住宅ローン破綻のよくあるパターンやその理由。競売を回避する方法、対策について解説

住宅ローン破綻はどうして起きるのか。それを探っていくと、一定のパターンや理由が見えてきます。また、住宅ローン破綻したときに怖いのが自宅の競売です。競売にかかって落札されれば、その住宅は他の人の手に渡ってしまいます。今回は、もし住宅ローン破綻に陥ったときに競売を回避する方法・対策をピックアップしました。

「いろんな条件が変わってしまって、住宅ローンが破綻しそう」
「もしかすると、住宅ローンを滞納してしまうことになるかも」
「子どもの生活環境を変えないために、なんとしてでも家を守りたい」

――そんな方々に向けた、前もって知っておきたい知識を解説します。

住宅ローン破綻率と、要因とは?

住宅ローンの返済が滞り、家計が破綻してしまうことを「住宅ローン破綻」といいます。通常、住宅ローンを借り入れる際には返済計画を作成し、その計画をもとにローンを返済するものです。しかし、住宅ローン破綻が起きるということは、返済計画がそもそも無理なものだったのか、返済期間中に大きな暮らしの変化があったということです。ここからは、住宅ローンの破綻率や破綻する要因、実話に基づいたケースについてご紹介します。

住宅ローンの破綻率は、毎年2%以上にものぼる

日本の住宅ローン破綻率は、毎年約2%以上とも言われます。50人に1人以上の割合で破綻している人がいる計算です。ただし、これらの統計は明確な調査結果があるわけではありません。この約2%という数字は、「リスク管理債権」という住宅金融支援機構のデータをもとに、住宅ローンが支払えなくなった人の割合を算出したものです。

リスク管理債権とは、住宅ローンの返済が滞っていたり、返済することができずに破綻していたりする貸出金のこと。例えば、平成28年度の調査データを見ると、3ヶ月以上滞納されている住宅ローンのリスク管理債権は約4400億円で、元金残高が23兆4000億円程度です。この割合を破綻率とすると、住宅ローンが払えなくなった人は約1.9%程度いるといえます。

参考:平成28年度リスク管理債権

日本の50人に1人が住宅ローン破綻していることは、海外から見れば決して多い数字ではないようです。ただ、近年続いた景気の悪化で住宅ローン破綻一歩手前の状態である人は一定数存在し、誰でも住宅ローン破綻する可能性があります。また、自然災害や昨今の感染症による倒産などが増える中で、返済が難しい人も増えています。

住宅ローン破綻の理由とは?実話に基づいたケース

さて、次に住宅ローン破綻が起きてしまう理由を見ていきましょう。住宅ローン破綻の原因は、以下の例に代表されます。ここでは、実話に基づいたケースをご紹介します。

ローン返済額と自分の収入のバランスが合っていなかった

1つ目は、住宅ローンの返済額と自分の収入のバランスが合っていなかったというケースについてです。ある男性はもともと少々見栄を張るタイプで、モデルルームへ行った際に気に入った物件を「どうしても」と購入してしまいました。正直身の丈に合わない高級な物件であっても、一生の買い物であるマイホームだからと、金銭的なことよりも、気持ちを優先してしまったのです。

そもそも彼は高級車やブランドバッグなど、派手で高価なものが好きだったため、マイホームを購入するにあたっても衝動的に決めてしまいました。住宅ローンをギリギリ組める価格であれば、返済は可能だとも思ったのでしょう。結局、シミュレーションもろくに検討せず、物件を契約してしまいます。

彼は毎月23万円を住宅ローンの返済にあてていました。毎月の収入が70万円ある男性ですが、このローン返済額では返済比率は約32%です。経済的に余裕をもちながら返済できる比率は、一般的に20%と言われています。毎月70万円の収入であれば、本来は月14万円程度が妥当な返済額です。適切な返済額と、実際の返済額との差は9万円。これでは明らかに差がありすぎます。

住宅ローンを組むなら、余裕をもって返済できる金額を自分でシミュレーションする必要があります。銀行が可能とするローンの貸付額が、必ずしも、あなたにとって妥当な額だとは限らないからです。まずは自分の収入から返済比率を計算し、ライフプランなども加味してシミュレーションし、無理のない借入額であるかどうかを検討するべきでしょう。

予期せぬ残業代の減少が住宅ローン破綻の引き金に

働き改革が叫ばれる昨今、予期せぬ残業代の減少によって、返済額と収入のバランスが崩れてしまったケースもあります。ある40代後半の男性は、家族で出し合って5000万円の一戸建てを購入。毎月の返済は家族3人で協力しあっていて、この男性は月に7万円を支払っていました。男性の職場は残業が当たり前の状態でしたので、毎月残業代を住宅ローン返済に充てていました。

ところが、会社が働き方改革に取り組みました。そして、残業代は激減。残業代に頼っていたローンの返済ができなくなり、たちまち日々の暮らしが苦しくなりました。この男性の場合は、残業ありきでの収入でローン返済額を決定しており、それが仇となったケースです。

