気遣いをしながら、運営されています。しかし、オンラインの会議に慣れていないと、周囲の反応が分かりづらく、音声が遅延するためかぶってしまうこともあります。その中で自身の意見をはっきり主張するタイプが目立ち、一方、熟考して、相手の反応も見ながら意見を言うタイプは対面の場以上に目立たなくなっています。

(3)他部門との連携がしづらくなった
同じオフィス内にいれば、隣の部門に声をかけたり、すれ違ったときに立ち話をしたりと非公式に連携をする機会が自然とありました。このようなちょっとしたコミュニケーションが社内協働を促進し、新しいアイデアを生み出すきっかけになることもあります。しかしながら、オンラインになると、用件を明確にしないと声をかけづらく、ちょっとした相談が難しくなっています。ネットワークの先が通常業務の関係者に限定され、入ってくる情報や相談相手の選択肢が減少しています。

オンライン環境でも成果を出すには?

このような状況を打開することはできるのでしょうか?オンライン環境でも成果を出せるチームは、メンバー個々の意識やスキルの強化とともに、組織としての仕組みを整えています。上記の3つの課題に対して、具体的な取り組み例をお伝えします。

●定期的なコミュニケーションの「場」をつくる
問題発生の「予兆」をつかむためには、チームメンバーの間に定期的なコミュニケーションの機会をつくることが有効です。最近では「1on1ミーティング」と呼ばれる、定期的に上司と部下との間で行う1対1の対話の機会を制度化し、短い周期でコミュニケーションをする企業が増えています。

1対1であれば、会議の場などでは言いづらい個人的悩みや業務上の問題を相談しやすくなり、声のトーンなどからも体調やメンタルなどの状態を上司も察知しやすくなります。特に、新入社員や異動者など組織に慣れていないメンバーがいる場合、相談の場が設定されていることは、立ち上がりのつまづきを防ぐ意味でも効果的です。

●全員が周囲へのちょっとした気遣いをし、「安心感」をつくる
オンラインは情報の伝達には向いていますが、表情が見えにくく、感情を伝えたり、くみ取ったりすることが対面よりも難しいと言われています。他の参加メンバーへの気遣いや、反応を意識して言葉にすることが必要となります。

また、発言しやすいように、「心理的安全性」(他のメンバーが、自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰をあたえるようなことをしないという確信をもっている状態)を作ることが重要です。「この場は自由に意見を言い合えるよう」「意見の違いを味わうつもりで」といった場のルールを設定したり、あらかじめアジェンダを伝えて、各自で考えを整理して集まったりするのも有効です。

●勇気をもって協力を依頼し、広い「ネットワーク」をつくる
オンラインコミュニケーションは使いこなせれば、今までにはない広い範囲のステークホルダーを巻き込みやすくなります。米国の社会学者であるグラノベッター博士の提唱する「弱い紐帯」にもある、つながりは弱くても広いネットワークを持つことで、新しいアイデアやイノベーションを生み出す可能性が広がります。

昨今、オンライン・コミュニケーションの認知が広まったおかげで、例えば、エリアの異なる部門との議論や社外の協力者への相談も可能となっています。ただし、協力を依頼する際には、それが相手にとってどんな意味を持つのか、自分の思いや利益だけでなく、相手の立場で考える必要があります。

ニューノーマル時代において、オンラインのコミュニケーションは避けることができません。対面でのコミュニケーションに慣れている人も、オンラインのメリットや使い方を理解し、どちらも使いこなせるようになれば、業務の効率は飛躍的に向上します。コロナ禍をコミュニケーション効率化のチャンスと捉え、オンラインで成果を出すチームの作り方を考えてはいかがでしょうか。

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