介護現場「密」避けられず 施設間の連携求める声 山鹿市の老健施設クラスター

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入所者を抱え上げ、車いすからベッドに移す介護士の女性。介護の現場で「密」は避けられない=28日、熊本市西区

 熊本県山鹿市の介護老人保健施設「太陽」で入所者と職員計26人の新型コロナウイルス感染が確認されるクラスター(感染者集団)が発生し、県内の福祉関係者が警戒を強めている。利用者との身体的接触が避けられない介護現場での感染防止対策の難しさが浮き彫りになった形で、介護サービスに支えられている利用者の家族からも不安の声が上がる。

 28日、熊本市西区の特別養護老人ホーム「三和荘」。介護士の鳥居あゆみさん(29)が入所者の高齢女性を抱きかかえ、車いすからベッドに移そうとしていた。鳥居さんは「『密』がない介護はあり得ない。ウイルスを持ち込まないよう、外食もしないなど私生活に最大限の注意を払っている」と言う。

 同施設は山鹿市のクラスター発生を受けて同日、職員に感染防止対策を改めて通達。7月中旬に再開した入所者との面会やショートステイの新規受け入れも中止し、感染者が急増している福岡への移動も慎むよう求めた。

 ただ、後藤卓爾副施設長(45)は「県内でも数十人単位で感染者が出ており、県内移動も危うい状況。人との接触を極力避けるしかない」とし、クラスター発生は「いつでもどこでも起こり得る」と気を引き締めた。

 感染対策は生活管理がしやすい入所施設より、通所施設の方が難しいとの声も。名古屋市では3月、市内のデイサービス利用者らが集団感染し、市は一部のデイサービス事業者に休業を要請した。

 熊本市西区の梅田隆一さん(80)の妻(81)は週6日、デイサービスに通う。梅田さんは「介護のストレス軽減になっている家族も多いはず。感染は心配だが、デイサービスに行かない選択肢はない」と話した。

 同市の介護老人保健施設で働く男性職員は「毎日約40人が通所利用しているが、それぞれの施設外での行動までは把握しきれない」と悩ましげだ。職員側がウイルスを持ち込まないよう対策を徹底しており、「完璧に感染を防ぐことは難しいが、やれることをやるしかない」と話す。

 高齢者の生活の場である入所施設の場合、感染者が出ても簡単に休業できるわけではない。認知症の母親(86)が同市の特別養護老人ホームに入所する保育士の女性(59)は「もし施設が利用できなくなれば仕事に行けない」と心配する。県は「クラスターが発生した施設への応援職員の派遣など、支援態勢を検討中」という。

 介護老人福祉施設「白寿園」(荒尾市)の施設長で、全国老人福祉施設協議会の鴻江圭子副会長(68)は「感染を拡大させないために、利用者がほかにどこで介護サービスを受けているかなど、施設間の情報共有が重要だ」と強調。その上で「場合によっては入所施設の休業も想定される。利用者の受け入れ先を確保するために、各施設が連携して取り組む必要がある」と話している。(福井一基、深川杏樹、豊田宏美)