ローン返済額を決める際には残業代を加味してはいけない、基本給を基準として返済計画を立てることが重要だと教えてくれるいい例だといえます。

転職・病気などによる収入の大幅な低下

終身雇用制度が一般的でなくなった今、転職や本人/家族の病気(介護)による「ダブルパンチ」で大きく収入が下がってしまうこともあります。サラリーマンとして働いていても、企業の倒産や破産に巻き込まれ、これまでの安定した暮らしが崩壊してしまう人もいるのです。

例えば、家族の介護の必要性が出てきたAさんは、忙しすぎる職場を離れ、時間的に余裕のある仕事へと転職しました。働く時間が限られることもあり、転職したことで収入は激減。正社員からアルバイトとして働くようになったことで、収入も不安定になります。それでも毎月のローン返済はあるため、経済的に苦しくなってしまったのです。

また、病気がきっかけでローン返済に苦しむケースもあります。例えば、Cさんは夫が病気になり、自分がパートに出てローンを返済しなければならなくなりました。もちろん夫には保険が支払われているのですが、医療費で消えてしまって生活は困窮するばかり。

正社員として働いていた夫は、体調に合わせて働ける月給の安い仕事に就き、Cさんもパートに出て減収を補おうとしました。しかし、もともと年収600万円あった世帯収入収からの減収は、賄うことができません。あっという間にローンの返済が滞るようになってしまいました。

子どもの成長に伴い、養育費が負担になる

子どもがいる家庭では、その成長に伴って養育費がかかります。子どもにかかる養育費/学費を折り込んでおかなければ、住宅ローンの破綻を招くことがあります。大手ゼネコンで働くBさんは、30代の頃、35年ローンで5000万円のマンションを購入しました。支払いは月20万円でしたが、当時は十分に支払えるお金でした。

ただ、右肩上がりと見込んでいた収入は据え置きとなったのです。さらに、子どもの希望で2人とも私立中学に通わせることとなりました。妻も仕事に出ているものの、夫婦合計の年収は900万円程度。生活費を差し引くと月の収支は約10万円足りない計算で、プールしたボーナスを取り崩しながら暮らしています。旅行や外食もセーブする苦しい生活が続いています。

想定外の離婚で、慰謝料もプラスされてしまう

昨今、35~55歳の層で離婚率が上昇しており、住宅ローンを支払っている真っ最中の世代の離婚が増加しています。一つ事例をあげましょう。自分の不貞が原因で離婚したKさん。元妻は妻としての役割はきちんと果たしてくれていたことを考え、住宅ローンの支払いを条件に家を明け渡すことを提案しました。

ですが、妻は「こんな嫌な思い出が詰まった家には住みたくない」と自分が出ていくことを希望しました。確かにKさんの家は、Kさんの両親が遺した土地の上に建っているもので、親とのソリが合わなかった元妻としては「親の問題」「夫との問題」を思い出させる良い環境ではありません。

長期間話しあった結果、Kさんはその家を維持するため住宅ローンを支払い続けることに決めました。ただ、家を慰謝料代わりに渡すことはできなかったので、親族にかけあってお金を借り、元妻に200万円の慰謝料を支払いました。これから、親族への返済も続ける予定です。

住宅ローンの延滞で、マイホームを手放す?せっかく購入した自宅が競売に

住宅ローンの返済を延滞してしまうと、一括で返済するように督促状が届くことがあります。その結果、住宅が競売にかけられてしまうことも少なくありません。この場合、マイホームを手放すしかないのでしょうか?

住宅ローンの破綻危機?滞納期間3か月ならまだ間に合う、早めに対策を

住宅ローンで生活が破綻していると感じたら、できるだけ早く、法律事務所等へ相談することが大切です。特に、ローン返済をすでに滞納してしまっているなら一刻を争います。できるだけ滞納期間3ヶ月以内に動き出すようにしてください。なぜ「3ヶ月以内」なのかというと、3ヶ月滞納すると競売にかけられる可能性が出てくるからです。

滞納して1〜2ヶ月には、銀行などの金融機関から支払い請求が届きます。しかし、それでも滞納してしまうと、3ヶ月目には催告書が送られてきます。また、「期限の利益喪失通知」というものが届くこともあります。この「期限の利益喪失」を簡単に説明すると、住宅ローン返済の分割払いの権利が失われるということです。この通知が届くと、住宅ローンの一括返済を求められるのです。

住宅ローンを一括返済できない場合には、保証会社が肩代わりする「代位弁済」が行われます。すると、今度は保証会社から、肩代わりした代金を一括で返済するよう求められるのです。住宅ローンの返済を滞納すると、3〜6ヶ月に以上のようなことが起こります。

もし、3ヶ月以内に個人再生などの債務整理を申し立てることができれば、返済期限を延長してもらえないか、月々の返済額を減らしてもらえないか、一定期間は利子のみの支払いで元本返済は猶予してもらえないか、といった相談のもと、緩和措置を受けられる可能性があります。

