大阪初開催、大企業と海外は出展無し。点検・測量向けに集中 [第6回国際ドローン展]

6回目を迎えた国際ドローン展の現場から

毎年4月に幕張メッセで開催されている国際ドローン展が第6回目を迎えた。今年は東京から大阪に場所を移し、インテックス大阪で7月29日から3日間開催された。もとより東京オリンピックの影響でインテックス大阪での開催が決まっており、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が5月に解除されてから、全国初となる本格的な展示会にもなった。

同時開催の7つの展示会に460社約800ブースが出展し、その内国際ドローン展は13社15ブースが出展した。例年大規模なブースを展開する大手企業や海外からの出展はほぼ無く、例年と比べ物にならないほど小規模での開催となった。

会場では5000人を上限とする入場制限をはじめ、通路を通常の1.5倍の約3mにするなど密を避ける工夫がされており、大阪コロナ追跡システムの登録とマスクの着用義務、消毒、検温、換気など徹底した対策が行われていた。だが、直前に全国で感染者数が再び増えたこともあり、3日間の来場登録者数は国際ドローン展のみでは約1200名に留まった。展示内容は併催されているメンテナンスやロボット関連の展示会にあわせて、測量や点検システムを中心に高度な運用が可能なドローンの出展が目立ち、他のホールでもドローンの展示が複数見られた。

出展者からは「来場者数は少ないが、ドローン利用に対する関心は高まっており、企業だけでなく個人からの問い合わせも増えている」という話が聞かれた。最近多いのは災害で被災した建物の屋根を点検撮影したいというニーズで、マッピングや赤外線を使った地質調査測定などはこれから増えるのではないかという意見もあった。

■有限会社タイプエス

R-SWM ver2

R-SWM mini

気象観測用ドローン「R-SWM」を開発するタイプエスは、最新仕様の機体「R-SWM ver2」をはじめ、小型ドローンをベースにした廉価版として「R-SWM mini」を参考出展していた。いずれもベースとなる機体はACSL社の産業用ドローンで、上空気象観測を対象にしている。

■有限会社ボーダック

洗浄機で丸洗いできるほど頑丈な「WP06-BASE」

プロペラで壁を這い上がる「飛ばないドローン」

映像無線装置を利用したソリューションを開発するボーダックは防塵・防水に優れたドライカーボンフレームの産業用ドローン「WP06-BASE」を展示。泥だらけになっても洗浄機で丸洗いできる特殊構造を備えており、各種カメラやセンサーをオプションで搭載できる。他にもVTOLや富山県立大学と共同で開発するプロペラの推進力を利用して壁面を走行し、衝撃弾性波法によりコンクリート構造物を診断できる「飛ばないドローン」を展示。大型のディスプレイを備えた地上走行ドローンとあわせて来場者の関心を集めていた。

■テクノドローン株式会社

テクノドローンは自社の専門技術を活かせる点検ドローンを開発している

煙突点検用ドローン「SA-1」

各種プラント設備や橋りょうなどを専門とする点検技術を活かしたドローンを自社で開発するテクノドローンは、煙突内を点検する「SA-1」や非GPS環境で対応できるVisual SLAM型ドローンなどを複数展示していた。当初は既製品を使用して点検を行っていたが、狭い構造物の内部での運用が難しく、ニーズにあわせたカスタマイズを行っているという。いずれも構造物を傷つけず正確に安定して飛行できるシステムを搭載しており、LIDARを使ったリアルタイムマッピング、3Dや360度撮影にも対応する。

■株式会社アース・アナライザー

数十センチの制度で自律飛行システムを実現する「Analyzer01」

センサーを利用して屋内外をシームレスに飛行する「Analyzer02」

アースアナライザーは、みちびきをはじめとする各国が運用するGNSS(衛星測位システム)に対応する高精度な自動離着陸・航行ドローン「Analyzer01」と、屋外と室内でそれぞれ異なる位置情報を取得しながら双方を自動航行するシームレスドローン「Analyzer02」を出展。

GNSSは数十センチ単位で精度の高い位置情報を測位できるが、独自の技術を組み合わせることで城のような複雑な建築物でも傷つけずに接近して高精度なキャプチャ画像を作成できる。自動飛行技術に関しては徳島大学らと研究を行い、論文も発表している。運用実験にも成功しており実用化に向けて開発を進めているという。

■株式会社東陽テクニカ

東陽テクニカは「SRV-8」と「GNOMシリーズ」を展示

水中ドローンはいずれも併催されていた「メンテナンス・レジリエンスOSAKA」の会場内で展示されていた。東陽テクニカは8基のスラスターと高度なプログラミングで6DOF(6自由度)の移動ができるOceanbotics社製「SRV-8」と超小型水中ロボット「GNOMシリーズ」の実機を展示。

■株式会社ジュンテクノサービス

「FIFISH V6s」の水中デモ

オプション機材をパッケージで販売している ジュンテクノサービス/ドローンテクニカルファクトリー川越は「FIFISH V6」をはじめとするシリーズを出展。ニーズに合わせて性能が選べてオプションも豊富に揃っている。

■那賀町ドローン推進室

エンタメや個人向けの展示はほぼ無かったが、日本一ドローンが飛ぶ町を目指す徳島県那賀町が事前登録無しで自由にドローンを飛ばせるドローンスポットを紹介していた。現在は35カ所にスポットが増え、6月から少しずつ撮影に訪れる人たちが増えているという。オンラインでスポットを検索できる那賀町ドローンマップも公開されており、URLにアクセスできるQRコードが入った缶バッジが配られていた。

コロナ禍での開催そして2021年への期待

今回の大阪での開催は、2025年の大阪万博で水素エネルギーを動力とするパッセンジャー・ドローンの実証実験や、宅配ドローンの運用などが検討されていることから、そうした展示もあるかと期待していたが、残念ながら展示数そのものが少なく、内容もかなり偏っていた。とはいえ大阪での開催でなければ中止になっていた可能性も高い。開催されたことに意義もある。

オリンピックの延期やコロナ禍の影響で現時点で来年のスケジュールは決まっていないが、引き続き来年も開催されることを期待したい。

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