ヤクルト“投壊”は投手だけの責任? 藪恵壹氏が「これは痛い」と指摘する要因とは

ヤクルトのガブリエル・イノーア【写真:津高良和】

5投手のリレーで11四球&20失点、宮本のプロ初本塁打も焼け石に水

■阪神 20-5 ヤクルト(28日・神宮)

ヤクルトは28日、神宮球場で行われた阪神戦に5-20と屈辱的な大敗を喫した。先発イノーアから5投手のリレーで、与えた四球は「11」。味方のエラーが重なったり、雨が降り続ける悪天候だったとはいえ、まさに“投壊”と呼べる状況で、今後に大きな課題が残された。

先発のイノーアは初回、先頭の近本光司を遊撃ゴロに打ち取ったかに見えた。だが、これをメジャーでゴールドグラブ賞の受賞歴を持つ新外国人エスコバーが捕球ミス。安打と四球で無死満塁とすると、4番・大山悠輔の打席で暴投して先制点を許すと、この回に3点を献上。2回にはボーアに満塁アーチを浴びるなど、立ち上がりから大崩れした。

2回裏にヤクルト打線は宮本丈のプロ1号となる3ランで3点を返したが、3回からマウンドに上がった2番手・坂本光士郎も3イニングで6失点、3番手・中澤雅人は1イニングで6失点と止まらなかった。

この状況に、阪神OBでメジャーでも活躍した藪恵壹氏は「バッテリーが全くインコースを突かなかった。神宮のような狭い球場では、インコースを上手く使わないと大量失点することになります」と分析する。

「ヤクルトの投手陣は、ピンチになると外角に投げて逃げ倒していた。全く内角を使わずに、外角ばかり攻めても無駄。テンポも悪くなっていたし、あれでは勝負になりません」

投手陣が上手くボールを操れていない事実もあるが、藪氏が「これは痛い」と指摘するのが、2人の捕手、嶋基宏と中村悠平の不在だ。「やっぱり“扇の要”と言われるポジションですから、ここに安定感がないと苦しくなりますよね」と指摘。「11四球を出した責任は投手にだけあるわけではないですよ」と話す。

ホームランの出やすい神宮球場に「僕は5点リードでは安心しなかった」

ただ、この11四球が大量失点を招いたことは事実だ。

「神宮球場、東京ドーム、横浜スタジアムといった狭い球場の場合、僕はソロホームランでの1点は仕方ないと思っています。ただ、走者がいる場面で打たれてはいけない。ましてやフォアボールで走者を溜めて、ホームランを打たれてはダメ。狭い球場だと、力のある外国人選手は特に、外角の球にバットが当たればスタンドに入ってしまいます。だから、インコースを上手く使う必要があるんです」

この日、ヤクルトは2回の攻撃に入る前に、ベンチ前で円陣を組み、気合を入れ直した。すでに7点を失っていたが、直後の攻撃で宮本が3ランを放って4点差。藪氏は「神宮では5点差あっても逆転される可能性がある。僕はいつも、そう思って投げていました」と話す。

「神宮は何が起こるか分からない球場。僕は5点リードくらいだったら安心はしなかったし、実際に追い上げられたことが何度もあります(笑)。だからこそ、今日のヤクルトは3点取った直後の3回表、エスコバーのエラーをきっかけに2失点したのが痛かった。あれで勢いが削がれてしまいましたね」

投げる、打つ、守るの全てがちぐはぐな形になってしまったヤクルト。3位の阪神に勝率でわずか3厘上回り、ゲーム差なしの2位をキープしたが、この日の大敗が29日以降の対戦に影響を与えないよう、きっちり切り替えて試合に臨みたいところだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)

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