増加する高齢者の犯罪被害&加害を減らすためには?

TOKYO MX(地上波9ch)朝のニュース生番組「モーニングCROSS」(毎週月~金曜7:00~)。7月24日(金・祝)放送の「オピニオンCROSS neo」のコーナーでは、弁護士の三輪記子さんが“高齢者の犯罪”について述べました。

◆高齢者の犯罪と被害がともに増加傾向

警察庁は、高齢者の犯罪や事故について特集した「2020年版 警察白書」を公表。刑法犯は被害者・摘発人数ともに65歳以上の割合が増加。また、高齢者が被害者となる割合は2009年から毎年上昇し、2019年は12.3%。特殊詐欺被害では83.7%を占め、窃盗被害も増加傾向にあるということです。

警察白書の刑法犯認知件数及び高齢者の被害割合などを見ると、犯罪認知件数は年々減少。一方、高齢者の被害割合は顕著に増えています。

そこで警察では、オレオレ詐欺対策として広報啓発活動、ひったくり対策として防犯教室を実施しています。しかし、高齢者が被害者となる事件はそれだけではなく、「養護者による高齢者虐待」も多いとか。2018年度の虐待判断件数は約1万7,000件で、さまざまな対応をしているものの増加傾向にあり、なかには「親族間の介護などでも問題が起きている」と三輪さん。

また、高齢者による犯罪も増えており、総検挙件数のうち17%が高齢者。そして、そのうちの48.7%が万引きで、その他、占有離脱物横領(置き引き)、暴行傷害も。ただ、万引きにしても金額は大きくなく、置き引きも計画的ではないものが多いそう。

警察白書では、その背景にあるのは「血縁、地縁、その他コミュニティとの関係が希薄なこと」とあり、三輪さんは「だから、警察としては高齢者の社会との絆強化が必要と謳っている」と指摘。そして、それで十分なのかと対策を疑問視しつつも「複合的要因がたくさんあり、警察だけの問題ではない」と言います。

◆重要なのは気持ちではなく、しっかりとした仕組み作り

以上のようなことが警察白書には概要として書かれているそうですが、「警察白書は社会を反映している」と言う三輪さんは2020年版を見て、「高齢化社会がやってくると言われていたのに対応が全くできていない」と感想を口にします。

さらには、「高齢者になってから社会の絆と言われても、突然絆はできない」と声を大にして主張。そして、高齢者は若いときから人に迷惑をかけてはいけないと思って生きてきているだけに、「弱ってきたときに人に頼れない現状がこういった現象を生んでいる」と言い、「大事なのは若いうちから人に頼ること。個人の尊厳を保ちつつ人と共生、一緒に生きることをもっと共有する社会にならないと高齢者の犯罪被害・犯罪加害の問題は解決しない」と訴えていました。

MCの堀潤は、「絆という言葉は、いわゆる心の繋がりを言ったりするが、実際には物理的にどう情報を共有するか、再分配の在り方をどう考えるかなど、気持ち以前に仕組みや制度、司法などが社会として必要なのでは」と問いかけます。
すると、三輪さんも大きく頷き、改めて「気持ちで縛ってはいけない」と言い、「親だから面倒を見ないといけないとなって介護者の虐待が起きている。だから、親子だから仲良くとか強制する社会ではなく、仕組みとして作っていかなくてはいけない」と返答。

羽衣国際大学教授のにしゃんたさんも同意し、「もっと俯瞰視する必要があるし、気持ちに頼ることではなく、制度に落とし込んでいくことが大事」と話していました。

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<番組概要>
番組名:モーニングCROSS
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
レギュラー出演者:堀潤、宮瀬茉祐子
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/morning_cross/
番組Twitter:@morning_cross

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