コロナ禍でも「夏枯れ」到来、今年前半の相場を振り返る

新型コロナウイルスの大流行により、株式市場は年初から値動きの激しい動きが続きました。日経平均株価は3月に16,000円台をつけるなど大暴落しましたが、その後、世界的な大規模金融緩和を背景に急速に回復。一時23,000円台を付けるまでに値を戻し、現在は22,500円付近でレンジ相場を形成しています。

個別銘柄を見ると、ソニー(6758)、ソフトバンクグループ(9984)が約20年ぶりの高値を更新するなど、日本を代表する大型株にも資金の流入が見られています。

この相場の勢いは夏以降も続くのでしょうか?


回復の明暗分かれた業種別

3月の暴落からの回復期はどのような業種に注目が集まったのでしょうか。日経平均株価が19,000円台から一時23,000円台まで回復した4月中旬から3ヶ月間の東証33業種別騰落率を見ていきます。

上位3業種は非鉄金属、機械、電気機器でした。3業種共にTOPIX(+9.04%)の倍以上のパフォーマンスを記録しています。

特に非鉄金属の銘柄は、世界的な都市封鎖(ロックダウン)が解除され経済再開の動きとなったことで銅価格が上昇したことや、安全資産である金の価格が2011年以来の過去最高値を目指していることなど、資源価格の上昇を背景に大きなパフォーマンス改善となりました。

また、機械、電気機器も米国のフィラデルフィア半導体指数(SOX指数)が底値から60%超の上昇を見せるなど、半導体市況が回復したことから半導体関連の銘柄を中心に大きく回復しています。

このように、好調だった業種は世界経済の回復期待による市況復調を背景に上昇しました。

一方で下位3業種は電気・ガス業、陸運業、パルプ紙でした。電気・ガス業は4月に一時マイナスを記録するなど暴落していた原油価格が回復傾向にあり、コスト増懸念から下落が続いていると考えられます。

また陸運業は、東証の「2020年3月期決算発表状況」によると、約80%の企業が業績予想の開示を見送っており、業績の不透明感が高まっていることが要因として挙げられます。

個別銘柄の株価ではJR東日本(9020)など電鉄株が軒並み年初来安値を更新するなど、軟調な値動きが続いています。

「夏枯れ相場」を検証してみる

続いて、売買代金の観点から相場を見ていきたいと思います。

相場の用語には「夏枯れ相場」というものがあります。これは、日本では夏休みやお盆休み、海外でも夏の長期休暇があり、夏場は市場参加者が減少することから売買代金も減少することを指すアノマリーです。

実際、売買代金が減少するとちょっとした動きで変動が激しくなってしまうため、思った価格で約定しにくくなります。そのため、投資をする上で夏場は注意が必要な時期なのです。

過去3年間の東証1部の月間売買代金の推移を見てみましょう。7月から8月にかけては年間の最小を記録しており、このアノマリーは実際に観測されていることがわかります。

2020年は新型コロナウイルスの影響もあり、3月以降は前年を上回る売買代金で推移していました。しかし7月を見てみると、7月22日までの平均ではあるものの6月と比べて大きく減少し、2兆円近辺で推移しています。過去3年と比較しても、夏枯れは始まっているように見えます。

月別の株価の値動きを見てみると、直近10年のTOPIX月間騰落率の平均では8月が最も悪く▲2.89%です。また、月間でプラスであったのは10年間で2016年のみと、特にパフォーマンスの悪い月となっています。対照的に8月以降は4ヶ月連続でプラスを記録しており、高いパフォーマンスの月となっています。

この状況を見て「閑散に売りなし」という相場用語が頭に浮かぶ方もいるのではないでしょうか。「閑散に売りなし」とは、閑散相場の中で十分に売りが出た後はもう売り手がいなくなり、この期間我慢していた投資家が一斉に買いに向かうことで売ってしまった投資家も買い戻すことで大きく相場が上昇することを表しています。

今年の8月は、これまでの大きな値動きとは打って変わって小幅な値動きとなるかもしれません。ですがこの閑散期を乗り越えたら、例年と同じように力強い上昇が待っているかもしれません。

8月は決算動向にも要注意

8月は相場全体で見ると閑散の時期でありますが、3月決算企業の第1四半期決算がピークを迎える時期でもあります。今日7月30日、31日だけでも合わせて約650社、8月第1週が約1,500社、第2週が約800社と多くの決算発表を控えています。

先週決算発表が行われた日本電産(6594)は、予想から一転して増益を発表した翌日に年初来高値を更新するなど、期待を上回る好決算に対しては株価にも好反応が見られています。一方で、先駆けて決算発表が本格化しているアメリカでは、インテルが新製品開発プロセスで遅れが出ていることが嫌気され決算翌日に▲16.2%を記録したほか、マイクロソフトやテスラも決算を通過して値を下げています。

このように、3月の暴落以降急速なリバウンドを見せていたこともあり、期待が先行して上昇していた銘柄は決算を境に売られる場面も見られますので、例年以上の警戒が必要でしょう。

ボラティリティが大きくなると短期のトレードの面白みは増します、しかし中長期での投資を行っている方は値動きに過度に反応することなく、じっと待つ時期かもしれません。

<文:Finatextグループアナリスト 菅原良介>

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