〝空振り〟緊急地震速報は精度改善の途上 226回発表、国内で揺れ観測せずは3回目

気象庁本庁=2018年8月1日、東京都千代田区

 30日朝に気象庁が出した緊急地震速報。通勤中の電車内でスマートフォンのアラームが鳴り、驚いた人も多かっただろう。その後に同庁の〝ミス〟だったことが判明した。大きな揺れが来る前に大地震の発生を知らせるという壮大なシステム。2007年10月の運用が始まって以来、今回を含めて226回の緊急地震速報が発表された。技術上の限界から肩すかしになることもあるが、今回のように揺れを感じないケースは稀だ。 (47NEWS編集部)

 今朝の緊急地震速報は、30日午前9時38分、房総半島南方沖を震源とするマグニチュード(M)7・3の地震が起きたとして気象庁が発表した。

 ただ、実際に発生したのは午前9時36分ごろに太平洋の鳥島近海を震源とするM5・8の地震。当初発表した震源とは約450キロも離れている上に、国内では有感地震(震度1以上)の揺れは観測されなかった。この誤報に、気象庁の加藤孝志地震津波監視課長は記者会見で「国民の皆さまに多大なご迷惑をおかけしたことをおわびします」と謝罪した。

伊豆諸島・鳥島と誤報の震源

 緊急地震速報は、気象庁と防災科学技術研究所が国内に設置している計約1690箇所の観測点のうち、2カ所以上で地震波が観測され最大震度が5弱以上と予想された場合に発表する。2カ所以上の観測としている理由は、地震計近くで起きた落雷などによる誤報を避けるためだという。

 その仕組みは、地震波のうち初期微動(P波)が強い揺れ(主要動、S波)よりも速く伝わる性質を利用したものだ。P波を地震計で捉えて震源や地震の規模(マグニチュード)を自動で解析し、速報。大きな揺れが来るまで、身を守ってもらう時間をわずかでも稼ぐことを狙っている。実際、東日本大震災で震度7を観測した地域では大きな揺れまで10~20秒の猶予があったようだ。

 しかし、予想震度に誤差が伴うなどその精度が十分ではないことは気象庁も認めている。発表されたのに震度5弱に届かなかったり、震度5弱が実際に観測された地域で速報が出なかったりしたケースもある。

 気象庁は精度向上のため改善を進めており、18年3月には震源域の広い巨大地震の際、震源から離れた地域に対しても予想できるようにPLUM(プラム)法と呼ばれる新手法を導入。今年3月には速報に活用する海底の地震観測点を追加し、発表の迅速化を図っていた。

 そんな中で起きた今回の〝空振り〟。発表されたのにまったく揺れを感じないケースは少なく、226回のうち今回が3回目。同庁の関田康雄長官は参院国土交通委員会の閉会中審査で「大きく推定が異なった。原因を究明し、早急にシステムの改善に努める」と述べた。

海底に設置された地震・津波観測監視システム(DONET)の地震計や水圧計などの観測装置(防災科学技術研究所提供)

 今回の緊急地震速報の対象は福島県、関東甲信、新潟県、東海に及び、最大震度5強を想定していた。この影響により、JR東日本の東北、上越、北陸の各新幹線は東京―大宮間で一時運転を見合わせた。また東京都心を走る都営大江戸線も全ての電車が自動で緊急停止した。

 大江戸線の車内やホームでは「安全確認を実施している」とのアナウンスが繰り返されていた。実際は緊急停止からの復旧作業に時間が掛かったたことが理由で全線が約1時間半にわたりストップした。電車は計9本が駅間に停車し、なかには床に座り込む人もいたという。

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