メクル第479号 世界の核弾頭 今も1万3000発 原爆投下から75年

世界の核弾頭の数

 1945年8月6日の広島市、そして8月9日の長崎市。二つの都市に原子爆弾(げんしばくだん)が投下されてから間もなく75年の節目を迎(むか)えます。世界の国々は原爆など核(かく)兵器をなくすことを目標に掲(かか)げてきましたが、アメリカやロシアなどの国で核兵器の開発は続けられています。今、世界に核兵器は何発あるのか。核兵器を持つ国々の動きも含(ふく)めて調べてみました。

 核兵器は、爆発する部分の「核弾頭(だんとう)」と、その核弾頭を運ぶミサイルなどの「運搬手段(うんぱんしゅだん)」に分けられます。
 長崎大核兵器廃絶(はいぜつ)研究センター(RECNA=レクナ)の今年6月時点の推計(すいけい)では、核弾頭を保有(ほゆう)しているのはロシア、アメリカ、中国、フランス、イギリス、それにパキスタン、インド、イスラエル、北朝鮮(きたちょうせん)の9カ国で、計1万3410発に上るそうです。中でも多いのはロシアとアメリカで、両国で9割(わり)以上を占(し)めています。
 アメリカとソ連が対立を深めた「冷戦」時代の1980年代には、世界全体で7万発を超(こ)える核弾頭があったといわれています。それに比(くら)べれば、今は2割ぐらいにまで減少(げんしょう)しています。
 第2次世界大戦が終了した後、46年1月の国際連合(こくさいれんごう)(国連)総会(そうかい)の決議第1号は、核兵器と大量破壊(はかい)兵器の廃絶を目標としました。冷戦時代の中でも「核拡散防止条約(かくさんぼうしじょうやく)(NPT)」という多国間の約束を結んだり、2国間で互(たが)いに核兵器を減(へ)らすための条約を作ったりしてきました。
 しかし、「核兵器のない世界」は実現(じつげん)できていません。むしろ近年は、核兵器をもっと活用しようとの動きが目立ってきています。
 アメリカとロシアが結んでいた「中距離(ちゅうきょり)核戦力(INF)廃棄(はいき)条約」が2019年8月に終了すると、アメリカはすぐさま条約で制限(せいげん)されていたミサイルの発射実験(はっしゃじっけん)を行いました。ロシアや、軍事力を強化している中国もミサイル実験を行い、アメリカに対抗意識(たいこういしき)をむき出しにしました。
 核兵器は戦後、あまりに大きな破壊力から実際(じっさい)には使用できない「使えない兵器」ともいわれてきました。それでもアメリカなどが核兵器を保持しようとするのは「核抑止論(よくしろん)」という考え方があるからです。他国と同じように核兵器を持ち、反撃(はんげき)できる姿勢(しせい)を見せることで相手の攻撃(こうげき)を思いとどまらせることができる-といった論理です。「脅(おど)し合い」の道具として核兵器を利用しているのです。
 そんな中でも特に気になるのは、アメリカが近年「使える兵器」として小型の核弾頭を開発し始めたことです。爆発力を抑(おさ)えたとしていますが、それでも使用されれば大きな被害(ひがい)をもたらすのは間違(まちが)いありません。
 核兵器を多数保有するアメリカ、ロシア、中国の動向だけでなく、以前から対立してきたインドとパキスタンの関係が悪化していることも心配です。アメリカとの間で進められていた北朝鮮の核放棄に関する交渉(こうしょう)もストップしています。
 核兵器を巡(めぐ)る情勢(じょうせい)は混迷(こんめい)しています。一方で、核兵器に反対する国々が中心となって17年、核兵器に関する活動を全面的に禁(きん)じる「核兵器禁止条約」が国連で採択(さいたく)されました。地域(ちいき)の中で核兵器を持たず、使わないことを約束した「非核兵器地帯」を拡大していこうとの動きも続いています。世界で「核兵器のない世界」を求める声はむしろ高まっているのです。


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