見た目は「がん」のEBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍の病理学的特徴を、岡山大学が解明

岡山大学の池田知佳大学院生、佐藤康晴教授らの研究グループは、世界で初めて、日本人におけるEBウイルス陽性粘膜皮膚潰瘍(EBVMCU)の病理学的および遺伝子異常の特徴を明らかにした。

がんの一種であるEBVMCUは、EBウイルスに感染したBリンパ球が異常に増殖する病態で、関節リウマチで治療薬メトトレキサートを服用している患者の口腔内に生じやすく、難治性潰瘍を形成する。病理検査でも悪性リンパ腫と同じ像を呈するため、高悪性度の悪性リンパ腫(白血球に属するリンパ球のがん)との鑑別が困難だ。しかし、悪性リンパ腫とは異なり、メトトレキサートの内服中止のみで自然治癒し、見た目は「がん」だが抗がん剤治療は不要だ。高齢化が進む日本ではこの患者数が増加しているが、その病理学的特徴には多くの不明点があった。

これまでEBVMCUの病理学特徴として、2つのタイプの存在は知られていたが、解析により、さらに新しい2つのタイプの存在が判明した。また、EBVMCUの遺伝子異常も悪性リンパ腫と同じ頻度で起こっていた。したがって、病理検査のみでは悪性リンパ腫との鑑別が困難であることが明らかになった。診断には関節リウマチなどの自己免疫疾患に対するメトトレキサートなどの免疫抑制剤による治療歴などが、この病気の診断に最も重要な鍵となる。

EBVMCUに関する今回の研究成果について、「適切な診断を行い、不要な抗がん剤治療を避けるためにも、リウマチ診療に携わる医師、口腔領域の診療に携わる耳鼻科咽喉科医師や歯科医師、病理検査に従事する病理医や臨床検査技師にも広く知ってもらえることを期待します」と佐藤教授は述べている。

論文情報:

【Modern Pathology】Clinicopathological analysis of 34 Japanese patients with EBV-positive mucocutaneous ulcer

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