グラブの“練習用”って何? 折れたバットの使い道… 野球女子の疑問に答えます

ソフトバンク・今宮健太(左)と巨人・亀井善行【写真:福谷佑介、荒川祐史】

選手にとってグラブは「棺桶に持って入りたい」くらい、大切なもの

野球の開幕から約1か月――。ファン歴の長い方から新しく野球に興味を持ったファンまで、野球女子みんなにもっと野球を楽しんでほしい! そんな思いで、Full-Countでは野球にまつわる素朴な疑問を女子から大募集。集まったのは、「選手はバットを何本持っているの?」「ランナーコーチャーの指示は相手選手に聞かれない?」など、興味深い質問ばかり。今回は、特に“知りたい!”の多かった、「試合の舞台裏にまつわる疑問」の前編をお送りします!

――まずはグラブについての質問からスタートです。「練習用のグラブと試合用のグラブって、どう違うのでしょうか?」

N 全然違います!!

F グラブって、同じように見えても一つ一つ違うんです。同じ牛革でも、牛のどの部位から取っているかで質感が変わる。たぶん選手のところには、年間5~10個くらいグラブがメーカーから届くはずです。でも、“これ!”っていうグラブは、そこに1個あるかないかってレベルだそう。

K すごいですよね。

F その“これ!”っていうグラブが試合用になる。だから、プロの選手が試合で使えるグラブって、本当に数少ないんですよ。特に、守備にこだわりがある人なら、なおさら。たとえば、今宮健太選手(ソフトバンク)は、本当に1個のグラブしか使えないらしい。甲斐拓也捕手(ソフトバンク)も、もう3~4年くらいずっと同じグラブを使っているし。

K 亀井善行選手(巨人)も、ずっと外野のグラブを変えていないよ。

F 試合で自信を持って使えるグラブって、なかなか巡り合わないらしいから。

N 選手はみんな、このグラブを持って棺桶に入りたい、一緒に死ぬんだ! くらいの気持ちで使っているはず。だから、新しいグラブを練習で試してはみるものの、本番はやっぱり、何年も使っているこのグラブじゃないとダメって人は多い。だから、今のグラブが絶対に劣化しないよう、最大限のケアをしているよ。

F 選手の試合用グラブへの思い入れは、本当にすごいです!

N そう。だから練習用は気分転換のためだったり、次のグラブを馴染ませるために使う。

F 選んでいるパターンもありますね。新しく届いたグラブから3つ4つ選んで、それを練習で馴染ませて、次の試合用のグラブに育てていく。そうして、メインの試合用グラブと練習で馴染ませているサブ用のグラブと、その2つをエースグラブとして置いておくんです。

――公式戦で使ってはいけない色があるのかも、質問では届いています。

F ありますよ! たとえば金色とか銀色はNG。地味な色じゃないとダメなはず。

N 確か、ピンクもダメだったと思う。

F バッターの視界に入って邪魔になるからですよね。

N もちろん、規約にあるからダメというのもありますが……。野球に限らずスポーツの理念の根底には、“試合相手をリスペクト”というのがある。だから、相手の視界を邪魔するような用具を使うのは、もうスポーツじゃないですよね。

人工芝と天然芝の違いとは…【写真:荒川祐史】

ツイッターにも寄せられた質問から「人工芝」と「天然芝」の違いは?

――続いては、人工芝と天然芝では足や腰への負担が違うと聞きますが、どのくらい違うかのか、という質問です。日本のプロ野球スタジアムの場合、ほとんどが人工芝なんですね。

F そうです! 天然芝のスタジアムでいえば、「マツダスタジアム」「楽天生命パーク宮城」「ほっともっとフィールド神戸」……。

K 「甲子園球場」は、外野だけ天然芝で、フェアグラウンドは土ですね。

F 人工芝のグラウンドって、一応、緩衝材は入っているものの、その下はコンクリートなので。もろに衝撃が足にくるみたい。膝や腰に負担がかかって張ると聞いたことがあります。

N 僕はアメリカのメジャーキャンプ地に入らせてもらったときに、初めて天然芝を触ったんだけど。フワフワのソファーみたい! って思った(笑)。昔よりは人工芝もよくなっているから一概には言えないけど、やっぱり人工芝と天然芝とはだいぶ違いますね。

