[田口 厚のドローンプロジェクト日誌]Case.08 三密を避ける「空撮ツアー」で地域観光を盛り上げよう!(前編)

ドローン空撮を地域活性に役立てようといろいろ試行錯誤する中で、自治体や観光産業の方々とドローンをカメラのように持って楽しむ旅行=「空撮ツアー」を多数実施してきました。「空撮ツアー」は、旅をさらに魅力的にする要素が多くあり、なおかつその楽しさを多くの人と共有する楽しみや効果もあります。

Go To トラベルキャンペーンで(賛否あるとは言え)少しずつ動き出した観光産業ですが、本格的な盛り上がりにはまだ遠いようです。しかし、来るべき本格的な観光産業の盛り上がりに向けて、空撮ツアーの仕組みや要素が新しい観光のカタチのヒントになれば…と思い、ドローンを持って旅をする魅力について振り返ってまとめてみたいと思います。

ドローンを持って旅をすると地域をいろいろなカタチで楽しむことができる

さて、そもそもドローンを持って旅をすると何が楽しいのでしょうか。ドローンを飛ばすこと自体が楽しい…ということもあるのですが、まずはその要素を少し深堀りしてみたいと思います。

■ポイント1:150m未満の世界を楽しむことができる

ドローンは150m未満で飛行させることが航空法で定められています。一方、航空機は基本的に150m以上の空域が飛行空域(離着陸時や周辺に人や家屋がない地域等を除く)。私たちは航空機に乗ることで150m以上の空域からの景色は見ることができたのですが、ドローンが登場するまでは数m〜150m未満の高さから景色を見ることができた人はごく限られた人しかいませんでした。それゆえに、ドローンで撮影した景色はとても美しく感じるのですね。

掛川城(静岡県掛川市)。街の中に突如現れる歴史のなごりを朝日バックに撮影

屏風ヶ浦(千葉県銚子市)。約10kmにわたり大自然の断崖が続く絶景

■ポイント2:絶景の中にいるジブンを楽しむことができる

旅先でスマホで自撮りすることはもはや当たり前となりました。しかし、絶景とジブンを同時に撮ろうとすると、どうしても自分が近くなりすぎるか、もしくは景色だけ写って自分が欠けてしまうということになります。こんなときも、ドローンをカメラとして使うと、絶景の中にいるジブン(たち)を美しく撮ることができます。

千葉県館山市の植物園「アロハガーデン」で非日常的な写真をパシャリ!

山梨県山中湖村のキャンプ場「撫岳荘」で1枚

上記のサンプル写真のように旅好きインスタ女子にはぴったりのツールですし、おじさんたちだって楽しくドローンを活用し、旅を普段の何倍も楽しくできます。

おじさんたちも楽しい「絶景にいるジブン」の撮影!

■ポイント3:その場所をいろいろな角度から楽しむことができる

ドローンを持って旅をすると、訪れた場所をいろいろな角度・高さから眺めたり撮影したりして楽しむことができます。例えば、観光地としても人気スポットのひとつである「滝」ですが、たいていの人は滝壺近くまで行って滝を背景に記念撮影…で帰ってきてしまうのがほとんどではないでしょうか。

しかし、ドローン空撮をその場で楽しめると、少なくとも半日はひとつの滝で楽しめます(特に筆者は…)!滝を普段見えない真上から眺めてみたり、滝が落ちるところ(滝口)をアップで見たり。もちろん、滝に限らず広々とした高原や自然豊かな山や海など、普段だったらすぐに移動してしまうところでも少し高い位置から見ることでたくさんの新しい魅力に気づくことができます。

一般観光客が近づくことができない溶岩が固まってできた滝の壁面「柱状節理」や滝が落ちる「滝口」手前の様子もドローンなら見ることができる!

ドローンを持って旅をするには問題がたくさん

残念ながら今の社会の仕組みの中では、誰でも手軽にドローンを持って旅を楽しむということができません。みなさんもご存知の航空法によって空港周辺や人口集中地区上空は飛行が禁止されています。さらに、第三者や第三者の物件から30m以上距離を保って飛行させる必要もあるため、観光客が多い場所での飛行も基本NGです(安全を考えると法律以前の問題もあります)。また、民法上、上空と言えど土地の所有権は存在しますので土地権利者の方の許可も必要です。

そして何より「ドローン映えする場所を見つける」ということも重要です。ドローンを飛ばすことが許される場所だとしても、何もないだだっ広い場所では映像や写真も映えません。これらの条件(安全性や法的に飛ばしていい条件・景観として映える条件)を満たす旅先の飛行場所を確保することがいかに大変か…。空撮のイベント運営をチャレンジされた方なら実感されることでしょう。

先日「日本遺産」にも認定されたきれいなベンガラ屋根が立ち並ぶ吹屋(岡山県高梁市)。人口集中地区からは外れているが映画ロケ地にもなる観光地で一般観光客がドローン空撮するのは難しい(特別な許可をいただいて撮影)

「空撮ツアー」はさまざまな問題を解決しつつドローン空撮と旅を楽しむWin-Winの仕組み

自治体や観光産業の方々の中には、ドローン空撮のコンテンツを活用して地域を盛り上げたいと考える方もいらっしゃいます。しかし、空撮業者に撮影してもらうだけでは一過性のもので終わってしまうことも多く、ドローンの観光での活用方法にお悩みの方も多いのではないかと思います。この土地所有者側の悩みも、前述のドローンユーザー側の悩みも両方解決できるのが「空撮ツアー」です。

普段なかなか飛ばせない絶景地で管理者の許可のもとドローン空撮が楽しめるのが空撮ツアーの楽しみのひとつ。観光地側も観光を楽しんでもらいつつ空撮コンテンツがシェアされるのは嬉しいメリット(岡山県高梁市 備中松山城でのヒトコマ)

ドローンを飛ばすという性質上ツアーは良くも悪くも少人数で構成され、1ヶ所あたりの滞在時間も長い(京都府和束町でのヒトコマ)

ドローン映えする場所で空撮する楽しみを提供できる「空撮ツアー」では、その地域での旅の楽しさや絶景を伝える映像や写真のコンテンツが生まれます。そのコンテンツは、SNSや動画投稿サイトによって多くの人に届けられ、新たな地域のファンを増やします。また、ツアー参加者が撮影したものを提供してもらえるならば、その映像や写真を地域のPR用コンテンツとしても活用することができます。

備中松山城(岡山県高梁市)の空撮コンテンツは「お城EXPO2019」や「ツーリズムEXPO2019」でPR映像として活用された

また、コロナ禍の昨今では、3密を避けつつ旅を楽しむ工夫が各所でされていますが、空撮ツアーはドローンを飛ばすという性質上、景色を楽しむ=「密閉」回避+少人数で楽しむ(人が多いところで多数のドローンを飛ばすのは難しい)=「密集」「密接」を回避…という自然と3密を避ける環境ができあがります。

そのかわり滞在時間が長く、その場所や地域をいろいろな角度から楽しむ…という濃い絶景体験を提供することができたり、そこで生まれたコンテンツが多数のコミュニティに共有され多くの方に地域の魅力が伝わったりという効果があります。この「空撮ツアー」の特徴は、今後の本格的な観光産業の復活に向けた準備として、とても活用しやすい仕組みではないでしょうか。

後編の次回は、空撮ツアーの事例や運営のポイントについて解説していきたいと思います。

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