育鵬社歴史・公民教科書を不採択 藤沢市教委、21年度から東京書籍版に

藤沢市役所

 藤沢市教育委員会は31日、臨時会を開き、市立中学校で来春から使用する歴史と公民の教科書について、歴史認識を巡る記述で論争もある育鵬社を不採択とした。歴史、公民ともに推薦する委員が多かった東京書籍が採択された。同市教委は2011年から3回連続で育鵬社版を採択してきた。しかし、今回の教科書採択に当たり、岩本将宏教育長から諮問を受けた市教科用図書採択審議委員会での評価は低く、現場教師からは「思想的に偏りがある」「記述の順番が分かりにくい」といった批判が上がっていた。

 採択は、岩本教育長ら5人の教育委員による合議制で行われた。歴史で7社、公民で6社の教科書を審議した。

 歴史では、木原明子、飯島広美、市村杏奈の3委員と岩本教育長が東京書籍を、大津邦彦委員が帝国書院を推薦した。

 東京書籍を推した理由について岩本教育長は「歴史的事象を多角的、多面的に考察できるよう複数の視点から説明している」と説明した。このほか、「イラスト、写真、文字がバランスよく分かりやすく構成されている」(木原委員)、「なぜ歴史を学ぶのか一番分かりやすい説明がされている」(市村委員)といった意見が出された。

 公民では木原委員と市村委員、岩本教育長が東京書籍を単独で、飯島委員と大津委員が東京書籍と帝国書院の両社を推薦した。

 育鵬社版の歴史、公民の教科書は同市で11年に県内で初めて採択され、12年度から使用。昨年は4年に1回の採択替えに当たったが、新学習指導要領が21年度から全面実施されることから引き続き採択された。

 岩本教育長は「教科書採択に当たり、現場教員の調査研究や審議委員会からの答申、市民意見などを参考に、時間をかけて調査研究し、公平公正な姿勢で臨んだ」と述べた。

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