コロナ禍の10代の不安…生活が大きく変化した大学生は何を思う?

全国的に新型コロナウイルスの感染者数が増える中で、企業ではリモートワークを再び増やしたり、消費者では自主的に外出を控える動きもあるようです。

自粛疲れを感じる方は多いと思いますが、3月初旬に政府が全国一斉休校を要請したことで、学生は大人より早くから自粛生活に入っています。進学や就職を控える年代では、社会情勢の急速な変化への不安も大きいでしょう。

ニッセイ基礎研究所では、6月末に15~19歳の男女420名を対象に、新型コロナによる生活変化についての調査を実施しました 。この結果を用いて、コロナ禍の10代の生活行動の変化や不安、今後の見通しを見ていきたいと思います。


生活が大きく変化したのは大学生

15~19歳で新型コロナ感染拡大前と比べて、生活行動で増えたものを見ると、最も多いのは「自宅での勉強」(54.3%)で、次いで僅差で、「睡眠」(51.0%)、「友人との交流(メールやLINE、電話等)」(49.0%)、「家族と過ごす」(43.8%)と続きます(図表1)。

一方、減ったもので最も多いのは「友人との交流(会う、出かける)」(61.4%)で、次いで、「外出(アルバイトや通学以外)」(55.5%)、「学校での勉強」(48.6%)、「部活やサークル活動(オンライン含む)」(34.5%)、「運動(部活等以外で)」(30.2%)と続きます。

つまり、「学校での勉強」が減る一方で「自宅での勉強」が増える、「友人との交流(会う、出かける)」が減る一方で「友人との交流(メールやLINE、電話等)」が増えるなど、これまで家の外で行っていた行動を家の中で代替するようになっています。また、運動時間は減る一方、睡眠時間は増えているという状況もあるようです。

生活行動の増減は中高生などと比べて大学生で目立ちます 。大学生では、全体と比べて「自宅での勉強」や「睡眠」、「アルバイト」が増え、「友人との交流(会う、出かける)」や「外出(アルバイトや通学以外)」、「部活やサークル活動(オンライン含む)」、「運動(部活等以外)」が減っています。つまり、コロナ禍で生活が比較的大きく変わったのは、15~19歳の中では大学生と言えるでしょう。

今年の春は多くの大学で卒入学式が中止されました。また、大学では中学校や高校などと比べてオンライン授業への対応が進んでいます 。また、大学生は、普段から中高生などと比べて外出が自由にでき、行動範囲や交流範囲も広いため、新型コロナによって生活が比較的大きく変わったのでしょう。

スマホで視聴するメディア利用が特に増加

自宅にいる時間が増えることで、SNSやネット、テレビなどのメディアの視聴も増えたのではないでしょうか。

メディア視聴行動で増えたものを見ると、圧倒的に多いのは「YouTubeなどのネット動画を見る」(73.6%)で、次いで、「SNSを見たり投稿する」(55.5%)、「テレビを見る」(51.0%)、「漫画を読む(電子書籍含む)」(32.9%)、「動画配信サービスで映画やドラマを見る」(32.6%)と続きます(図表2)。

上位2つは主にスマートフォンによる視聴と見られますが、これは、今の15~19歳がスマートフォン世代のデジタルネイティブであることが影響しているのでしょう。総務省「2019年通信利用動向調査」によれば、15~19歳のスマートフォン保有率は89.1%で、親世代の40~50歳代(40歳代88.0%、50歳代85.6%)をやや上回ります。

一方、メディア視聴行動で減ったものを見ると、「特に減ったものはない」(69.0%)が圧倒的に多く、「テレビを見る」(10.2%)を除けば、いずれも5%未満となっています。

なお、スマートフォン保有率が比較的高い大学生では、ネット動画やSNS、動画配信サービスの利用が全体よりも増えています。

新型コロナへの不安

生活が変わることで様々な不安もあるでしょう。

新型コロナの影響で不安に思うことについて見ると、最も多いのは「自分の感染」(60.2%)で、次いで僅差で、「家族の感染」(60.0%)、「友人・知人の感染」(56.9%)、「自分が感染源になる」(42.1%)と、感染関連の不安が上位に並びます(図表3)。

一方で「SNSの利用が増えてネット上のトラブルが増加」や「メールやLINEでの交流が増えてトラブルが増加」といったネット関連のトラブルへの不安は10%未満です。

スマートフォン世代は日頃からネット上のコミュニケーションに慣れ親しんでいるため、SNSなどの利用が増えても、トラブルへの不安が強まるわけではないようです。

なお、「特に不安に思うことはない」は8.1%ですので、残りの91.9%は新型コロナに対して何らかの不安を感じていることになります。

性別に見ると、おおむね女性が男性を上回り、全体的に女性の方が新型コロナに対する不安が強くなっています 。これは20代以上や他の調査などで見ても同様の傾向があり、一般的に女性の方が男性より不安を感じやすいようです。

