「ド根性きじ馬」復興の象徴 料理店のシンボル、豪雨流失から“帰還” 熊本県人吉市

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豪雨で球磨川に流されたものの、八代市内で発見され店に戻った「ひまわり亭」の巨大きじ馬とオーナーの本田節さん=28日、人吉市

 熊本県人吉市矢黒町の郷土料理店「ひまわり亭」のシンボルで、豪雨によって流された郷土玩具「きじ馬」の巨大オブジェが、球磨川の約60キロ下流の河口近くで見つかり、“奇跡の帰還”を果たした。店員や地域住民は、傷つきながらも力強く存在感を放つ「ド根性きじ馬」を地域の復興の象徴として、「被災に負けず力を合わせよう」と気持ちを奮い立たせている。

 樹齢300年以上のスギから彫られたきじ馬は全長約4・5メートル、重さ約800キロ。1998年の開店時から店の「守り神」として軒先に置かれ、観光客や地元住民に親しまれてきた。4日の豪雨で球磨川が増水し、店は約2メートル浸水。きじ馬も濁流に流された。

 きじ馬を製作したのは、店のオーナーの本田節さん(65)と同い年の友人で、今年2月にがんで他界した。本田さんは「形見だったきじ馬を失い、言葉にならなかった」という。

 吉報が届いたのは15日。八代市の漁港で、全身擦り傷だらけで車輪が取れたきじ馬が漂着しているのが見つかった。本田さんは建設業を営む友人に相談し、16日にクレーン車で引き揚げ、店まで搬送してもらった。

 「見つかったと聞いた時は信じられなかった」と本田さん。涙を流して、きじ馬を迎え入れた地元の人たちもいた。自宅が床上浸水した近くの北島祐子さん(77)は「きじ馬は私たちの心のよりどころ。地域の復興を見守ってほしい」と願う。

 熊本地震で炊き出し支援に奔走した本田さんは8日から、キッチンカーで人吉市内を回って炊き出しを始めた。知人の農家らに無償提供してもらった野菜を使ったカレーや弁当など毎日200~300食を振る舞い、既に5千食を超えた。

 本田さんの原動力は、店を愛してくれた人吉の人たちへの恩返しだ。「体はしんどいけど、きじ馬を見ると元気が湧いてくる。今日も炊き出しに行って来るよ」。きじ馬の傷ついた背中を優しくさすり、元気にキッチンカーに飛び乗った。(後藤幸樹)