井上あずみ「君をのせて」ナウシカになくて “ラピュタ” にあるものは? 1986年 8月2日 アニメーション映画「天空の城ラピュタ」が劇場公開された日

日本が世界に誇る名作アニメ「天空の城ラピュタ」

1986年8月、大学3年生の僕は “シータ” という一人の少女に恋をした。2年前から夢中だった少女がいたにも関わらずだ。ごめんよ “ナウシカ”。

『天空の城ラピュタ』が公開されたのは1986年8月2日。34年たった今(2020年現在)でも、まったく色褪せることなく、日本が世界に誇る名作として、アニメ界、いや映画界に君臨し続けているのだから凄いと思いませんか。

スタジオジブリ第1作目の作品がこの『天空の城ラピュタ』であり、1984年の『風の谷のナウシカ』が、スタジオジブリ設立前の作品だということをファンの方ならご存知の方も多いだろう。ただ最近は、ナウシカもスタジオジブリ作品として語られることも多く、僕も個人的にはこの考え方に賛成だし、“宮崎駿原作” の作品をジブリ以前かジブリ以降かで区別する必要などこれっぽっちも無いと思っている。

宮崎駿の凄さは原作を創る能力

宮崎駿はスタジオジブリの上位概念でありイコールではない。これはあくまで僕の個人的な考え方だけど、宮崎駿の凄さは、監督としての力量が見事なのはもちろんだけど、その原作を創る能力に他ならない。

もちろん、スタジオジブリの数ある作品の中で、宮崎駿原作でない作品にも大好きなものは沢山あるし、宮崎駿原作の作品以外を低く見ているわけではなく、その点は誤解して欲しくない。ただ、「原作=宮崎駿」<「監督=宮崎駿」の風潮が、僕にはなんとなく解せなく、物足りないのだ。もっともっと原作者としての凄さを評価して欲しいんだ。皆さんもそう思いませんか?

さてここからは、宮崎駿原作のスタジオジブリ作品の中で、世界にひとつだけしか紹介出来ないとしたらあなたは何を選びますか、という妄想の話―― 果たしてそれは『風の谷のナウシカ』か『天空の城ラピュタ』か。この2択だ。

結論。僕が軍配を上げるは『天空の城ラピュタ』だ。作品の内容については、ナウシカもラピュタも遜色なし。宮崎駿が創り上げたストーリーやキャラクターなどは、どちらも実にすばらしく非の打ち所がない。どちらを選ぶかは好みの問題となるだろう。

主題歌は井上あずみ「君をのせて」ジブリ映画にマッチした歌声

では、何故僕はラピュタに軍配を上げるのか。それはナウシカに無くてラピュタにあるもの、“主題歌” の存在だ。

『天空の城ラピュタ』の主題歌は「君をのせて」。作曲と編曲は今やジブリ作品ではお馴染みの久石譲。そして作詞が宮崎駿だ。原作者によって書かれた美しい詞に久石譲によって命が吹き込まれ、映画の壮大なイメージが見事に表現されいる。この曲は、日本が世界に誇る映画音楽のひとつと言ってもいいのではないかと僕は思うんだ。歌うは井上あずみ。彼女は次作の『となりのトトロ』でも主題歌などを担当することになるのだけど、その歌声はジブリ映画に実にマッチしていて非常に心地よい。

また、「君をのせて」は、その曲の素晴らしさからか、合唱曲としても今や定番だ。10歳年下の僕の社会人時代の部下だった女性は、学校の合唱でこの曲を歌ったそうだ。僕はちょっとジェラシーを感じた。合唱ヴァージョンの「君をのせて」も実に感動的だ。まだ聴いたことが無い方は是非聴いてみて欲しい。井上あずみのシングルの2曲目に杉並児童合唱団により歌われたものがカップリングされているし、武道館で久石譲指揮の元、800人で合唱された映像を YouTube で観たときは感無量だった。僕は、未だにこの曲が流れてくると自然と涙が出てきてしまう… 困ったもんだ。

イメージソングは小幡洋子「もしも空を飛べたら」

もちろんナウシカにもテーマソングはある。安田成美が歌った「風の谷のナウシカ」がそれである。でもこの曲は劇中では使用されておらず、プロモーション用にとどまっているため主題歌とは言えない。ラピュタには主題歌があり、しかも名曲。映画の評価に音楽も加味されるのであれば、ね! ラピュタに軍配を上げてもいいでしょ。

ちなみに、ラピュタにもナウシカの安田成美のようなタイアップソングがあったことを皆さん覚えていますか?

イメージソングとしての扱いで、味の素の炭酸飲料水「ラピュタ」のCMソングだった「もしも空を飛べたら」がその曲。歌っているのは小幡洋子。作詞が松本隆、作曲が筒美京平という贅沢なコンビによって創られたこの曲は、さすがにかなりいい感じでした(ただパズーとシータの実写が、ちょっとね…)。

最後に… 僕が個人的に一番好きな作品は、宮崎駿が大人の主人公を描いた作品『紅の豚』なんだけどね。それについては、『加藤登紀子「時には昔の話を」ノスタルジーを超え、魂を揺さぶる歌声』もご覧になってほしい。

※2018年8月2日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 藤澤一雅

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