オンラインライブ配信はウィズコロナ時代の救世主になれるのか

新型コロナ感染症の影響で、会場で行われる音楽ライブや演劇、スポーツイベントなどが軒並み苦戦を強いられています。今後しばらくは、3密を避ける対策やソーシャルディスタンス確保などの感染症対策を行い、コロナと上手く付き合いながらビジネスを行うウィズコロナ体制で興行することになるでしょう。

しかし先般、新宿の劇場でクラスター感染が発生したことは業界にとって大きな痛手となり、更なる対策が求められることが考えられます。そのため、今後しばらくは収容人数と比べて動員人数は低くなる見込みです。動員人数が下がれば収益化することが難しくなるため、他に収益を求めることになるでしょう。

そこで今回は、オンラインによるライブ配信に注目してみます。リアルタイムで配信されるものや後日にストリーミング形式で配信されるもの、どちらも今後の成長が期待できると見ています。


政府も後押し、日本発コンテンツのライブ配信

6月25日、サザンオールスターズが横浜アリーナにて無観客配信ライブを行い、8つのライブ配信メディアにて一斉同時配信を行いました。

このライブは視聴券を購入する形式で、興行的にも成功を収めたと見られます。このライブ配信へのトレンドに追随する動きがあることから、ライブ配信サービスおよびアプリが急成長する可能性があると考えられます。

実は、このライブ配信事業へは政府による後押しもあります。コンテンツグローバル需要創出等促進事業費補助金(通称:J-LODlive ジェイロッドライブ補助金、Japan content LOcalization and Distribution live)です。海外向けへ、日本発のコンテンツのライブ配信を促進するもので、令和2年度補正予算額として878億円を計上しています。

その内容は、新型コロナにより公演を延期・中止した事業に対して、今後実施するライブ公演の開催及びその収録映像を活用した動画の作成・海外へ配信するための費用の一部(補助率1/2 5000万円/1件)を補助する事業です。

日本ブームを創出し、関連産業の海外展開拡大や訪日外国人の促進につなげる政府のクールジャパン戦略の後押しをするものです。ライブ配信は海外への展開もしやすいと見られ、国内だけでなく国外にも市場を広げていくことで、さらなる成長にも期待ができると考えられます。

海外向けライブ配信では、音楽や演劇分野に注目

ジェイロッドライブ補助金を受け取るには、(1)公演して、(2)海外に配信する。この2つの条件を満たすことが必要です。また対象分野は、音楽、演劇、伝統芸能、芸能となっており、その中でも成長性が高いと見ているのが、海外の人々にとって親しみやすく言語的にも優しい音楽と演劇です。

そこで、無観客ライブを実施したサザンオールスターズや海外でも人気のあるBABYMETALを有するアミューズ(4301.東証1部)や音楽だけでなく映像にも強いエイベックス(7860.東証1)に注目したいと考えます。

その他、海外で人気があるアニメ系にも注目しており、アニメ系の音楽ライブや新日本プロレスを保有するブシロード(7803.東証マザーズ)やアニソンライブ等のライブストリーミング「MAL Live」を提供するメディアドゥ(3678.東証1部)などにも注目したい所です。

ライブ配信が定着すれば、更なる成長に期待も

ライブ配信サービスは、個人が配信するものから音楽ライブやイベントなどが使用するような大規模なものまで、様々なものが提供されており、群雄割拠となっています。しかし、まだまだ成長余地が大きいと見られ、5Gや商品販売を促進するためのライブコマースなどによって、需要が増すことにも期待できます。

新型コロナ感染症予防により家にいることが増えている昨今、電子書籍の販売が伸びているようです。同様に、ライブ配信も家で手軽に参加できることから、巣篭もり需要をつかみ追い風となっていると考えられます。

さらに、このライブ配信が当たり前のものとして定着すれば、より大きな成長に期待ができるでしょう。ライブやイベントは会場の収容人数の関係上、どうしても都市部が中心となります。そのため地方在住の人は、会場までの旅費や移動時間の制約などにより、ライブ等に参加することが難しくなっていました。

こういった参加したくても出来なかった人々が、新たな顧客となることが想定でき、今後しばらくは成長が期待できると考えます。

<文:投資調査部 饗場大介>

© 株式会社マネーフォワード