【気になる一言】レーシングポイント代表、代役ヒュルケンベルグの陰性結果が出たのは「セッション開始15分前だった」

 F1第4戦イギリスGPの金曜日のFIA会見でもっとも多くの質問を受けたのは、レーシング・ポイントのオットマー・サフナウアー代表だった。理由はもちろん、レーシング・ポイントが木曜日に新型コロナウイルスの陽性が判明したセルジオ・ペレスに代わって、金曜日からニコ・ヒュルケンベルグの起用を発表したからだ。

 最初の質問は、現在のペレスの容体に関するものだった。

「今日(7月31日)はまだ彼と話をしていないが、昨日は無症性でありながらも、自分に陽性反応が出たことに驚き、信じられない様子だった。『無症性なのに感染しているなんて信じられない。体調はまったく問題ないのに』と言っていたよ」

「たしかに彼は個人的な旅行をした。でも、それは十分な予防策を講じたうえでの旅行だった。いわゆるコマーシャルフライト(民間の飛行機)は使わないというものだった(言及はしていないが、つまりはプライベートジェットを使用したということになる)」

「彼の容体は安定している。私たちは毎日、医者を自己隔離中の彼の元へ通わせ、診察してもらっている。そして、彼の体にいるウイルスの状況をチェックし、陰性になった後、彼がレースに戻ってくることができるようサポートしていくつもりだ」

 次のサフナウアー代表への質問は、ニコ・ヒュルケンベルグを起用したことだ。なぜなら、ヒュルケンベルグはレーシング・ポイントがフォース・インディアだった時代に在籍していた経験はあるものの、現時点ではレーシング・ポイントのリザーブドライバーではなかったからだ。

「たしかに彼(ヒュルケンベルグ)は私たちのリザーブドライバーではない。だから、チェコ(ペレスの愛称)が最初のPCR検査で陽性の疑いが出たとき、私たちは次の検査で陰性になることを望んでいた。ただし、こういう状況では最善を期待しつつ最悪のケースを想定しなければならないため、私たちは同時にふたりのドライバーを準備する方向で話を進めていた。それがヒュルケンベルグとエステバン・グティエレスだった」

「われわれには(リザーブドライバーとして)ストフェル・バンドーンもいるが、彼はフォーミュラEのレースが控えていたので、イギリスGPに来ることはできなかった。われわれはエンジニアリングチームと話し合った。そして、ニコのほうが、エンジニア全員のことを知っているし、われわれのシステムやプロセスも知っていて、われわれのシミュレータにも乗った経験がある。さらに昨年F1でレースしていた経験もある。そういうことを総合的に判断して、より多くのポイントを獲得できるのは誰かと考えた結果、われわれはニコのほうが適任だと判断した」

 そして、サフナウアーはヒュルケンベルグへ連絡を入れた。いったい、ヒュルケンベルグはどんな反応だったのだろうか。

「私が電話したとき、彼はドイツに飛行機で到着したばかりだった。 彼はスポーツカーのテストか何かをするためにドイツに飛んだのだと思う。そのレースのカテゴリーはわからないが、いずれにしても、到着したばかりの彼と電話がつながると、彼は『えええーーーっ』という感じで、『僕はテストのために、いまドイツに着いたばかりなんだよ』と驚いていた」

「そこで私は『でも、君が乗り込むべきマシンはF1マシンだと思うよ』と言ったんだ。すると彼は『たしかに』と言っていたよ。その後、彼は自分のヘルメットとシューズを探し回ったと思うが、それはF1では使用できない規格の可能性があった。彼がドイツからイギリスのバーミンガムに到着したのは木曜午後7時か7時半だったと思う」

 これでペレスの代役はヒュルケンベルグに決定したが、レーシング・ポイントがヒュルケンベルグをイギリスGPに出走させるためにはまだ関門が残っていた。それはヒュルケンベルグが新型コロナウイルスに感染していないという証明だった。

「ユーロフィン(ヨーロッパを中心とする世界有数の検査会社)の検査は5分ほど遅れてスタートしたんだ。 検査でニコが陰性だという結果が出たのがセッション開始の15分前だった。だから、フリー走行1回目は本当にドタバタの中でセッションをスタートさせたことになる。 それを考えればフリー走行で9番手は上々の結果。これからセットアップを煮詰めていければ十分戦える」

 レーシング・ポイントとヒュルケンベルグの2日目、予選の戦いがもうすぐ始まる。

2020年F1第4戦イギリスGPペレスの代役で急きょ参戦することになったニコ・ヒュルケンベルグ
レーシングポイントのオットマー・サフナウアー代表

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