7月豪雨被災地に6億円以上、返礼品なしの”支援型”ふるさと納税が寄付文化を根付かせる?

地方の新鮮な農産物や珍しい加工品が「返礼品」として届くふるさと納税。寄付額のほとんどは税金として還付されるお得な制度で、毎年の返礼品を楽しみにしている方も多いと思います。

一方、ここ数年で広がっているのが、地震や豪雨などで被災した自治体に、返礼品を求めずにふるさと納税をする動きです。九州を中心に大きな被害を出した7月初旬の豪雨では、ふるさと納税ポータルサイト「さとふる」、「ふるさとチョイス」合わせて6億円以上の寄付が集まりました。

最近では、新型コロナウイルス感染症の治療にあたる医療従事者を支援する寄付も広がっています。


返礼品のないふるさと納税

ふるさと納税ポータルサイト「さとふる」では、7月4日、「令和2年7月九州豪雨 災害緊急支援寄付サイト」を開きました。対象は河川の氾濫で大きな被害を受けた福岡県大牟田市、熊本県人吉市、長野県上松市などで、31日現在で寄付ができるのは34自治体に増えています。これまでに約1億2600万円の寄付が全国から寄せられました。

通常のふるさと納税では、自治体が求める寄付額と返礼品をポータルサイトに載せます。災害緊急支援の場合は、 1,000 円以上で 1 円単位で自由な金額を寄付することできますが、返礼品はありません。通常、自治体がサイトに払っている手数料などはサイト側が負担し、寄付金は全額自治体に届けられる仕組みです。

熊本地震がきっかけ

同サイトで初めて災害支援寄付を募ったのは、2016年4月に発生した熊本地震でした。社として、支援物資を現地に届けようとしていましたが、熊本に向かう最中の4月16日、本震が発生。現地に行くことを断念し、早急にできるとして考案したのが、「災害支援寄付」の仕組みだったそうです。

サイトの担当者は「手数料などはさとふるが負担しているため、自治体に費用はかかりません。寄付の翌月には自治体に寄付金が届けられ、スピーディーに被災自治体を支援できます」とメリットを語ります。

(写真は陸上自衛隊のFacebookより)

負担感なく、手軽に寄付ができる良さ

それ以降、2018年の北海道胆振東部地震、昨年の台風19号など、各地で災害が起きるたびに特設サイトを開設してきました。最近では災害時に、SNS上で「ふるさと納税で寄付出来ないかな」という投稿が当たり前に見られるようになりました。これまで、同サイトを通して被災地に届いた寄付は、計103自治体約11億円に上ります。

同サイトの担当者は「そもそもが地域を応援する制度であるふるさと納税と親和性が高かった。合わせて、自己負担がほとんどなく、手軽に寄付が出来ることから広まったと思われます」と話します。

これまでの災害寄付総額は11億円

例えば、熊本地震で被災した自治体への寄付を受け付ける「平成28年熊本地震災害緊急支援募金」で集まった寄付は、熊本県南阿蘇村では、被災者への災害見舞金として支給されまいした。また、地震による大規模な地すべりにより流出・破損した配水池への送水管の修繕工事費としても活用されました。

2017年、昨年と豪雨被害を受けた福岡県朝倉市では、農地や農業用施設、水路の復旧、地域コミュニティ活動支援事業などに役立てられたそうです。

注意したいのは、このような返礼品のない寄付であっても、ふるさと納税の制度を使う限りは、控除額や上限などは通常と同じであること、寄付額が2000円以下だと控除の適用外になることなどです。また、税金の還付には自治体からの「寄付金受領証明書」が必要ですが、被災自治体の事務が混乱している場合、送付が遅くなる可能性があるということです。

(陸上自衛隊のFacebookより)

新型コロナ医療支援には2億円

さらに、最近では、新型コロナウイルス感染症に関わる医療関係者を支援するため、特設サイトも開設されました。サイトには15各府県が参加し、各知事が顔写真付きで寄付を呼びかけます。例えば大阪府の吉村洋文知事は、「新型コロナウイルス感染症の最前線で活動する医療従事者等の皆さんを支援するための基金です。ご協力をよろしくお願いいたします」と訴えています。

このサイトを通じては、1ヵ月も立たずに2億円以上の寄付が集まったそうです。この寄付金は、医療従事者や病院への支援金、感染防止対策などに使われています。

このような支援型のふるさと納税は、自治体に直接行うこともできますし、ポータルサイトを通じて行うことも可能です。欧米に比べて、日本は寄付文化が乏しいと言われてきましたが、ふるさと納税制度により、本来の意味での寄付文化が根付き始めているのかもしれません。

© 株式会社マネーフォワード