水没と道路寸断、行政機能奪った熊本豪雨 庁舎位置や通信手段、課題に

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豪雨で流入した泥が堆積した八代市坂本支所=16日、同市坂本町(高見伸)
高台にある多目的交流施設「さくらドーム」に設置された球磨村の災害対策本部=7日、同村渡

 熊本県南部を襲った豪雨で、八代市の坂本支所(同市坂本町)は球磨川が氾濫して水没、球磨村役場(同村渡)も道路や通信環境が寸断され、いずれも行政機能を失った。緊急時の情報発信や収集のための通信手段などをどう確保するのか-。災害に備えた庁舎や行政機能の維持という課題が、熊本地震に続き改めて浮上した。

坂本支所には大雨警報が出た3日夜から地元在住の職員2人が待機した。「増水の早さが異常だ」-。4日午前4時12分、坂本支所から防災無線で町全体に「危険が迫っています。高い所に避難してください」と放送。避難指示に先んじた緊急の呼び掛けだったが、これが支所からの最後の情報発信となった。

 5時半ごろには1階建ての支所が浸水し、職員は隣の坂本コミュニティセンター2階に避難。災害時は現地本部を支所に置く計画だったが、防災無線や衛星電話、備蓄物資、公用車などが全て使用不能になった。

 追い打ちとなったのが通信環境の遮断。人吉市に置く八代市のサーバーと坂本支所を結ぶ光回線ケーブルが寸断され、4時28分にはインターネット環境が停止。固定電話や携帯も不通になった。市本庁舎建て替えのため、鏡支所に設けた市災害対策本部には、かろうじて消防の無線で被害情報が入った。

 八代市の中武裕巖[ひろよし]危機管理監(58)は「過去の水害の経験から、坂本支所が水没するとは考えておらず、完全に想定外だった」と唇をかむ。

 被災した坂本支所の復旧は再建場所も含め検討はこれから。同じ坂本町でも高台にあった市社会福祉協議会の支所などは被災を免れている。今回の被災経験を踏まえ、支所の立地はもちろん、通信手段として無線が有効だったことや、物資を分散して備蓄しておく必要性を認識。中武危機管理監は「教訓を生かしたい」とする。

 一方、球磨村の庁舎は高台にあり浸水しなかったが、主要道路の国道219号が寸断され、停電や断水が発生。通信環境も悪化し、機能を失った。

 村が6日に対策本部の機能を移したのは、人吉市側に約5キロ離れた同村渡の多目的交流施設「さくらドーム」。村の災害時の業務継続計画(BCP)では、他の複数の施設を役場の代替施設にしていたが、さくらドーム以外に選択肢はなかった。

 球磨村の中渡徹防災管理官(58)は「村には高台の平地がほとんどなく、総合的に判断した」と振り返る。

 庁舎のシステム回復や水道の復旧、迂回[うかい]路の確保などを待って、23日に庁舎での業務再開にこぎ着けた。ただ、村の被害は甚大で、多くの住民が村外に避難。中渡防災管理官は「役場に戻ったことは村の復興の第一歩。まずは復旧を進める」と話した。(堀江利雅、九重陽平)