【新型コロナ】「皆さんの善意を」 募金活動できず、補助犬育成が窮地に

写真左から、聴導犬候補のメリー、ジュン、マサル、ミルキー。盲導犬候補のロビン(写真はいずれも日本補助犬協会提供)

 日本補助犬協会(横浜市旭区)が、補助犬育成に必要な資金をクラウドファンディング(CF)で募っている。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、収入の柱である募金活動がまったく行えず、窮状に陥っているためだ。目標額は5頭分の育成費に相当する1370万円。同協会は「補助犬を必要としている人たちのために、皆さんの善意を寄せてほしい」と訴えている。

 同協会は、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種の補助犬を育成する国内唯一の組織。2002年の発足後、これまでに約100頭の補助犬を育成し、身体障害者に無償で貸与してきた。

 補助犬の育成費を含めた運営費の約9割は、街頭での募金活動のほか、企業や学校などを訪問して補助犬への理解を深めてもらいながら資金を募る活動で賄ってきた。しかし、コロナ禍で今春以降、こうした活動がストップしてしまっている。

 同協会によると、補助犬を約1年間かけて訓練するために、飼育、医療、施設管理や、訓練士や犬の移動・宿泊などで1頭当たり約274万円が必要という。自身が訓練士でもある朴善子代表理事は「子犬の育成から適性を見極め、訓練開始に至るまで多くの人の手がかかっており、利用者も待望している。本年度の育成に関しては止めるわけにはいかない」と力説する。

 目標額は、協会全体を運営する費用からはほど遠いが、成長した5頭との生活を心待ちにしている障害者らがいることを鑑みて、事業費などは除外して育成費用のみを集めている。

 現在育成しているのは、聴導犬候補4頭(メリー、ジュン、マサル、ミルキー)と盲導犬候補1頭(ロビン)。いずれも1歳前後で好奇心旺盛だったり、甘えん坊だったり性格も長所も多様だが、通例10歳で引退する補助犬の後継として、各家庭で活躍することが期待されている。同協会で育った聴導犬と暮らす横浜市都筑区の福永順子さんは「(聴導犬の)マルコは必要な音を教えてくれる欠かせないパートナーで、出会ってから毎日が楽しくなった。補助犬を待ち望む人のために、ぜひ協力をお願いしたい」と呼び掛ける。

 8月末までの予定で今月1日から始まったCFには、28日時点で目標額のおよそ3割に当たる約400万円の善意が寄せられている。朴代表理事は「協会のSOSに多くの人が協力してくれたことに感謝するとともに、補助犬育成への期待や事業の尊さを感じている。補助犬の役割を広く発信して協力を求めていきたい」と話している。

 寄付の方法などは同協会のホームページで。問い合わせは同協会電話045(951)9221。

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