「金」って買った方がいい?今、投資するならどの方法がベストなのかを探る

金価格が今後、長期的・構造的な需要の高まりによって値上がりするとしたら、自分のポートフォリオに金を組み入れておこうと考える方もいるでしょう。ただ金に投資する方法は多岐にわたっており、それぞれにメリット、デメリットがあります。今、金に投資するとしたら、どの方法がベストなのかを探ってみました。

【前半】「金」ってそもそも買った方がいいの?最近、金価格が上昇している理由


投機とヘッジ

この原稿を書いている間にも、金価格は急騰を続けています。7月28日、ドル建て金価格は1トロイオンス=2000ドルの大台に乗せました。ちなみに1トロイオンスは金の質量の単位で、グラムに直すと31.1034768グラムになります。また国内金価格は小売ベースで1グラム=7230円をつけました。

「金に投資しよう!」と思っている人も少なくないと思います。でも、金に投資する方法は実にさまざま。何を目的に金を買うのかによって、選ぶべき方法は変わってきます。

金に投資する目的は大きく2つに分かれます。ひとつは「投機」。もうひとつは「ヘッジ」です。

投機は、目先の値動きに乗じて利ざやを稼ぐことです。金に限らず株式や為替、暗号資産もそうですが、マーケットで取引が行われている最中は常に価格が上下しているため、安く買って高く売ることにより、その価格差を利ざやとして得ることができます。価格は時々刻々と動いているため、投機で稼ぐ際の時間軸は短いのが普通です。

一方、ヘッジとはリスク回避のことです。金投資のリスクヘッジ機能は、ペーパー資産につきものの信用リスク、物価上昇によって現金価値が下落するインフレリスクに対して有効です。資産運用につきもののこの手のリスクヘッジは「保険」の意味合いが強いため、総資産のうち一定比率を常に保有する形になります。つまり長期保有です。

現物取引とデリバティブ取引

次に、実際に金を保有する方法について考えてみましょう。

「金を保有する」と聞いた瞬間、真っ先に思い浮かぶのは、棒状になった金地金や金貨(地金型金貨)ではないでしょうか。ピカピカに光る金そのものが手元にあるわけですから、所有している実感が高まります。この金を毎月の口座引き落としで日々、少量ずつ積立購入するシステムが「純金積立」になります。

以上の方法は、金を直接保有することから現物取引に分類できます。現物取引はさらに2つに分類され、ひとつが今、説明した金そのものを保有する方法で、金地金取引になります。

これに対して、金を証券化した有価証券投資があり、そのひとつが皆さんもご存じのETFです。ETFは証券の価値の裏付けとして金の現物をファンドに組み入れるため、市場での取引価格は基本的に金価格に連動します。

また、同じ有価証券投資の方法として、金鉱企業の株式を組み入れた投資信託を買うという手もあります。金鉱企業とは金を採掘している企業のことで、基本的に金価格が上昇すれば、産出する金の価格と採掘コストの差額が大きくなって利益率が上がるため、株価も上昇します。

現物取引に対してデリバティブ取引ですが、これは先物取引とCFDがあります。

先物取引は将来、売買する金の価格を現時点で決める取引です。たとえば1年後に買う金の価格を現時点で取り決め、1年後の価格がどうなっていようとも、現時点で取り決めた価格で金の現物を引き取ることになります。ただ、先物取引は金の現物を引き取るだけでなく、期限が到来する前に転売することで価格差を得ることもできます。先物取引に参加している投機家の大半は、期限前に転売することで利ざやを得ています。ちなみに金の先物取引の取引期限は、最長で1年程度です。

またCFDはFXと同じ仕組みをイメージしてください。FXは通貨の取引ですが、CFDは金やプラチナ、原油などのコモディティの他、株価指数、個別企業の株式なども売買できるもので、FXと同様、取扱業者に少額の証拠金を預けることで、大きな額の取引ができます。CFDはContract for differenceの略で、「差金決済」を意味します。差金決済とは売買することでその差額のみを決済する取引手法のことです。

投機に向くもの、ヘッジに向くもの

先物取引とCFDは投機向きです。というのも「レバレッジ」といって、投資元本に対して何倍もの金額もの取引ができるからです。

たとえば金先物取引の場合、1キログラムを売買するのに必要な証拠金額は23万円程度です。金1グラムが7000円だとすると、1キログラムは700万円です。それを23万円で取引できるのですから、レバレッジは30倍になります。金CFDのレバレッジは20倍程度です。このようにレバレッジが掛かっている分、わずかな値動きでも損益の額が大きくなります。それだけハイリスク・ハイリターンであり、投機向きといっても良いでしょう。

しかも金先物取引には取引期限があり、最長でも1年程度ですから、ヘッジ目的で長期保有することはできません。つまり投機としてしか用いようがないのです。

もしヘッジ目的で金を購入するのであれば、ずっと保有し続けられるものが適しています。その代表的なものが金地金であり、地金型金貨です。あるいはそれらと等価交換ができ純金積立という方法もあります。

ただし、金地金や地金型金貨の場合、実物をそのまま手元に置いておくと、盗難などのリスクが高まります。また地金型金貨は地金を金貨に加工するためのコストが価格に含まれますので、単純にリスクヘッジ目的で購入するのであれば、金地金を選ぶ方がお得です。

金の実物を保管するのが難しいのであれば、金ETFや金鉱企業株投信を買うという手があります。いずれも有価証券ですが、証券保管振替機構によって証券そのものがペーパーレス化されているので、紛失・焼失するリスクを回避できます。また、金ETFや金鉱企業株式投信は、インフレリスクをヘッジする目的で用いることができるだけでなく、比較的短期間で値上がりした時は、売却・解約によって利益確定が容易に行えるため、投機に近い運用手法にも活用できます。

ただ金鉱企業株投信は、解約によって純資産残高が大きく目減りすると償還されてしまうリスクがあります。また金ETFは裏付けとなる金を分別管理しているため、原則として信用リスクはありませんが、取引が少ないと償還されるケースがある点には注意が必要です。

この点、金地金や地金型金貨を売却する際には、貴金属を扱っている業者に実物を持ち込み、鑑定したうえで売却という手順を取るため、いささか手間が掛かります。したがって、金地金や地金型金貨は売却して利ざやを稼ぐという投機的な手法には、そもそも馴染みませんし、急に現金を手当てしなければならなくなった場合などを考慮すると、いささか不便です。

このように、金投資にはさまざまなツールがありますが、保管の手間がなく、ヘッジ目的と投機目的の両方を同時に満たせるという点において、金ETFが最も使い勝手が良いと考えられます。

© 株式会社マネーフォワード