「Born fi dead(死ぬために生まれて)」、ジョージ・フロイド暴行死事件への抗議運動に自らを重ね合わせるカリブの人々

2020年5月30日、ホワイトハウスの前で行われたジョージ・フロイド暴行死事件に対する抗議デモ。撮影はFlickrユーザー、ジェフ・リビングストン。(CC BY-NC-ND 2.0)

ジャマイカ人でレゲエ先駆者のボブ・マーリーは、彼の曲『ソー・マッチ・シングス・トゥ・セイ』の中で、「覚えていてほしい、雨が降るときはひとりの家だけに降るわけじゃない」と歌った。

5月25日、ジョージ・フロイドさんが無残にも亡くなった。彼は白人警官暴行により死亡した大勢のアフリカ系アメリカ人犠牲者の一人であり、この事件は、カリブ海では大きな反響を呼んでいる。かつて、白人社会の植民地だったカリブ海地域は、過去に行われていた人種差別が残した人権抑圧といまだに闘っている

「これが我々が声を上げる理由である」

「アメリカがくしゃみをするとカリブ海は風邪をひく」という、言い古されたカリブのことわざはさておき、アメリカはこの地域に経済を含め多大な影響を与えている。とりわけ、パン・アフリカ主義者でジャマイカ人の英雄マーカス・ガーベイ、アメリカの公民権運動で有名なトリニダード人のストークリー・カーマイケル、そして母親がグレナダ人だったマルコムXなどがそうである。マルコムXの両親はともにマーカス・ガーベイが創設した世界黒人開発協会アフリカ会連合(UNIA-ACL)で積極的に活動していた。

この地域の賠償請求運動の最前線にいた西インド諸島大学(UWI)副学長のヒラリー・ベックルズ教授は、この密接に関連しあう歴史を認識する声明を発表した。

This Minneapolis fight was Marcus Garvey’s fight; it was Martin’s fight; it was Malcolm’s fight; it was Marley’s fight. It’s a Caribbean fight and it’s a global fight. […]

From that horrible history when Europeans stole 15 million of our ancestors from Africa and scattered them across plantation America—the Caribbean getting the lion’s share—shattering family bonds, the future was cast in the concrete again, in which the face of George was crushed. […]

It is this culture of centuries upon which the American nation is built that continues to choke the air from black lungs. […] This is our cause.

このミネアポリスの闘いはマーカス・ガーベイやマーティン、マルコム 、マーリーの闘いでもあった。そして、カリブ海だけではなく、世界的な闘いでもある。[中略]

我々の1500万人もの祖先は、ヨーロッパ人によってアフリカからアメリカ大陸へ、特にカリブ海地域に多くが連行され、それぞれのプランテーションへと奴隷として離散させられた。そして彼らの家族の絆は打ち砕かれた。そうして我々の祖先の未来が閉ざされたように、ジョージの顔が押しつぶされた場所で再び未来が閉ざされてしまったのだ。[中略]

アメリカ国家が何世紀にも渡って築いたこの文化が、黒人を窒息し続けている。[中略]

これが、我々が声を上げる理由である。

「Born fi dead(死ぬために生まれて)」

西インド諸島全域およびアフリカ系住民(黒人)のSNSユーザーたちは注目していた。なぜカリブの人々がアメリカの問題に関心を持たなければならないのかと考える人もいれば(そのような多くのコメントはその後削除されている)、アメリカで起きていることをカリブ海地域の複雑な状況に置き換えることはできないとする人もいる。そんな中、多くの人々が、アメリカの制度的人種差別自分たちに向けられている人種差別とを関連付けて考えていた。

トリニダード生まれで英国に拠点を置く弁護士マーガレット・ローズは、仲間のSNSユーザーたちに「島国主義的な懸念を超えて私たちの考えを高めることのできる人たち」を責めないようにと求めると同時に、この問題を次のように要約した

For those who have eyes to see the issue playing out in America today is not only about police brutality and it is not only about America. It is a manifestation both literally and metaphorically of the meta-crisis we are all experiencing worldwide. It is about systemic oppression, structural violence, economic, social and physical violence perpetuated through an indifferent global economic system that operates to reward the accumulation of wealth with power. […]

Derek Chauvin’s knee was not just a white man’s knee casually crushing the breath of life out of a black man. Chauvin is an instrument of system enforcement against George Floyd who represents the poor, the powerless, and the downtrodden in society.