なお、男女差が最も大きいのは「運動不足で太ったり不健康になる」(女性が男性より+28.6%pt)で、女性の選択割合は男性の2倍以上です。美容などを意識し始める年頃のためか、不安も強いのでしょう。

また、高校生・高専生では「勉強の遅れによる学力低下」が全体を+5.3%pt上回ります。緊急事態宣言の解除後も、短縮授業や分散登校などの形を取る学校は多いようです。感染者数の多い都市部ほど影響は大きく、学習格差が懸念されます。

このような中で、文部科学省は各大学に対して今年度の個別試験(2次試験)の出題範囲を例年より絞るように求めました 。しかし、国立大学協会は感染者への追試験や出願期間の拡大には対応するが、出題範囲の配慮はしない方針とのことです 。大学受験を控える高校生をはじめ受験生にとっては、勉強の遅れは深刻な悩みでしょう。

大学生では「運動不足で太ったり不健康になる」(全体+13.3%pt)や「生活リズムが戻らない」(+10.8%pt)、「友人と会えずに距離ができる」(+9.7%pt)、「海外留学や旅行の機会減少」(+8.5%pt)、「コロナうつ」(+5.6%pt)が全体を上回ります。これは、前述の通り、大学生は中高生と比べて新型コロナによって生活が比較的大きく変わったためでしょう。また、家族と別居で一人暮らしなどでは「コロナうつ」は全体を+11.8%ptを上回ります。

コロナ禍の見通し

最後に、今後の見通しについて見ていきましょう。

新型コロナによる暮らしの変化について、「そう思う」「ややそう思う」をあわせた「そう思う層」が最も多いのは「三密を避け、社会的距離を保つことの習慣化」(72.4%)で、次いで、「店舗での買い物よりネット通販が主流になる」(67.2%)、「現金の利用よりキャッシュレス決済が主流になる」(66.4%)、「同様のサービスなら、対面よりオンライン対応が好まれるようになる」(57.9%)と続きます(図表4)。

一方、「家で過ごす時間が増え、家族との絆が深まる」(44.5%)や「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」(43.4%)の、そう思う層は4割台です。また、「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(35.0%)では、そう思う層が、そう思わない層(41.4%)を下回ります(▲6.4%)。

つまり、15~19歳ではネット通販やキャッシュレス決済、各種サービスのオンライン対応など消費行動のデジタル化と比べると、学校のオンライン対応や友人とのコミュニケーションのデジタル化は進みにくいと考えているようです。

これは、そもそも公立中高などではオンライン授業への対応が進んでいないこともありますが 、学校での活動は必ずしもオンラインでできるものばかりではないためでしょう。授業には体育や音楽、美術などの実技形式の科目がありますし、部活動などの課外活動もあります。

そして、仲間と同じ空間で過ごしたいという気持ちから、オンライン授業が主流となって欲しくない、また、友達とのつき合いもメールやSNSが主流になって欲しくないという希望も含まれているのかもしれません。

なお、家族と別居で一人暮らしなどでは「店舗での買い物よりネット通販が主流になる」が全体を+5.4%pt上回る一方で、「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」(▲13.3%pt)や「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(▲10.0%pt)では全体を下回ります。

一人暮らしの場合、コロナ禍でも食料や日用品の買い物は自分でしなければなりません。店舗での買い物への不安感などから、ネット通販が進むと考えているのかもしれません。また、仲間と同じ空間で一緒に過ごしたいという気持ちがより強いようです。

教育や進学、就職のオンライン環境の整備を

3月の全国一斉休校によって10代は大人より早くから新型コロナによる生活変化の影響を受けています。社会情勢が変わる中で、15~19歳の9割以上が何らかの不安を感じており、大学受験を控える高校生などでは勉強の遅れに対する不安が強くなっていました。

彼らが教育や進学、就職における不利益を被ることのないように、オンライン授業への対応をはじめとした環境整備を早急に進めることが求められます。デジタルネイティブは魅力的な学習コンテンツがあれば、大人が驚くくらい吸収するのではないでしょうか。また、実際に会えなくても、オンラインでつながることでできる思い出作りなどもあるのかもしれません。

現在、全国的に感染拡大が進む中で、生活行動や不安、見通しは、これからも変容する可能性があります。今後も継続的に調査を実施していく予定です。

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