連日人吉へ、熊本地震の恩返しの汗 御船の建設会社、片付けに重機も

災害ごみをトラックに積み込む右田企業社長の右田公也さん(手前右)と社員ら=23日、人吉市矢黒町

 豪雨による被害が大きかった人吉市の中心市街地で、御船町の建設会社「右田企業」の社員らが重機を駆使し、後片付けのボランティア活動を続けている。社長の右田公也[ひろや]さん(28)は熊本地震の際、仕事の都合で地元御船の復旧に関われなかった。苦い経験をばねにし、今は人吉で汗を流している。

 「何なんだ、これはっ」-。災害が発生した4日、右田さんらは山江村の親族に支援物資を届けた。その際、「何か助けになれないか」と辺りを見て回り、人吉の市街地に足を踏み入れたとたん、被害の大きさに衝撃を受けたという。同行した社員と相談し、翌5日から人吉でのボランティアを決めた。

 23日は人吉市矢黒町の球磨川沿いにある和食店前で、社員らが自転車や植木鉢、家電製品などの災害ごみをトラックの荷台にてきぱきと積み込んだ。経営者の女性(58)は「私が病気で、父も高齢のため、ごみを運べずに困っていた。泣きたくなるほどうれしい」と去って行くトラックを見送った。

 ボランティアのため持ち込んだ重機は、パワーショベルなど7台。毎日10~20人の社員が御船-人吉間を往復し、災害ごみの撤去や民家に流入した泥のかき出しなどに当たっている。右田さんは毎日通い、「スピーディーに片付けを終わらせ、一日も早く住民を安心させたい」と社員と共に活動している。

 人吉市で老舗材木店を経営する永田政司さん(49)は、右田さんらの活動を後押し。自宅や店舗が被災したにもかかわらず、店舗の敷地内にある空きスペースを災害ごみの仮置き場として右田さんに提供した。右田さんらを頼りにする被災者は永田さんを介しても広がっている。

 右田さんが熊本地震で被災した地元御船の復旧に関われなかったのは、仕事で県外にいたためだ。「一番大変な時に地元を離れ、何もできなかった。でもボランティアの人たちが家族を手助けしてくれた。そのおかげで普通の生活が取り戻せた」。今回の活動には、その「恩返し」の意味も込められている。

 ボランティア活動をしている期間中、右田企業の本業は休止となるが、「復旧のめどがつくまでは続けたい」と右田さん。「活動している中で、『夜が不安で眠れない』という被災者の声を聞いた。警察などと協力し、地域の防犯活動にも取り組みたい」と新たな活動を視野に入れている。(吉田紳一)

熊本日日新聞 2020年7月26日掲載

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