【F1データ主義】代役に乗り替わり、シーズン途中の初レース成績を比較。ヒュルケンベルグの決勝に光明

 F1第4戦イギリスGPでは、新型コロナウイルスで陽性反応が出たセルジオ・ペレスに代わってレーシング・ポイントからニコ・ヒュルケンベルグが急きょ代役として出走した。

 いきなり競争力のあるレーシング・ポイントに乗ったヒュルケンベルグが予選でどんな走りを披露するのか楽しみだったが、結果は予選13番手に終わった。チームメートのランス・ストロールが6番手だったから、もう少し上位を期待していたファンも多かったと思うが、じつはテン乗り(そのマシンに初めて乗ること)でのレースというのは、私たちが想像しているよりも難しい。

 そこで今回は過去11年間に行われたシーズン中のドライバー変更と、そのドライバーたちの初戦の成績を調べてみた。なお、ドライバー変更はチーム間の移籍は除き、交代したドライバーにとって、そのレースがそのシーズン初めてのF1レースとなった場合のみ該当するものとした(※データ1)。

 データを見ればわかると思うが、予選でもレースでも、テン乗りとなったドライバーはチームメートよりも厳しい戦いが強いられている。特に予選は5勝19敗と大きく負け越している。これはわずか2日間でF1マシンを限界で走らせることがいかに難しいかを物語っている。

 ただし、レースとなると、チームメートとの対戦成績は10勝11敗3分(引き分けは両者ともにリタイアの場合)と拮抗している。これはテン乗りのケースには、それがF1デビュー戦というルーキーもいれば、かつてF1に乗っていたベテランの出戻りというケースも同じくらいいるからだ。レースではマシンを限界で走らせることよりも、他車との駆け引きやタイヤマネジメントが要求されるため、経験が活きるのだろうか。

 ただし、テン乗りで入賞したのは、過去11年間で2016年第2戦バーレーンGPのストフェル・バンドーンのひとりしかいない。デビューから最多未登壇レース数の記録を持つヒュルケンベルグには、せっかく手にしたこのチャンスを活かして表彰台を狙ってほしいが、イギリスGPではまずはポイントを目指すというのが、現実的な目標かのかもしれない。

※データ1予選とレースの横のカッコ内はチームメートの成績

【2017年】

●第1戦オーストラリアGP
アントニオ・ジョビナッツィ(ザウバー)
予選/16番手(マーカス・エリクソン15番手)
決勝/12位(マーカス・エリクソン リタイア)

●第6戦モナコGP
ジェンソン・バトン(マクラーレン)
予選 9番手(ストフェル・バンドーン10番手)
決勝/リタイア(ストフェル・バンドーン リタイア)

●第11戦ハンガリーGP
ポール・ディ・レスタ(ウイリアムズ)
予選/19番手(ランス・ストロール17番手)
決勝/リタイア(ランス・ストロール14位)

●第15戦マレーシアGP
ピエール・ガスリー(トロロッソ)
予選/15番手(カルロス・サインツ14番手)
決勝/14位(カルロス・サインツ リタイア)

●第17戦アメリカGP
ブレンドン・ハートレイ(トロロッソ)
予選/18番手(ダニール・クビアト12番手)
決勝/13位(ダニール・クビアト10位)

【2016年】

●第2戦バーレーンGP
ストフェル・バンドーン(マクラーレン)
予選/12番手(ジェンソン・バトン14番手)
決勝/10位(ジェンソン・バトン リタイア)

●第13戦ベルギーGP
エステバン・オコン(マノー)
予選/18番手(パスカル・ウェーレイン16番手)
決勝/16位(パスカル・ウェーレイン リタイア)

【2015年】

●第1戦オーストラリアGP
ケビン・マグヌッセン(マクラーレン)
予選/18番手(ジェンソン・バトン17番手)
決勝/DNS(ジェンソン・バトン11位)

●第13戦シンガポールGP
アレクサンダー・ロッシ(マルシャ)
予選/20番手(ウィル・スティーブンス19番手)
決勝/14位(ウィル・スティーブンス15位)

【2014年】

●第13戦ベルギーGP
アンドレ・ロッテラー(ケータハム)
予選/21番手(マーカス・エリクソン22番手)
決勝/リタイア(マーカス・エリクソン17位)

●第19戦アブダビGP
ウィル・スティーブンス(ケータハム)
予選/18番手(小林可夢偉17番手)
決勝/17位(小林可夢偉 リタイア)

【2013年】

●第18戦アメリカGP
ヘイキ・コバライネン(ロータス)
予選/8番手(ロマン・グロージャン3番手)
決勝/15位(ロマン・グロージャン2位)

【2011年】

●第7戦カナダGP
ペドロ・デ・ラ・ロサ(ザウバー )
予選/17番手(小林可夢偉13番手)
決勝/12位(小林可夢偉7位)

●第9戦イギリスGP
ダニエル・リカルド(HRT)
予選/24番手(ヴィタントニオ・リウッツィ23番手)
決勝/19位(ヴィタントニオ・リウッツィ18位)

●第10戦ドイツGP
カルン・チャンドック(ロータス)
予選/20番手(ヘイキ・コバライネン18番手)
決勝/20位(ヘイキ・コバライネン16位)

●第12戦ベルギーGP
ブルーノ・セナ(ルノー)
予選/7番手(ヴィタリー・ペトロフ10番手)
決勝/13位(ヴィタリー・ペトロフ9位)

【2010年】

●第10戦イギリスGP
山本左近(HRT)
予選/24番手(カルン・チャンドック23番手)
決勝/20位(カルン・チャンドック19位)

●第15戦シンガポールGP
ニック・ハイドフェルド(ザウバー)
予選/14番手(小林可夢偉10番手)
決勝/リタイア(小林可夢偉 リタイア)

●クリスチャン・クリエン(HRT)
予選/22番手(ブルーノ・セナ23番手)
決勝/リタイア(ブルーノ・セナ リタイア)

【2009年】

●第10戦ハンガリーGP
ハイメ・アルグエルスアリ(トロロッソ)
予選/20番手(セバスチャン・ブエミ11番手)
決勝/15位(セバスチャン・ブエミ16位)

●第11戦ヨーロッパGP
ルカ・バドエル(フェラーリ)
予選/20番手(キミ・ライコネン6番手)
決勝/17位(キミ・ライコネン3位)

●ロマン・グロージャン(ルノー)
予選/14番手(フェルナンド・アロンソ8番手)
決勝/15位(フェルナンド・アロンソ6位)

●第14戦シンガポールGP
ヴィタントニオ・リウッツィ(フォース・インディア)
予選/20番手(エイドリアン・スーティル16番手)
決勝/14位(エイドリアン・スーティル リタイア)

●第16戦ブラジルGP
小林可夢偉(トヨタ)
予選/11番手(ヤルノ・トゥルーリ4番手)
決勝/9位(ヤルノ・トゥルーリ リタイア)

2020年F1第4戦イギリスGPペレスの代役で急きょ参戦することになったニコ・ヒュルケンベルグ

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