【特集】異例の夏山 山小屋も“新様式”で営業 「登山者のいる山を守りたい」

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特集は、新型コロナウイルスの影響で異例のシーズンを迎えている信州の夏山です。営業を始めた山小屋は、感染予防の新しいスタイルで登山者を受け入れ、「感染者の遭難」にも備えています。

長野と山梨の県境にあり、登山者に人気の「八ヶ岳連峰」。晴れていれば雄大な眺めを楽しみながら登ることができます。

取材した7月23日は、時折、雨が降り、ガスで見通しもきかないあいにくの天気。訪れる人も少な目でした。

こちらは、赤岳の山頂に向かうルートにある「赤岳天望荘」。標高2722メートルに位置し、その名の通り富士山や北アルプスも望める人気の山小屋です。

スタッフ:

「体調はお二人とも異常ない?」

登山客:

「はい、一緒でいいです」

下界の施設同様、感染予防のため受付にアクリル板を設置し、チェックインの時には体調に異常がないかを確認。空気は薄いもののマスクの着用も呼びかけています。

赤岳天望荘は、当初、4月にオープンする予定でしたが、新型コロナウイルスの影響で自粛。営業を始めたのは2カ月遅れの6月20日です。

この日は30人ほどの登山者が利用しました。

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「オープンしてほっとしたというよりも、これから大変かなという思いもあるし」

山を愛する人たちを新型コロナウイルスから守るため、赤岳展望荘ではさまざまな対策をしています。

まず、宿泊は完全予約制とし、「密」を避けるため、受け入れは従来の200人から半分以下の90人に制限しました。

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「これくらいの間隔をあけた形が、これからの天望荘の大部屋スタイル」

これまで15人ほどが雑魚寝していた大部屋は、新たにベッドを入れて10人までとしました。シーツや枕カバーは、特殊な紙で作った使い捨てのタイプにしました。

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「使い捨ては時代に逆行しているところはあるかもしれないが、感染を防止するためにはこういう物が必要」

食事の提供方法も見直しました。従来のビュッフェスタイルは、当面、見合わせて、容器は使い捨てです。

登山客:

「大変ありがたい、安心できる。新型コロナは心配なので対策しながら活動したい」

「たくさん入った方が潤うと思うが、それでもやってもらっているのはありがたい」

何かあってもすぐ下山できない山小屋では、スタッフの体調管理も重要です。赤岳天望荘では毎朝、体温や血中の酸素濃度を測定。結果を麓の山荘と共有しています。

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「スタッフを守ることも大事。スタッフがいなければ山小屋の運営もできないので。早め早めの対応、そうすることでお客さまにも広がっていかない」

県内にはおよそ150の山小屋があり、多くは例年5月の大型連休に営業を始めますが、今年は新型コロナウイルスの影響で、県が5月末までの営業自粛を依頼しました。7月末現在も27の山小屋が営業していません。

定員を減らしたことなどで経営的には厳しいものの、藤森さんが営業再開を決めた一番の理由は、「登山者がいる山を守りたい」という思いです。

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「閉めた方が楽でしょって話もあるけど、閉めればどんどん山の文化がなくなっていく。営業していると、非常に不安でもあり、うれしい気持ちもあるし、これからのいばらの道を感じることもある」

翌24日。

(訓練):

「すいません!通報した水越さんですか?感染防止のためここから話聞かせてください」

この日、スタッフは警察の山岳救助隊と共に感染の疑いがある遭難者が出たことを想定した救助訓練をしました。動けなくなった遭難者に数メートル離れた場所から声をかけます。

(訓練):

「症状は?」

(だるさと、ちょっと熱っぽいです)

「マスクしてもらっていいですか?準備したらそっち行きますから」

飛沫感染を防ぐ「防護服」は遭難者に着せます。隊員が着ると動きにくく、救助に時間がかかるためです。

八ヶ岳では今年4月、救助された男性の感染が疑われ、救助隊員およそ10人が、一時、自宅待機となる事態がありました。

夏山シーズン、登山者が増えれば感染者を救助することも考えられ、手助けする山小屋も濃厚接触を避ける方法や手順を確認しておく必要があります。

隊員:

「ビニール袋用意して、そこに脱いだものを入れていくような形をとってもらえれば」

茅野警察署山岳救助隊・竹内研人主任:

「山小屋の方と一緒に訓練するのは初めて。連携して訓練できたので、今後の発生の際には有効になるのでは」

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「スタッフが救助に出る可能性は高いと思います。われわれも勉強して、多少の改良をしながらやっていければ」

新型コロナウイルスで状況が一変した信州の山。それでも美しい山を楽しみに訪れる人がいる限り、藤森さんたちは感染予防に努めながら登山の文化を守っていきたいと話します。

赤岳天望荘・藤森周二代表:

「山に来る人たちを温かく迎えたいと思います。山の良さを皆さんに伝えていきたいし、われわれも山の中で生活をしていきたい。何とか努力しながらこの小屋を運営していく」