できれば、滞納前からファイナンシャルプランナーや弁護士等に相談し、どんな救済措置が受けられるのか知っておくと安心です。

住宅ローン破綻に赤信号。滞納期間6か月がデッドライン

もし、この6ヶ月までの期間に返済ができない、または個人再生などの申し立てを行わないと、建物はそのまま競売にかけられます。裁判所から担保不動産差し押さえの趣旨を伝える通知書が届き、競売手続きが始まります。この時点では、まだ競売の取り下げが可能ですが、何も策を講じず、競売にかけられた住宅が落札されれば、すぐさまその住宅を出ていかなくてはいけません。

緩和措置が受けられる可能性があるのは、住宅ローン滞納が始まってから6ヶ月以内です。それまでに個人再生などの債務整理を行うか、残債の一括返済をしないと、住宅を手放さなければなりません。住宅を手放したくないというのであれば、住宅ローン以外の返済額を減額できる住宅ローン特則(個人再生)という方法が遺されています。

家を失わずに自己破産も回避できるため、何とかこの住宅ローン特則を適用してもらえる可能性はないか、弁護士や司法書士に相談してみてください。

住宅ローンの破綻危機に陥ったら、「任意売却」という選択肢も視野に

もし住宅ローンの返済ができないということであれば、任意売却も選択肢に入れてください。任意売却とは、住宅ローン残高が住宅の評価額より多い場合でも利用できる制度です。住宅ローンを組んでいる金融機関の合意を得れば、建物や土地を売却できます。

競売の場合、相場よりも安い価格で売却されたり、引っ越し代の確保もなしに立ち退きしたりと、元家の持ち主としては心が痛むことが続きます。住まいの周辺に競売情報が漏れてしまう可能性もあります。しかし、こうした不利な状況を任意売却なら避けることができます。

任意売却では、一旦競売にかかってしまってもその競売を止めることが可能です。競売を止めたら、任意売却で住宅を売却し、引っ越し資金などを工面したり、その後も自宅に住み続けられるリースバック等の制度を利用したりすることができます。競売にかけられるよりは、債務整理の幅が広がるのです。

しかし、任意売却にもデメリットはあります。それは、基本的に住宅ローンを3ヶ月以上滞納していると、信用情報機関に登録されるということです。もし、信用情報機関に登録されれば、クレジットカードが使用できなくなったり、割賦での携帯電話購入ができなかったり、将来的に不便を感じることが出てきます。

また、任意売却には連帯保証人の同意が必要なため、連帯保証人とすぐに連絡が取れない場合、手続きがなかなか進められません。他にも、売却しようとしても、買い手の提示する金額と、ローン残債とに差があると、金融機関から売却の承諾が得られないこともあります。

あくまでも残債を相殺できるだけの売却額でなければならないので、折り合いをつけるためには交渉が必要となり、売却までに時間がかかってしまいます。

住宅ローン破綻がコロナショックで増加。原因と対策は?

さて、2020年に入って深刻なのが、新型コロナウイルスによる経済不安です。すでにコロナショックなどと呼ばれ、住宅ローン破綻が増加しています。ここでは、コロナショックと住宅ローン破綻の増加について、原因と対策を探っていくことにしましょう。

住宅ローンを「ギリギリで支払っていた」人達が続々と破綻している現実

なぜ今住宅ローン破綻が起こるのかというと、そもそも現代人の多くがギリギリの経済状況だったからです。例えば、2008年頃に住宅ローンを組んだとすると、当時よりも現在の方が経済的な状況の悪化を痛感している人の方が多いはずです。この間にリーマン・ショックが起こり、給与カットやボーナスカットを経験した人も少なくないでしょう。失職した人もいるはずです。

そんな中でもやっとのことで払っていた住宅ローン。コロナショックによって一時的でも自粛生活を強いられることで、収入が減り、住宅ローンが支払えなくなってしまった方も多いのです。

住宅ローン破綻の危機を回避するためには?

この住宅ローン破綻の危機に怯えている人は多いでしょう。毎日あくせく働いても生活が楽にならないという人は少なくないはずです。しかし、現状を少しでも楽にする方法はないわけではありません。もし、住宅ローン破綻の不安があるなら、積極的にローンの借り換えをするなど、場合によっては返済計画の大幅な変更も必要です。

住宅ローンの金利タイプを「変動金利」へと変更したり、金融機関に相談し、返済内容を見直したりして、住宅ローン破綻のリスクを少しでも減らしましょう。新型コロナウイルスへの対策として、金融機関や住宅金融支援機構も住宅ローンの支払条件の見直しに対応する相談窓口を設けています。

また、困ったときはすぐに銀行や弁護士等へ相談することが大事です。滞納すれば複雑な手続きが必要になり、住居を失うなどダメージが広がります。しかし、滞納の前に動けば、的確な緩和措置が受けられ、債務整理の方法も選べるかもしれません。とにかく滞納前に、支払えなくなる前に動き出しましょう。

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