経営の専門家や士業従事者らが紐解く「新時代の働き方」 第52回 「コンサルティング」に必要なスキルやマインドとは?

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テクノロジーが進化し、AIの導入などが現実のものとなった今、「働き方」が様変わりしてきています。終身雇用も崩れ始め、ライフプランに不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

本連載では、法務・税務・起業コンサルタントのプロをはじめとする面々が、副業・複業、転職、起業、海外進出などをテーマに、「新時代の働き方」に関する情報をリレー形式で発信していきます。

今回は、中小ベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める高森厚太郎氏が、コンサルティングに必要な"スキル"や"マインド"について語ります。

数字とロジックで経営と現場をExit(IPO、M&A;、優良中堅)へナビゲートする。ベンチャーパートナーCFO、高森厚太郎です。

は、CFOが会社の成長マネジメントをするにあたり、経営者とどう議論していけばいいのか、「中小ベンチャー経営者とのディスカッションスキル」ついて触れました。そして今回は、その中のより具体的なスキルの1つ目、「コンサルティングのスキル、マインドとプロセス」についてお話しします。

コンサルタントは医者に似ている

経営コンサルティングとは、一言で定義すると何でしょうか? 私は「クライアントからの依頼に基づき、クライアントが抱える経営上の問題や課題について、自分が持つ知識、経験、情報、ノウハウを提供しながら解決に至るサポートをすること」と定義しています。

その意味で、コンサルティングは医者の仕事に似ていると言えます。医者は専門知識をもって患者からの相談に相対し、診察や検査で原因を特定して、治療や薬などの解決策を提示していきます。

患者が医者を訪ねる理由は、"自分を治したい"というのと同じ理屈で、経営者がコンサルタントなり社外CFOなりを訪ねるのも、"会社を治したい、良くしたい"からです。

コンサルタントに必要なスキルとマインド

では、皆さんなら、どんな医者のもとへ通いたいでしょうか? 腕のいい医者でしょうか? 丁寧に診察してくれる医者でしょうか? このことを考えると、コンサルタントや社外CFOに必要なプラスαのスキルやマインドが見えてくるのではないでしょうか。

まず「専門性」と「コミュニケーション力」が必須なのは言うまでもありません。専門性があるからこそ、クライアントが抱える問題や課題について、自分が持つ知識、経験、情報、ノウハウを提供して解決することができます。

そして、クライアントが抱える問題や課題を抽出して、または自分の知識などをクライアントに伝えるのは、コミュニケーション力の賜物です。これらはコンサルタントであるそもそもの前提でしょう。

「(クライアントの)あるべき姿を描ける」というのは、医者が正常の状態を知らなければ治療もできないし処方箋も出せないのと同じ意味です。コンサルタントがその企業なり事業のあるべき姿がイメージできないと、そこへ導くことができません。

「事例を集める」ことについて、最近はクライアント自身もネットなどから玉石混交の知識を自分で集めることができます。コンサルタントとして、それに対抗できるような実際の体験に基づく具体的事例をいかに多く提示できるかは、信頼の源泉と言えるでしょう。

個人的に重要だと思っているのが「持説を持つ」ことです。課題や問題の解決には様々なアプローチが存在します。そのため、この方法であれば必ず結果が出るとコンサルタント自身が信じられるようなアプローチをしっかり持っているかどうかが、コンサルタントには問われるのです。

「持説を各クライアントの事例ケースに適切に応用できる」かどうかについて言うと、持説は抽象度を高めた、言ってしまえば一般論になります。クライアントの具体的な課題・問題は、それぞれ違います。その一般論を、クライアントの具体的事例ケースに応用することができるか、この応用力が、クライアントの信頼を勝ち得るポイントになってくるように思います。

マインド面のベースとして必要なのが、「クライアントの可能性を信じる」ことです。医者が患者の自己回復力を信じるように、クライアントやその企業や従業員のポテンシャルをコンサルタントが率先して信じることが大切です。なぜなら、コンサルタントが授ける解決策を実行するのは、クライアント自身だからです。

あわせて、コンサルタントはあくまで「客観的・中立的視点」も保っていなければなりません。心は熱く、頭は冷静にというところでしょうか。

コンサルティングのプロセス

コンサルティングのプロセスは、コンサルタントによってまったく違いますし、クライアント次第でも変わりますが、ごく一般的な流れを紹介しておきます。

最初にやるべきは、コンサルティングの「ゴール設定」です。そのコンサルを通じて相手が何を課題と感じ、解決したいと考えているのか、クライアントの目的を正確に掴むことが重要です。

次に「現状把握」です。クライアントの現状は勿論、クライアント自身が把握している現状についての理解度や課題解決に向けての知識レベルを掴みます。

そのうえで「解決策の実施」、つまり、具体的な解決策を提示する段階に入ります。その際、クライアントのレベルや理解度に合わせることは重要です。どの程度専門用語を使っていいのか、どう伝えるとわかりやすいのか、クライアントに最も受け取られやすい説明ができるように工夫をこらしましょう。コンサルティングはクライアントの腹にしっかりと落ちなければやる意味がないものだからです。

最後は「解決策実施の後押し」です。コンサルティングを受けた内容を具体的に実行に移していくのはクライアント自身です。コンサルティングの効果が実現し、持続させていくためにも、クライアントが真に理解し納得していることが重要です。

次回は、「中小ベンチャー経営者とのディスカッションスキル」の2つ目、「コーチングのスキル、マインドとプロセス」について考えていきます。

執筆者プロフィール : 高森厚太郎

一般社団法人日本パートナーCFO協会 代表理事。
東京大学法学部卒業。筑波大学大学院、デジタルハリウッド大学院修了。日本長期信用銀行(法人融資)、グロービス(eラーニング)、GAGA/USEN(邦画製作、動画配信、音楽出版)、Ed-Techベンチャー取締役(コンテンツ、管理)を歴任。現在は数字とロジックで経営と現場をナビゲートするプレセアコンサルティングの代表取締役パートナーCFOとしてベンチャー企業などへの経営コンサルティングのかたわら、デジタルハリウッド大学院客員教授、グロービス・マネジメント・スクール講師、パートナーCFO養成塾頭等も務める。著書に「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」(中央経済社)がある。