こりゃコンパクトSUV革命!? ヤリスクロスはちっちゃいのに実力は高級車以上だった

トヨタ ヤリスクロス プロトタイプ

注目度はハリアー超え!? ヤリス以上のデキ

目下バカ売れ中のハリアーの再生回数は掲載後1ヶ月で16万回を記録。一方のヤリスクロスの情報解禁日は7月23日ながら、動画アップ後6日間で約5万回をマークしている ※7月30日現在のデータ

突然ですが筆者は試乗系Youtuberなので、新型車はワリとしっかりめに動画をアップしている。そしてYoutuberがみんなそうであるように、視聴回数には細心の注意を払って動向を見守っている。

しかし、報道解禁日に合わせて公開したこのクルマの視聴回数の伸びは、その当の本人が驚くべき勢いであった…ということをまずはお伝えさせて欲しい。この再生の注目度はあのハリアーに次ぐものだったのだ(当チャンネル比較)。そして視聴回数=注目度の高さと考えるのは、妥当なことだと思う。そう、トヨタのスモールSUVのヤリスクロスだ。

ヤリスクロスはその名の通り2月にデビューしたコンパクトカーのヤリスの兄弟車。ヤリスは発売前から走りや先進安全装備など全方位で高評価だっただけにヤリスクロスも大注目というワケ

今年の2月、それまでのヴィッツからグローバルネームに名称を変更し、またデザインやコンセプトまでをも大幅に刷新したヤリスが発売されたばかりなのだが、早くもファミリーが追加されるというワケだ。

ヤリスと一体何が違う!? その差はコチラ▼

TNGAはもはや“テッパン”のいいクルマ

2015年発売の現行プリウスから採用されているTNGAは走行性能などクルマの基本から見直したトヨタ渾身の新世代プラットフォームだ

現在、トヨタはTNGAという新型プラットフォーム戦略のもとにクルマを創っている。それらを採用したモデルは販売現場からも“テッパン”、すなわち“絶対に品質が良い”と軒並み高評価を得ているのだが、そのTNGAが小型車に初めて採用されたのがまさにこのヤリスから、なのだ。

案の定、ヤリスは販売台数でもライバルを退け、TNGAテッパン説をさらに確実なものにした。そしてもちろん、このヤリスクロスも同じプラットフォームが採用されているのだから、もう乗る前から好感触が透けて見えていたのだけども、実際に目にした現物は想像以上だった。

トヨタ ヤリスクロス プロトタイプ

悪路走破性も伊達じゃなかった

FFベースのコンパクトSUVながら最低地上高を170mm確保

まずユーティリティーがスゴイのだ。走りに関してはそれなりの良さを想像することができる。それはヤリスとヤリスクロスはパワートレインも同じだから。

ガソリン4WDモデルにのみ、ワンタッチで走行モードを変更できるTRAILモードを装備

ただし、ハイブリッド四輪駆動のE-FourがSUVらしいパワフルで高性能な「TRAILモード」を備えているほか、ガソリン四輪駆動も走行モードをMAD&SAND(泥と砂)/ROCK&DIRT;(石とダート)、そしてノーマルから選択でき、駆動力、ブレーキの制御を最適化してくれるなど、小型モデルながらしっかりとプラスαの価値である、信頼の四輪駆動制御を備えている(サーキット試乗のためこれらを体験することは出来なかったが、ビデオで見る限り信頼性は高そう!)。

というワケでこれなら走りもヤリス以上であろうと思わせるし、後述するけど案の定どのパワートレインもやっぱり素晴らしかったのだが、それ以上にビックリさせられたのは『ここまでやるか?』の削ぎ済まされた使い勝手にある。

ラゲッジの工夫がエグい! ゴルフバッグだって2つも飲み込むゾ

実際のサイズは驚くほど広いワケではないが、荷室長820×幅1400×高732mmを確保。さらにデッキボードを外せば荷室高850mmと背の高いものだって積載可

まず、荷室のアレンジが多彩すぎる。テールゲートを開けると車格が車格だけに、さほど大きなスペースがあるとは思えないのだが、それだけに工夫がすんごいのだ。

フロアの板=デッキボードは真ん中で二分割されていて、それを外すとさらに一段低いフロアが現れる。上のボードは下のフロア部に収納可能で、フルサイズのゴルフバッグが横置きで2つ(!!)、Lサイズのスーツケースが2つ、余裕で収納できる。

デッキボードを敷いたらA型ベビ−カーが、さらに半分だけデッキボードを取って高さの差があるモノが収納できるなど、まさに使い勝手は工夫次第で無限大。

さらにリヤシートを4:2:4の可倒式とすることで、真ん中の“2”部分を倒したら、4人乗車をしながら長尺物(スキー板とか!)を収納することも可能だ。

ちなみに筆者はスキー1級(ドヤ!)なのだが、私の時代はスキー板が長けりゃ長いほど偉かった時代。さすがに180センチ超えの板は詰めないでしょ? と聞いたら、「運転席の横まで来てしまうから安全的には推奨出来ませんが、まあ積めます」とのこと。……もう、私をスキーに連れてってもらうのにハイラックスなんて要りませんやん…、なのだ(レガシー感)。

輸入車なんて目じゃない!? ハリアー譲りの超便利機能も

さらにこの荷室には、トヨタコンパクトSUV史初、あのハリアーにも搭載されているハンズフリーパワーバックドアも設定されている!

