「肉親の最期知りたい」 熊本豪雨で14人犠牲、再開断念の「千寿園」 遺族「説明ない」

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濁流が流れ込み14人が犠牲になった特別養護老人ホーム「千寿園」内部(施設の許可を得て撮影)=10日午後2時25分ごろ、球磨村渡(小野宏明)
豪雨で球磨川が氾濫し、浸水した特別養護老人ホーム「千寿園」=4日

 4日未明に熊本県南部を襲った豪雨で、球磨川の支流があふれ、入所者14人が亡くなった球磨村渡の特別養護老人ホーム「千寿園」(後藤亜樹施設長)。運営する社会福祉法人「慈愛会」が事業再開を断念する中、犠牲者の遺族からは「肉親の最期を知りたい」「再開断念も含め千寿園から何の説明もない」と不満の声が出ている。

 同園に入所していた父親=当時(94)=を亡くした山本まち子さん(57)=人吉市=は、千寿園の再開断念や職員の解雇を報道で知ったという。山本さんは「園から事前に何の説明もなく、遺族は置き去りにされている気がする。このまま、うやむやにされるのが怖い」と不安な表情を浮かべる。

 被災後、職員が自宅に一度、お悔やみに来ただけという。「月に1度は父の様子を記したメモと写真を送ってくれるなど、職員には本当によくしてもらっていた。それだけに、間もなく1カ月になるのに遺族に何の連絡もないのは、本当に残念だ」と打ち明ける。

 夫=当時(80)=を亡くした球磨村の女性(83)も「近所の人はよくしてくれるけど、一人になって寂しい。災害だけん、仕方なかけど、やっぱり夫の最期がどうだったのか、きちんと知りたい」。

 同園は村唯一の高齢者施設で、デイサービスなども受け入れており、高齢化率の高い地域を支える存在だった。「再開断念」の突然の知らせに、驚きと戸惑いも広がる。

 母親=当時(93)=が犠牲となった球磨村の男性(72)は「被害が発生した4日、施設で一体、何が起きていたのか知りたい」と強調。一方で、「職員も含め多くの人が被災した現状を考えると、今すぐ説明会を開いてほしいとまでは言えない…」と思いは複雑だ。

 同法人の顧問弁護士は「当時、救助に当たった職員などに事実関係を確認中のため、まだ、ご遺族への説明ができない。確認が取れ次第、ご遺族と日程の調整を進め、きちんと説明したい」と話している。(熊川果穂、小山智史)