コロナ対策財源 財政調整基金109億円取り崩し 長崎県内市町

 新型コロナウイルス対策の財源について、県内のほとんどの市町が「貯金」に当たる財政調整基金を取り崩して対応している。総額は約109億9500万円。国が地方創生臨時交付金の拡充を決め、多くは相殺されるとみられる。しかし感染の収束は見通せず、引き続き対策が求められており、担当部署は財源確保に気をもんでいる。
 各市町はこれまでに、感染予防対策のほか、事業者への給付金やプレミアム付き商品券、飲食店のクーポン券といった独自の経済対策を打ち出している。
 県内21市町のうち、東彼波佐見町を除く20市町は、対策費に財調基金を充当。基金は、景気悪化などで収入が不足した場合に収支のバランスを調整するため積み立ててきたものだ。
 懐事情は自治体によって異なる。長崎市は財調基金から最多の34億6千万円を支出。本年度末の基金残高見込みは94億8400万円で「適切に確保できている」とする。一方、佐世保市は財調基金から10億円程度を使う予定だったが、約24億円に規模が膨らんだ。基金残高は、安定した財政運営を維持するための目安に迫っており、「苦しい状況」と担当者。
 財調基金を温存しようと、ほかの基金から財源をひねり出した市町もある。波佐見町は、首長の判断で柔軟に使えるふるさと納税基金から約4億3千万円を支出。島原、平戸、対馬各市、東彼東彼杵町もこれを活用した。他に、諫早、西海両市は地域振興を目的とする基金を充てた。
 国は、6月中旬に成立した第2次補正予算で地方創生臨時交付金を2兆円追加。1次分と合わせ、県内市町には計約216億600万円を限度に配分される見通し。
 交付金はこれまでの対策費にもさかのぼって充当できるため、長崎や大村、壱岐、対馬各市など多くの自治体は基金の取り崩しを“帳消し”にできると想定。ただ、各市町とも感染の第2、3波を見据えた対策の継続が求められており、どの程度まで基金を復元するか検討している。
 財調基金は、自然災害に対応するための財源でもあり、現状の蓄えに対する心配もある。松浦市は「大規模災害が発生した場合、支障が出る可能性がある」と懸念。波佐見町は「今後数年にわたってコロナ対策が必要となり、国の支援がなければ、基金が枯渇する可能性は否めない」と不安視する。

長崎県内市町の財政調整基金の状況

© 株式会社長崎新聞社