人生の集大成を地域医療に

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**医療法人社団真仁会 五泉中央病院
髙橋 姿 病院長(たかはし・すがた)**
1976年新潟大学医学部卒業。
聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科学講座助教授、新潟大学医学部耳鼻咽喉科学講座教授、
同大学学長などを経て、2020年から現職。

母校である新潟大学の学長を6年間務め、2020年1月末に退任。4月に新設間もない五泉中央病院の病院長に就任した。これから地域医療に直接携われることに喜びを感じているという髙橋姿病院長。「一から勉強です」と笑顔をのぞかせる。

臨床の面白さに目覚める

群馬県沼田市で長男として誕生。新潟大学へ進学する際、考えたのは、地元で就職できるかどうか。「父と同じ教師か、医者になれば仕事はある。土地や墓を守っていきたいと思っていました」

耳鼻咽喉科を選んだのも、開業に有利という考えから。研修は新潟で受け、いずれは帰るつもりだった。「ところが、臨床を始めたらこれが面白い。もっと挑戦したいと、どんどん欲が出ました」。解剖学教室で研究を重ね、難易度の高い手術に挑戦する日々。帰郷する間もなく、月日は矢のように過ぎていった。

しばらく関東の大学に勤めた後、再び母校へ。教授、医学部長、学長を歴任した後、五泉中央病院に着任することになる。

まず目指すのは〝普通の病院〟

五泉中央病院は、南部郷総合病院と北日本脳神経外科病院が統合して2019年12月に誕生。急性期一般病床118床、療養病床39床(うち地域包括ケア病床20床)、回復期リハビリテーション病床42床を備える。母体である医療法人社団真仁会は老健や居宅介護支援、訪問看護なども展開。公的病院のない地域の暮らしを守っている。

厚労省が2020年に公表した「医師偏在指標」の確定値で、医師の充足度が全国最下位となった新潟県。「当院も医師が足りず、非常勤の先生に頼っている状況です。少ない人員で知恵を絞らないといけません」。得意分野をアピールするだけではなく、部位別の疾患発生バランスに合わせた人員配置を考える。複数の病気を抱える高齢者が多いため、診療科の役割分担を厳密にはせず、カバーし合う体制を整える。

より高度な医療が必要な場合の連携はしっかりと、開業医に信頼される医療を維持していく。「ありふれた言葉ですが、病病連携、病診連携の拠点となることです」。まずは〝普通の病院〟としての体制を整え、社会的包括の理念を実現したいと語る。

強みになるのが、これまでのネットワークだ。大学病院はもちろん、関連病院、行政や団体、企業と関わってきた経験も、病院や地域の活性化に生かしたいと考える。「市と連携して検診の受診率を上げたい。また、市内には医療会社のワクチン・検査試薬部門があり、協力し合えるかもしれない。健康寿命の延伸にも貢献したいと思います」

五泉市は名の通り、湧き水が豊富な土地。その母なる山が、菅名岳だ。「患者さんの『菅名岳を見ながら余生を過ごしたい、看取(みと)ってほしい』という気持ちを大切にしたいですね」

困難をチャンスにする

着任にあたり、「これから地域医療の実践だ」と張り切っていたところを新型コロナウイルス感染症が直撃。当初、もどかしさも感じたという髙橋院長。「転んでもただでは起きない。この時間を使って、経営や地域医療についてひたすら勉強中です」。あいさつ回りができない医療機関には、手紙をしたためた。「この間に病院の状態がだいぶ把握できたので、お会いできたときには実のある話ができそうです」

職員と密にコミュニケーションできたことも、プラスと考える。「フロアを回りながら話をするのが楽しみ。職員の頑張りに感謝しながら、地域に頼りにされる病院を一緒に目指したい」。新しい病院は今、船出したばかりだ。

医療法人社団真仁会 五泉中央病院 新潟県五泉市太田489-1 ☎️0250-47-8150(代表)