いま、アメリカで起きている問題に関心を持つ人たちにとっては、この事件は単なる警察による残虐行為ではないし、アメリカだけの問題でもありません。これは文字通り、言わば、私たち全員が世界における重要な変化の帰路に立っていることを明らかにしたものです。それは、富める者はさらに富み、貧するものはさらに貧するという、人に優しくない世界経済システムによって固定化された、制度的抑圧と構造的、経済的、社会的な身体的暴力について、問うものだからです。[中略]

デレク・ショーヴァンの膝は、黒人の生命を押しつぶした白人の膝というだけではありません。ショーヴァンは、社会における、貧しく、無力で、そして虐げられた人々を代表するジョージ・フロイドさんに対する制度執行の手先なのです。

同じように、ブロガーのアニー・ポールはフロイドさんへの暴行死亡事件を話題にしているジャマイカ人を皮肉った。ジャマイカ警察が低所得者コミュニティーの住民に対してたびたびふるう暴力についてはジャマイカ人は何も言おうとしないのだ。

I see the outrage being expressed on local social media re #GeorgeFloyd but honestly? I don’t think the way Jamaican police treat poor youth here is any better. They are socially black in the Jamaican hierarchy and ‘born fi dead’ as far as police are concerned. #Selectiveoutrage

ジョージ・フロイドさんのことで地元のSNSは怒りを発信していますが、本当にそう思ってるのでしょうか?ジャマイカ警察の貧しい若者への扱いはアメリカより良いわけではありません。貧困層の若者たちはジャマイカでは社会的にアメリカの黒人の位置にあたります。警察からみて、彼らは「Born fi dead(死ぬために生まれて)」いる人たちなのです。#Selectiveoutrage

「born fi dead(死ぬために生まれて」は「born to die(死ぬべくして生まれた、生きる価値がない)」という意味である。

世界的感染症が大流行の最中、死と隣り合わせの時だが、こうした社会的破綻が同時に起きていることは偶然ではないと認める評論家もいる。マーガレット・ローズ氏は次のように述べた。

COVID-19 began the systematic dismantling… this is part of the COVID-19 domino effect.

新型コロナウイルスにより制度的解体が始まりました……これは新型コロナウイルスのドミノ効果の一部です。

カリブ海における人種差別

6月2日、アフリカ系アメリカ人の苦境に対する連帯を示すため、多くのカリブ海地域のネットユーザーたちは、有色人種に対する警察の残虐行為に抗議する音楽業界が始めたストライキ「ブラックアウト・チューズデー」に賛同の意を示し、自らのプロフィール写真を黒い画面に変更した。

この抗議活動は、フロイドさんだけでなく、警察による、丸腰のまま殺害されたアメリカ黒人、アーモウ・アーベリーさんとブレナ・テイラーさんの暴行殺害事件もきっかけとなった。Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)の活動団体は、後日、#BLMハッシュタグの濫用により、教育や対話を行うとする団体のサイトが違う目的のサイトに誘導され、本来伝えられるべき情報が届けられない状況になっているとした。

一方、カリブ海地域のツイッターでは、次のような地元で行われている人種差別に関する証言飛び交う事態となった。

Racism is so prevalent in Trinidad and as a DARK SKIN AFRO TRINI WOMAN, I just want yall to know that the people that don't see it are privileged.

— JUSTICE (@mela_nin_fae) June 1, 2020

トリニダードでは黒ずんだ肌のトリニ女性に人種差別が広く行われている。みんなに知ってほしいのは特権を持っている人がそれを見ないようにしているということ。

Racism doh exist in Trinidad but I know rel fellas who didn’t want a black gyul because they didn’t want “nappy head” chirren eh…but anyway back to y’all in the studiopic.twitter.com/2ymBx6JHRn

— MamaTiks (@MamaTiks) June 1, 2020

トリニダードには人種差別は存在しませんが、「ちりちり頭の」子どもが欲しくないので、黒人の女の子を望まなかった人たちが実際にいたのを知っています。え-……まあ、ともかくスタジオにお返しします。

2つの主な民族(インド系とアフリカ系)を祖先に持つトリニダード・トバゴの多文化社会では、SNSユーザーたちは、自国の政治でさえ人種に基づいていること、両民族間の憎しみが歴史的に植民地主義を統制し操作する手段として使われていたこと、そして人種差別から派生した偏見が無知に根差していることを指摘している

アフリカ系トリニダード人であるアイザック・ラダーは好奇心から参加したインド系トリニダード人が運営する人種差別者たちのWhatsAppのグループの内情を暴露した[注意: ラダーが投稿したスクリーンショットには、不快な表現が含まれています]

「問題は人種差別だけではない」

トリニダード・トバゴでは、ブラックアウト・チューズデーに関しては、民族差別についてのコメントで大いに盛り上がった。そして、それらは、フロイドさん殺害という観点というよりもその後に起きる社会不安という視点に立ったものが多かった。 Facebookユーザーのディーン・ボアザンは、次のように返信した

I find TOO MANY TRINIS […] have TOO MUCH TO SAY about ‘riots’ and ‘looting’ being uncivilized and how you don't respect it. If it wasn't for the Canboulay riots there would be no Carnival.

