島原漁協の陸上養殖アワビ死滅 8万4000個 豪雨で海水塩分低下 

アワビが死滅して、空になった水槽=島原市新田町

 九州を襲った記録的豪雨の影響で、島原漁協(長崎県島原市)が陸上養殖しているアワビ10万個のうち、約8万4千個が死滅したことが27日までに分かった。被害額は約1480万円と見込まれる。有明海には球磨川や筑後川などから大量の河川水が流入。反時計回りの潮流の影響で、西側に位置する島原沿岸に到着する頃には塩分濃度が過度に低下。その海水を取水したことが原因とみられている。

 同漁協は2カ所のアワビ陸上養殖施設を保有。新田町の第1養殖場では約8万4千個、洗切町の第2養殖場では約1万6千個を育成。死滅は2018年7月にも第2養殖場で発生。今回同様、豪雨で塩分濃度が低下した海水を取り込み約1万5千個が死滅し、240万円の被害が出た。
 高木将愛場長(53)によると、有明海の塩分濃度は通常約30‰(パーミル=千分の割合)だが、被害に遭った第1養殖場では、約200メートル沖合からくみ上げる海水の塩分濃度が今月上旬、20‰台まで低下。12日には通常の3分の1以下の8‰となり、13日に全滅を確認した。「熊本や福岡に降った雨水が有明海に大量に流入。左回りの潮流のため、島原付近に運ばれてきた海水は塩分が薄まっていたのでは」と指摘する。
 同施設では水槽の海水を常に入れ替えていたが、塩分濃度の低下を受け8日から止水。以降は1日1回、塩分濃度が比較的高い満潮時に海水を全て交換し、水槽に塩を入れることで濃度の調整を図っていた。
 アワビの生存条件は、塩分濃度20‰を下回ると危険とされる。そのため、多い日には1日360キロの塩を投入し対応したが、海水の入れ替え時の塩分濃度の変動が原因で、次第に弱っていったとみられている。
 同施設で陸上養殖するヒラメとトラフグは、比較的塩分濃度への耐性が高く被害がほとんどなかった。また、水槽の水環境を維持できる循環ろ過の設備を導入していた第2養殖場でも被害を免れた。

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