マツダの「電動化計画」、EVより“マイルドハイブリッド”を先行するワケは?

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昨年の第64回東京モーターショーでお披露目されたマツダ初の世界戦略EV「MX-30」。すでにヨーロッパでは先行予約が始まり、工場で生産が開始しているコンパクトSUVですが、ピュアEVだけではなく、もっと身近なマイルドハイブリッドモデルを追加するという新たな戦略を発表しました。


生涯走行距離に基づくバッテリー設定

マツダが初めて出す量産EVはコンパクトSUVというスタイルだということはすでに昨年のモーターショーで発表されました。そしてすでに、欧州の各地域で予約受注が開始され、2020年後半から、イギリスでは2021年から納車開始の予定となっています。ちなみに英国では300万円台後半を予定。これについては各国の補助金によっても差が出てきますから、あくまでも目安です。

とにかくこのモデルは人気のCX-30をベースに本格的なピュアEVとして仕上げられ、特徴的な観音開きドアなど注目点は多くありますが、何よりも気になるのは総電力量35.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載している点です。1回の充電での航続距離は約124マイル(約200km)という発表が行われましたが、これは日産リーフの40kWh モデルの一充電航続距離がWLTCモードで322km、62kWhモデル、eプラスの航続距離はWLTCモードで458kmとありますから、航続距離の面では少し短くなっています。

センターピラーがなく、観音開きのドア

ただしマツダとしては大きなバッテリーを搭載することが必ずしも正解であるとは考えていないようです。つまり、EVの心臓とも言えるバッテリーを製造する際に排出するCO2は、そのバッテリー本体が小さいほど減らすことができる、という考えが基本にあるからです。

今回のMX-30では、その生涯走行距離を16万kmと想定。
製造から廃棄までを考えて環境に優しい理想的なバッテリー容量を「35.5kwh」としたのです。その結果として200km(欧州仕様)という航続距離になったわけです。

市街地での使用頻度が高く、通勤などが中心と考えた場合、この航続距離でも十分に対応できるという考えだと思います。もちろんバッテリー容量が小さいということは充電時間も短く済みますから、ここでのCO2排出量も減るわけです。

それでもEVオーナーにとって航続距離の長さは大きな関心事です。そこでマツダは発電用のエンジンを搭載したレンジエクステンダーというモデルもチョイスできることを臭わせていました。その発電用にはなんと小型の新開発ロータリーエンジン(1ローター)を使い、発電しながら走るという方法です。

これによってタイヤを間接的に回さないがロータリーエンジンの復活を遂げる、というストーリーが完成するわけですから、マツダとしてもそれなりに意味もあります。なにより発電用エンジンを搭載しているため、充電の煩わしさや航続距離への不満もこちらのモデルで解消されるはずです。日産のキックスやBMWのi3のように、エンジンは発電用に使用するという考え方です。ただし、こちらはまだ開発中ですが、正式な発表にはいたっていません。

そんなときに「新しい情報があります」と言われればてっきりレンジエクステンダーモデルの正式発表と思いました。ところがスカイアクティブGをベースにしたマイルドハイブリッドモデル、つまり第3の選択肢を用意したというのです。おまけに2020年秋には日本市場へ導入すると明らかにしました。

スカイアクティブとの組み合わせによる新しいシステムも選択できる

マイルドハイブリッドを先行させたわけ

MX-30についての事前情報は少しばかりのサプライズと共にもたらされました。新たな魅力として用意されたのが「マイルドハイブリッドモデルを発表します」ということだったのです。この秋から日本市場に投入予定であり、そこに搭載されるパワートレインはガソリンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」に、マツダが独自に開発したというマイルドハイブリッドシステム「M HYBRID」を組み合わせたシステムということです。ちなみにそのシステムを「e-SKYACTIV G」といいます。

オートモービルカウンシル2020に展示されている導入予定モデル

マツダの発表によれば、このマイルドハイブリッドのシステムは、実に静粛性が高く、スタートも静かでスムーズ。走りのフィーリングも上質であり、高級感のあるドライブフィールを実現しているということです。もちろんマイルドハイブリッドですからモーターによるエンジンアシストができるわけですから、優れた燃費性能を実現していることは疑いがありません。

さらにピュアEVモデルにあった一充電当たりの航続距離に対する懸念もこれで解決されるということになります。もちろんピュアEVのMX-30Eも2020年度中にリース販売を開始する予定とのことです。

それにしてもなぜ、マツダにとって初のEV、MX-30であるのに日本市場ではマイルドハイブリッドが先行することになったのでしょうか?

マツダの基本的な考え方には国や地域ごとに最適な動力源を適用するマルチソリューション戦略という考え方があります。これに従えば、まだ日本はEVにとって十分なインフラが整っていないということになるのでしょう。

大きく開くリアハッチ。ラゲッジスペースは十分な容量

確かに充電施設は設置されていることになっていますが、実際には充電待ちの時間が長かったり、便利な充電スポットに人が集中したりと、けっこう殺伐とした現実があります。もちろんまだそうした問題が解消されているとはいえません。さらに日本人の考えの中には“航続距離が長い方が助かる”というものがあるという分析なのかもしれません。

そこでまずはマイルドハイブリッドモデルを一般用に市販し、個性的なデザインやごく普通に使えるコンパクトなSUVとしての使い勝手を先行させ、充電を気にすることなくコンパクトSUVを楽しんでほしいということかもしれません。

今回の発表ではまだエンジンスペックや燃費、そして価格などの発表はありませんでした。一方で特徴的な観音開きのドアはマイルドハイブリッドでも変わりありません。このドアの開き方は、ロータリーエンジンを搭載したスポーツカー、マツダ「RX-8」のようにセンターピラーのない観音開きです。実際には乗り降りにも不自由はないと思います。

そしてこのマイルドハイブリッドモデルは7月31日から8月2日まで幕張メッセで行われている「オートモービルカウンシル2020」で公開されています。

この先もマツダだけでなく、次々と各社のEVモデルの詳細が見えてきています。そんな流れの中にどんなサプライズが用意されているのでしょうか? EVの新しい展開がここに来てまた興味深くなってきました。