社説(8/4):女川原発の宮城検討会/県民の不安は残ったままだ

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 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の安全性を検証する宮城県の有識者検討会が、報告文書を村井嘉浩知事に提出した。2014年11月に始まった議論が5年8カ月で終わった。

 東日本大震災で被災した原発の安全性をどう評価するのか。大きな命題を背負った組織だったが、発足当初に掲げた県民の安心、安全を確保するという目的を果たしたとは言い難い。

 報告文書で、東北電に安全対策に新たな知見を反映し県民に丁寧な説明をすることや、重大事故を想定し更新した設備を確実に運用することを求めた。国に対しては工事計画の認可に際し施設の健全性を考慮した審査を、県には空間放射線量のモニタリング結果を速やかに分かりやすく県民に伝えるよう要望した。

 検討会の議論は、今年2月に2号機を新規制基準の適合性審査で合格とした国の原子力規制委員会と並行して進んだ。議論の大半は規制委の審査内容の説明に費やされたとの指摘がある。再稼働の是非には言及しなかった。

 同じ原発の安全性を議論するのだから、規制委と中身が重なることはあろう。再稼働の是非に触れないことも、発足時に県が「議論するのは再稼働の是非ではない」と述べていたので予想はできた。

 ただ出発点に立ち返って考えたいのは、規制委があるのに、なぜ県が検討会をつくって審査をする必要があったのかだ。

 規制委は原発の安全性について厳密に議論するが、地域住民の命を守るという観点に乏しい。検討会は県民の立場に立って意見を交わすことが求められたはずだ。

 その点で「防災面は扱わない」として、重大事故の際の広域避難計画を対象外としたのは納得しかねる。

 計画は原発から30キロ圏内の7市町が策定している。計約19万9000人が対象となる緊急時の大移動だが、立地自治体の住民からは「交通渋滞で30キロ圏を脱出できない」などと疑問の声が出ていた。

 河北新報社が今年3月に行った宮城県民アンケートでは、避難計画が「どちらかといえば不十分」「不十分」は合わせて6割に上った。

 検討会は東京電力福島第1原発事故の教訓も踏まえ、避難計画の妥当性について評価する責務があった。

 県が今月1日に始めた再稼働を巡る住民説明会で、避難計画の実効性に批判が集中していることからも明らかだ。

 検討会の報告文書は、県が再稼働に同意するかどうかの重要な資料になる。同意手続きの一環の住民説明会は19日までの予定だ。9月には県議会定例会も予定されている。

 再稼働の判断に向けた大きなヤマ場を迎えることが予想される。しかし、このまま県民の不安を置き去りにしたまま突き進むことがあってはならない。