あの頃の僕と出会う。村上春樹のクールで優しい短篇集『一人称単数』

朝読書におすすめの本をご紹介する『まっこリ~ナのCafe BonBon』。小説やエッセイ、暮らしや料理の本など心に効く本をセレクトしています。

今日の「まっこリ~ナのカフェボンボン」の本棚は、『一人称単数』

作家・村上春樹の6年ぶりとなる短篇小説集、新刊です。さまざまな記憶をめぐる8篇。クールで優しい世界への扉を開けて。

一人称単数
著者:村上春樹
出版社:文藝春秋

時は瞬く間に過ぎ去り、「ささやかな記憶」だけが残されていく。物語のなかの「僕」たちは、その小さな記憶のかけらに心を激しくかき乱されている。「石のまくら」で語られるのは、「僕」が十九歳の頃に知り合った一人の女性のこと。ほんのいっときの出会いだったはずなのに、長い年月が経ったいまも僕は「彼女がまだこの世界のどこかにいることを心の隅で願っている」——。

こんな不思議なことがあったんだ。そんな調子で語られる僕の話を、喫茶店の片隅かどこかで、静かに耳を傾けているような気持ちで読みました。心を揺さぶられた出来事を淡々と語る僕と、かつて途方にくれていた僕を重ね合わせながら。

「ウィズ・ザ・ビートルズ With the Beatles」は、1965年の夏から秋にかけてのチャーミングなストーリー。日曜日の朝、主人公の僕がガールフレンドの兄とふたりきりで過ごすシーンがいい。ガールフレンドは不在のまま、彼女の家で僕は風変わりなお兄さんのために、ある小説を朗読することになって……。

村上春樹の小説の登場人物の「僕」たちが途方にくれている姿に魅かれます。この本を読んだらショート・ストーリーズ『カンガルー日和』を読み返したくなりました。夏の読書にどうぞ。

ラブ&ピースな一日を。
Love, まっこリ〜ナ

「まっこリ~ナのカフェボンボン」を読んでくださってありがとうございます。「カフェボンボン」が心ときめく本との出会いの場となりますように。

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