There would be no Labour Day without riots. There would be no Emancipation Day without riots. There would be no Independence Day if it wasn't for riots across the then British Empire.

Stop being myopic about your own history when people are fighting for their lives.

あまりに多くのトリニダード人たちが[中略]、「暴動」や「略奪」が野蛮で、尊重しないなどと言い過ぎている。もしカンブーレイの暴動がなければ、カーニバルはなかっただろうに。

暴動なしには、労働者の日も奴隷解放の日もなかっただろう。 当時、大英帝国全域で暴動が起きてなければ、独立記念日もなかっただろう。

命がけで戦っている人がいるのに、自国の歴史について表面的な考えはやめろ。

さらに火を注いだのが、論争に加わる必要があると感じた何人かの商店主たちのSNSへの投稿だった。地元のシリア系商店主で、武器や麻薬関連の犯罪で逮捕され、すでに物議を醸しているマイケル・パトリック・アバウドは、米国でデモをしている人たちはフロイドさんの死を「好き勝手なことをする」口実にしているとフェイスブックに投稿した。 その後、アバウドは自分の投稿が誤解されたとして謝罪した。

その後すぐに、「All Lives Matter(すべての命が大切だ)」と発言したティーショップオーナーのダイアン・ハントによるInstagramへの投稿(のちに削除)など、配慮のないSNSの更新が続いた。ビジネスマンのジェラルド・アバウドはハントには言論の自由があると擁護し、黒人たちに「感情的な状態」から「立ち上がるよう」諭した

ハントは後に『「All Lives Matter(すべての命は大切だ)」は「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」と矛盾する言い方だとは気が付いていなかった』と述べる一方で、「ウェートレスの黒人の女の子が書いたものだった」と発言の責任をスタッフに転嫁した

「どうすればよいのか?」

しかし、多くの人々は真実を語り解決策を見つけることに焦点を置いた。

米国在住でカリブ海移民のひとりであるサラ・チョン・シンは、フロイドさんが殺害されたミネソタ州で有色人種の女性として暮らした経験を共有した

The one-dimensional way that POC are seen there was shocking – we were treated like criminals more times than I can remember – cops were called for us at least twice that we know of, and we were harassed by them a number of times beyond that. The only place that we felt ‘safe’ and ‘human’ was when we visited Native American reservations. Not even the Catholic Church there was able to give us that. […] All that being said, I have hope for the younger generations in Minnesota, but it will definitely take some time.

そこでは有色人種が受ける侮蔑的な扱いに衝撃を受けました。私たちは数えきれないほど、犯罪者のように扱われたのです。警官に少なくとも2回は路上で職務質問され、そのうえ、何度も嫌がらせを受けました。私たちが「安全」と「人間らしさ」を感じたのは、インディアン居留地を訪れた時だけでした。 カトリック教会でも、そのようなものは得られませんでした。[中略]ミネソタの若い世代には希望がありますが、明らかに時間がかかるでしょう。

ニューヨーク在住のトリニダード生まれの犯罪学者、レニー・カミングスはFacebook上で次のような質問を投稿した

How is this going to end and who or what is going to end it? What is it going to take?

どうすれば解決できるのか? だれがどうやって終わらせるのか? そのためには何をすべきなのか?

ニューヨーク在住のトリニダード生まれの犯罪学者、レニー・カミングスはFacebook上で次のような質問を投稿した。
質問への回答は「(ジョージ・フロイドさん殺害時に)そこにいた警察官全員に殺人罪を言い渡す」というものから、「トランプを再選させない」までさまざまだったが、カリブの人々はもっと深いところに答えがあることを知っている。

ネットユーザーが共有している情報を探ることから始めるとよいだろう。Facebookユーザーのキャロライン・テーラーは、「人によっては、ネットで共有されている情報がこの問題をさらに理解するのに役立つだろうし、何度も同じことを説明する手間も省けることだろう」と述べている

彼女のリストには、劇作家アンナ・ディーヴァー・スミスとオーガスト・ウィルソンの作品、エイヴァ・デュヴァーネイの映画、ニーナ・シモンの抗議音楽が含まれているが、これらはすべて「表面的に論じているにすぎない」と認めている。

校正:

Sumiyo Roland

原文 Janine Mendes-Franco 翻訳 Kiyoshi Harada · · 原文を見る [en] · コメント (0)
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この記事 はGlobal Voices 日本語版から配信されています。