この辺もさすがトヨタらしく、センサーの位置をかなり広く取ったことによって、誤操作や動作のムラがないように工夫されているという。

いやはや、ヤリスクラスにもこんな装備が搭載されるなんて、ますます高級輸入車になんてもう要らんやん、と驚いてしまった。

トヨタ ヤリスクロス プロトタイプ

今や当たり前の先進安全装備は“超”がつくほど充実

衝突被害軽減ブレーキはもちろん、全車速追従クルーズコントロールなど欲しい機能を全部載せ

さらに人気の(というかこの性能で売上が変わってしまうとも言われるほどの知名度を得た)予防安全パッケージ、トヨタセーフティーセンスもクラスを超えたレベルの充実だ。

歩行者(昼夜)、自転車(昼)検知機能付き、衝突回避タイプのプリクラッシュセーフティ、レーントレーシングアシスト、全車速追従機能付きのレーダークルーズコントロール、アダプティブハイビームシステムかオートマチックハイビーム、ロードサインアシスト、さらにオプションではあるけれど先行車発信告知機能まで!

兄弟車のヤリスには設定のないヘッドアップディスプレイを上級グレードの設定。表示できるのは速度やナビ情報など

正直コレ、ほんの数年前には高級輸入車にだってオプション装備だったもの。いや、今でも備えていない500万円オーバーのクルマはゴロゴロある。もう、なんということでしょう、としかいえないし、精度だって価格を感じさせない使用感の高さをきちんと保っている。

自動駐車機能と言っても良い「アドバンスドパーク」はヤリスにも搭載されているが、これも使いやすいし簡単だし精度もいいしで非常に満足度の高い仕上がりになっている。

トヨタじゃ珍しい斬新なボディカラーにも注目

ド派手なプラスゴールドメタリックなど鮮やかなボディカラーをラインアップ

それらを包むエクステリアも、しっかり独自モデルの風格がある。ヤリスはコンパクトハッチらしいキリッとした顔つきが、試乗なしの“ジャケ買い”を招いたほどなのだが、このヤリスクロスはどこかもう少し癒やし系。街に馴染む優しさをも併せ持っているようだ。

対してリアビューはヤリスにも、そしてどこかハリアーにも似た強さ。ボディーカラーのバリエーションも、トヨタがあんまり手を出してこなかったスモーキーカラーが用意されるなど、トレンド感もしっかり取り入れている。

トヨタ ヤリスクロス プロトタイプ ヤリスクロス(プロトタイプ)のボディサイズは全長4180mm×全幅1765mm×全高1560mm(アンテナを除く)で、ベースとなるコンパクトカーの「ヤリス」に対し全高が60mm高くなりました。アンダー部からフェンダー周りまでを樹脂パーツで取り囲んでいるため、SUVらしい力強さやアクティブな印象です。

ヤリスよりちょっと大人しい!? SUVらしさ全開の走り

さて、肝心の走りだが、どれもキビキビとしたハンドリングがかなり楽しい仕上がりになっている。

今回は試乗シーンがサーキットということで、ガッツリとアクセル&ブレーキを踏んで堪能したが、気になったのがヤリスに比べて少し限界値が低いこと、だった。

ヤリスと同じくらいの車速でコーナリングをするとタイヤが滑ってしまうし、タイヤが鳴き始めるのも早い。どうしたことかと思えば、それは意図した味付けなんだそうだ。

SUVは背高なので、ロール値が高い。そのロールを抑えようとすると、どうしてもアシを固めなくてはいけなくなる。SUVらしい“しなやかさ”を叶えるには、ロール変化を上回るほどダンパーを固めないようにしたというのだ。

電子制御なども少し限界を低めに、敢えて設定。限界値を低く設定することで、ドライバーに「これ以上は危険ですよ」「快適性を損ないますよ」というのを警告する目的もあるのだという。

上級グレードは215/50R18のダンロップ セナセーブec300+を装着、ベースグレードは同銘柄の205/65R16

ちなみに設定されたタイヤは同じだから、それぞれの“味の違い”がしっかりと付けられていることに感心した。

さて、「限界が低い」というのは性能が低いということではないので誤解なきよう。クルマに合わない(想定されていない)走行を私がしちゃっただけで(しかもサーキットで!)、一般道走行ではおそらく、察する以上に十二分!

コスパ最強は超元気なFFガソリンだ

ハイブリッドモデルはしっかりと高級感が与えられ、適度に重みもあり、運転感の質感がとても高い。

対してガソリンエンジンは飛び出すような軽快さとワクワクするハンドリングを叶えた元気系! どちらも悩むが、ガソリンFFモデルが一番、コストパフォーマンスに優れている気がする。なんたって、ハイブリッドをも支え得るプラットフォームが搭載されているんだから!

ウワサによれば、ガチライバルのホンダ・ヴェゼル、日産キックスよりもオトクな価格設定で出てくるとか……これは末恐ろしや! 是非期待して欲しい。

※スペックはトヨタ社内測定値

【筆者:今井 優杏/撮影:茂呂 幸正】

© 株式会社MOTA