特別支援学校に在籍し県立高校へ入学 沖縄県の「学びの教室」に評価と批判 

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島村聡・沖縄大学教授(障がい者福祉)

 沖縄県教育庁は7月30日、障がいのある人もない人も共に県立高校で学ぶ新たな仕組みとして、「学びの教室(仮称)」を来年度に設置すると発表した。共生社会に向けての取り組みで、入学後は特別支援学校籍とし、県立高校に設置される教室で特別支援学校と同様の教育課程を受ける。入学式などの行事は設置校の生徒と一緒に参加する。識者からは評価と批判の声が上がっている。

 県内では重度知的障がいがある仲村伊織さん(17)=北中城村=が県立高校への入学を希望し、3年前から毎年、県立高校入試を受験しているが、不合格が続いている。

 仲村さんの父、晃さん(54)は31日、県の新たな仕組みについて「高校でみんなと共に学びたい息子の思いからすると、今回は前進」と評価。一方で「ただ分離教育にならないか心配だ」と不安も口にした。

 障がい当事者で、NPO法人県自立生活センター・イルカの長位鈴子代表は「なぜ障がい児を高校生として扱ってもらえないのか残念な制度だ」と批判した。共生社会を目指すには、幼稚園・保育園から障がい児と一緒に学ぶ制度、環境をつくるべきだと指摘。「障がいのある子どもの生きる権利と尊厳のために、これからも共学共存を訴えていきたい」と話した。(社会部・徐潮)

◆共に学ぶ制度 試金石に  島村聡沖縄大学教授(障がい者福祉)

 そもそも国の政策が分離教育を前提にしているという制約の中、関係者がインクルーシブ教育の考え方を取り入れようと苦心した跡が見える。大阪府など一部を除き、高校でのインクルーシブ教育の取り組みは進んでいない。実際に中身が伴うかによるが、障がいのある生徒とない生徒が一緒に学ぶ機会を広げる制度として評価できる。

 募集枠を分けるのは妥当だろう。問題は入学後だ。特別支援学校と普通高校の教育課程を組み合わせるのは容易ではないが、同じ教室で学ぶことは大切。当初は一緒に受けられるカリキュラムが少ないとしても、接点を増やしていくことが求められる。

 高校では教科学習が主眼で、教員側の抵抗感は根強い。ほかの保護者が厳しい目を向けることもありうるだろう。スクールソーシャルワーカーの常駐や校内の居場所設置など教員の活動を支える十分なサポートがなければ生徒が孤立してしまう懸念がある。

 県内に設置されている普通高校と特別支援学校の「併設校」では、教員や一般の生徒の意識に変化もみられる。社会的な包摂が進める上で、今回の制度は試金石になるだろう。(談)

◆分離教育前提の考え方  一木玲子大阪経済法科大学客員研究員(インクルーシブ教育)

 県教委が公表した「共に学ぶ仕組み」を見ると、小中学校の特別支援学級を高校につくっただけのように見える。支援学校籍にすることを疑問に思う。高校の卒業資格も取れないし、大学進学も制限される。分離教育が前提にされている。

 担当教員の考え方次第で、障がいのある生徒がずっと別室で教員と一対一になり、行事だけ普通教室で他の高校生と一緒に参加する形になってもおかしくない。そうなれば、インクルーシブ教育ではない。

 一方、先進地の大阪府は20年ほど前から、障がいの有無にかかわらず入学を希望する生徒は公立の普通高校で受け入れている。ベースが普通学級で、基本ホームルームにいる形を取っている。授業も巻き込むなどいかに一緒に学んでいけるかを工夫している。

 県教委は生徒への評価方法も明らかにしていない。他県では「1時間座れるようになった」などその子自身の進歩に合わせて評価する。子ども中心の教育が進めば、高校の中退率も減るだろう。点数が取れる子どもだけの学校にすべきではない。

 居場所を普通学級にし、高校の生徒の一人として扱うなど中身をインクルーシブにしてほしい。(談)

一木玲子・大阪経済法科大学客員研究員(インクルーシブ教育)