F それに、人工芝は年月が経つと踏まれて(草が)寝てしまったり、劣化するから。そうするとよりクッション性がなくなって、さらに膝や足腰に負担がかかるんじゃないかな。

N それなら全部天然芝にしちゃったら? って話になるんだけど……。そうすると本当にお金と管理が大変(苦笑)。

F それに日本で主流のドーム球場だと、芝の根が張らない。やっぱり芝は植物だから、日光と風がないとダメ。

N じゃあ、屋外のグラウンドがいいかってなると……。

F 日本の場合、梅雨とかあるから日程がグチャグチャになるはず。アメリカはロサンゼルスのあるカリフォルニアとかは雨が少ない。でも日本は雨が多いから日程が消化できなくなる。それもあるから、人工芝と天然芝、どっちがいいのかって感じですよね……。

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:福谷佑介】

キャッチャー装具やバットをこまめに、干すのは〇〇が天敵だから!

――「キャッチャーの装具を干している光景をたまに見ますが、干さないとクサくなるから?」という質問が届いていますが……どうでしょう?(笑)

N 面白い質問ですね。あれは確かに、クサくなるよね(笑)。

K あはは。匂い防止以外に、何か理由はあるんでしょうか?

F 防具はすごく湿気を吸うから、乾かしているんじゃないかな? バットも干す人、いますよね。中の水分を抜いて弾きをよくするために。イチローさんがそうでした!

N そういえばメジャーに行った選手が日本からバットを送ってもらう時も、中に防湿材を入れて、しっかり湿気の管理をして届けてもらっているよね。

K もしかして、グラブも干します? 匂い防止以外に、汗とかの水分を乾かすために。

N はい。水分は劣化につながるので。だから、雨の日の後は大変!

F 水分を抜くために冷蔵庫に入れたり、逆に温める機械(注:グラブ乾燥ケースのこと)もありますね。そうやって乾かしてグラブの水分を抜いたら、オイルを塗るんです。水分は敵だけど、乾燥しすぎもダメなので。

――なるほど。用具で言えば、バットについての質問も来ていました。「試合中、バットが折れるのを見かけることがあります。選手は試合会場に何本くらいバットを持ってきていますか? 大体1か月で何本くらい買うのでしょう?」

N バットは全く折らない人もいるから、選手によるけれど、みんな10本くらいは常備しているはず。契約しているメーカーさんが用意してくれるんですよ。バットも、木のどの部分で作ったか、どんな職人さんが削ったかで全然違う。選手は握っただけで、「これ重い」「少しグリップが細い」とか、ちょっとした違いもわかるんです。だから選手によっては、体調に合わせて、持ってきてもらったバットに使う順番を書く人も。体が重いと思ったら軽いバットから使っていくなど、今の状態にあったバットで試合に臨んでいますね。そうして結局、使わないまま終わってしまうバットもあるとか。

K ちなみに、さっき言っていた“バットを折らない選手”って誰がいますか?

N バッティングで、ボールを芯で捉えるのが上手な選手は、ほぼ折れない。

F 柳田悠岐選手(ソフトバンク)もあんまり折れない選手だと思う。今年のシーズン開幕頃のバットは(バットの)芯の部分だけ塗料が落ちて、真っ白になっていたから。

――ところで折れたバットって、その後どうなるんでしょうか?

K お箸とかキーホルダーとか、グッズを作ったりしますよね。

N キャンプや試合前練習みたいに、お客さんが見ているようなシチュエーションで折れると、テーピングでグルグル巻きにした後、サインを入れてプレゼントすることも。

K 再生法だとグッズが多いけど、野球女子なら、折れたバットでどんなグッズを作ってほしいでしょうね?

F それ、聞いてみたい。逆に僕らに教えてほしいよ!(笑)

いかがでしたか? 「試合の舞台裏にまつわる疑問」前編は、用具にまつわる内容を中心にお送りしました。次回は、バッターとキャッチャーの打席での会話内容など、ますます興味深い“舞台裏”質問に、記者が全力アンサーしていきます。お楽しみに!(構成・中塚真希子 / Makiko Nakatsuka)

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