【レビュー】若さの功罪を包み込む圧倒的な音楽と光の渦―『WAVES/ウェイブス』

今の自分の開放的な気分、八方塞がりで悲嘆に暮れるしかない状況、何かに激しくぶつけたい衝動、そんな人生の随所随所での心の動きを「音楽」に託し、重ね、あるいは救われた経験は誰しも一度くらいはあるのではないだろうか。

この映画は、若い高校生の主人公があり余るエネルギーを放出しながら、進路や恋愛や家族関係における問題にぶつかり、もがき、そして安らかな再生の過程を辿る様を、31曲からなる極上の音楽と歌詞で見事に代弁する。

その意味では現代版ミュージカルとも言えるし、そもそも監督がプレイリストを決めてから脚本を書いたことを考えれば、音楽そのものから生まれた物語と言うこともできる。

ケンドリック・ラマー、エイミー・ワインハウス、カニエ・ウェスト、グレン・ミラー、レディオヘッド等々、極上の音楽たちが主人公たちの若さを、まさに若さたる所以のような行動一つ一つを、感情豊かに感傷的に彩っていく。

そして彼らだけでなく、観ているこちらの感情をも波のように揺さぶっては覆い尽くし、流していく。

そんな音楽の中をぐるぐると回転し縦横無尽にアングルを変えていくカメラワーク。

光を見事に捉えた鮮やかな映像は、感情そのものに溶け込んでいく。

人生の最後に走馬灯を見るとしたら、こんな映像がいいなと思ってしまった。

それほどにこの映画が持つエモーショナルな輝きには抗い難いものがある。

『WAVES/ウェイブス』

■監督・脚本:トレイ・エドワード・シュルツ
■出演:ケルヴィン・ハリソン・Jr、テイラー・ラッセル、スターリング・K・ブラウン、レネー・エリス・ゴールズベリー 他
■音楽:トレント・レズナー&アッティカス・ロス

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